本のご紹介です。
『百年の遺産 新装改訂版』
岡崎久彦著
書評・海竜社編集部 美野晴代
偉人から辿る歴史の真実
ＮＨＫのスペシャルドラマ「坂の上の雲」の人気によって、
明治の元勲の生き方が話題になりました。
伊藤博文、陸奥宗光らが活躍したこの時代は、
現代の日本にとって少年期、青年期の人格形成期に
あたると著者の岡崎氏は語ります。
ペリーの来航（１８５３年）から、日本の敗戦、
占領の終わり（１９５２年）まで、ちょうど１００年。
この人格形成期の「百年の歴史」がなければ、
現在の日本の繁栄はあり得ませんでした。
「歴史」とは、
「その時代を生きた人々の努力の集積」とも言い換えられます。
幕末以降、世界でも類を見ないスピードで近代化を成し遂げた
先人たちの「努力の集積」は、まさに「百年の遺産」と
呼ぶにふさわしい、日本人が世界に誇るべき財産です。
しかし、本書の狙いは、その偉業を辿（たど）ることではありません。
著者が本書で試みた本当の狙いは「歴史の真実の追求」にあります。
歴史がその時代の人々の努力の集積であるならば、
その時代の人物を現代の尺度ではなく、
その人が生きていた時代の尺度に合わせて見つめ、
その努力の軌跡を追うことによって、初めて歴史の真実に
迫ることができる。
そうすることで初めて現代の日本が理解でき、
将来の日本も見えてくる。
これが、著者の考えです。
偏向史観が横行する現代では、簡単に推し量ることができない
先人たちの努力の軌跡を、歴史観に左右されない曇りのない目で追った、
著者渾身（こんしん）の一冊。
先人たちの軌跡が一目でわかる略歴と関連年表を付記し、
豊富な写真で目でも楽しめる一冊です。
