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カテゴリ:最近読んだ本
辻村深月の「ツナグ」 新潮文庫の「ツナグ」(辻村深月(みづき))は2012年9月1日発行で、自分が昨年暮れに買った本は「2012年10月25日 第10刷」となっている。文庫本「ツナグ」は年度途中の発行だったこともあり、2012年の文庫本ランキングでは7位あたりにあった。 それにしても、2ヶ月足らずで10刷(一刷で何部発行かは不明だが)とは、辻村深月は勢いがある作家なのだ思った。彼女は2011年に「ツナグ」で第32回吉川英治文学新人賞を、2012年には「鍵のない夢を見る」で第147回直木賞を受賞している。 「ツナグ」 ファンタジー系の小説はどうも苦手で、宮部みゆきもミステリーや時代物はいいが超能力めいた話になるとしらけてページをめくるのが重くなった。辻村深月もそのジャンルだと思って今まで手に取ったことがなかった。 「ツナグ」の主人公は生者と死者を仲介する使者(ツナグ)役の若者である。現世と死者との仲立ちをする占いをする家があり、代々その超能力が伝えられている。家に伝わる「魔法の鏡」で満月の夜に一晩だけ死者を生身の人間としてよみがえらせてくれるのだ。 急死したアイドルに会いたい平凡なOL、癌で亡くなった母親と会いたい不器用な長男、事故死した親友に会いたい高校生、突然失踪した婚約者と会いたい男。これらの4人を死者との面会の場へ案内する役を祖母から引き継いだ高校生の渋谷歩美。この歩美少年自身も両親の死という辛い過去を背負っていた。 昨年10月に公開された映画版「ツナグ」は見なかったが、新たな作家発掘の意味も込めて文庫本「ツナグ」を読んでみた。死者を現世に呼ぶ鏡の話になるとやはりちょっとしらけてしまった。ただ、死者に会いたいと望む4人はそれぞれに心に痛みを抱えている。心の支えとなる誰かを永遠に失った者の気持ちはよく伝わってきた。 文庫本の帯にある「あなたがもう一度会いたい人は誰ですか」というコピーには人をひきつける何かがある。現実にはかなわないことだからこそ、「誰と会いたいか」と訊かれたら、誰でも様々な思いがかけめぐるだろう。 最近気づいたことだが直木賞系作家は割と読んでいるが芥川賞系作家はあんまり読まなくなったと思う。2008年受賞の「ポトスライムの舟」(津村記久子)は、久々に読んだ芥川賞受賞作だった。 純文学が読まれない世の中になっているのか、芥川賞・直木賞という分け方そのものが意味ないものになっているのか。そのどちらかだろうとは思うが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013/01/12 11:16:14 PM
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