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吉村昭の「零式戦闘機」 今年7月には、旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦)の設計者である堀越二郎をモチーフにした宮崎駿のアニメ映画「風立ちぬ」が公開されました。そして今月は、零戦による特攻隊を描いた映画「永遠の0(ゼロ)」(東宝:監督 山崎貴)の公開が迫っています。 映画「永遠の0(ゼロ)」の原作「永遠の0(ゼロ)」(百田尚樹:講談社文庫)をはじめ、書店には零戦関係の本が平積みされています。今年ほど零戦が話題になった年はないかもしれません。 「復原された零式艦上戦闘機」 零戦は1940年の初飛行以来約1万機が生産されました。その長い航続距離と旋回性能から当時世界最強の戦闘機でした。吉村昭の「零式戦闘機」(新潮文庫:1988年)はその零戦の設計や製作について関係者に取材を重ね、零戦を縦軸にして太平洋戦争を描いた労作です。 「零式戦闘機」 昭和14年3月23日午後7時すぎ、名古屋市港区大江町の海岸埋立地区にある三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所の門から、シートで厳重におおわれた大きな荷を積んだ2台の牛車が静かにひき出された。 この最新鋭の戦闘機を運んだのは何と牛だったのです。完成した機体は胴体と主翼の部分に分解されました。そして、名古屋市の工場から岐阜県各務原(かがみはら)飛行場までの48kmを24時間かけて牛車(ぎゅうしゃ)で運ばれたのです。 道路が舗装されていなかったため、トラックで運ぶと機体の損傷が激しく、速度が遅い牛車が使われたのです。ここに、第2次世界大戦時の日本の銃後の実態が浮き彫りにされています。 吉村昭の「零式戦闘機」の単行本は、今から45年前の1968(昭和43)年の発行です。設計者の堀越二郎もまだ健在で、取材を重ねて多くの資料の提供も受けています。三菱重工関係者からも数多くの埋もれていた資料の提供がありました。 吉村昭は「史実に基づく」ことを基本にしていました。最新鋭の零戦を牛車で運んだという冒頭のシーンは、太平洋戦争の実態とその行方を雄弁に示しています。 書店の「零戦コーナー」に、吉村昭の「零式戦闘機」はありません。発行年が古いからでしょうか。これはちょっと残念なことでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013/12/24 11:49:18 PM
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