湖底の城 1〜9巻 宮城谷昌光著
湖底の城は宮城谷昌光さんの長編時代小説。読むのが遅いねこまんまねこ氏には全9巻は途方もないチャレンジだったが、何しろ面白く次が読みたくてどうにか完読した。紀元前460年ごろから前510年ごろの、春秋戦国時代の中国、呉、越、楚の対立と争いの物語。主として呉の伍子胥=ごししょ、越の范蠡=はんれい という2人を中心にストーリーは展開する。それに加えて途方もなく多数の登場人物が現れて、それらが非常に鮮明な個性を持っている。正に天才作家の仕業であると言える。この時代、中国は統一に程遠く、全ての国や小国に王がいて、王は30-40人は居た。選挙などないから、王は選ばれた王ではなく世襲や血縁なので、はぼ賢者は現れない。つまり王はほぼ愚者なのだ。王を補佐する宰相や武人が賢者であればその期間その国は安泰だが宰相や貴族も賢人ばかりではなく、国を私物化したり、私腹を肥やす奸臣もいる。この小説は常に賢者と愚者を対比させて進んでいく。賢者と愚者の比率は2500年後の現在も変わらないと思う。テクノロジーは進歩するが、人間の本質は何年経っても進歩していない、賢人、愚者、悪人、善人、その比率は変わらない。犯罪者や殺人鬼の比率も変わらないと思う。それを表現している本作品は著者の人間観察力に基づいている。非常に感動的である。8巻を読んでいる時、コーヒー店で泣いた。と、こんなに力説してもブログの読者に響くはず無いよなー。このブログをいつも読む人は多分60人ぐらいしかいない。検索で入ってきてくれる方は日に200人以上いるけど、そういう人は常に読むわけではないしな。ま、これ、ねこまんま氏の備忘録だから。