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テーマ:大人の発達障害(186)
カテゴリ:最近読んだ本
生きづらさを訴える大人たち
最近よく聞く言葉であるが、一体「発達障害」とはどのような症状を言うのか。また、「発達障害」を抱える人に対する適切な支援とはどんなことなのか。 発達障害者支援法(平成16年12月10日法律第167号)によれば、次のような障害を支援の対象としている。自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害などの発達障害。といっても具体的にはよくわからない。 2年ほど前に買った本を読み直してみた。帯にある「生きづらさ」、「もしかして発達障害かも」、「発達障害バブル」などの言葉がいやでも目に入ってくる。 「『発達障害』と言いたがる人たち」 (SB新書:2018年6月初版~著者は精神科医の香山リカ) 本書ではまず「発達障害は病気ではない」とする。また、発達障害は脳の機能障害の一つで、幼少期の親の育て方やしつけに起因するものではない。だが、「脳のどの部分にどういう変化が生じているか」についてははっきりつかめていない。 さらに、遺伝が原因かどうかも気になるところである。著者は、「発達障害には遺伝子や染色体の異常が関係しており」と書いているものの、単純な遺伝とは違っていて、家族間の遺伝が発達障害の原因と断定することはできないとしている。 では、脳の機能障害はどんな形で現れるのか。次のようなものを挙げている。 「人とのコミュニケーションがうまくとれない」 「周りの空気が読めず、暗黙のルールが守れない」 「一つのことにこだわってやめられない」 「注意や集中、関心を保てない」 「落ち着きがなくミスが多い」 「ほかのことは問題なくできるのに計算だけがあまりにもできない」 (同書 66~67ページ) 発達障害はどれくらいの確率でおきるかについては、100人に数人が大方の見方という。文科省は2012年に全国調査をして「通常学級に在籍している児童生徒の中で6.5%が発達障害」と発表して衝撃を与えた。確かに、現場では納得したくなる状況があったことも否定できない。 問題は「発達障害」の定義がどうなっているかである。これが複雑なのである。アメリカ精神医学会の定義(DSM)もあれば、世界保健機構(WHO)の定義(ICD)もある。そして年次によって改定されることもあって混乱をきたしている。 そこで著者は、上記の2つの機関の分類をもとに次のように整理している。これでも、すんなりとは頭に入ってこないが、そのページを紹介しておく。 (同書77ページより) 少し難しいが、第4章「発達障害が活躍する時代が来る」には興味あることが書かれている。~拡大する「発達障害ビジネス」~というサブタイトルが目を引く。 自分は発達障害ではないかと考えて受診する人たちには、グレーゾーンに属する人たちが多いという。そこでとりあえず、自閉症スペクトラム(ASD)という診断をする。ASDの3つの特徴は「対人関係の問題」、「言葉やコミュニケーションの問題」、「特異なこだわり」である。そして現在、彼らをターゲットにしたビジネスが急成長しているそうだ。 その代表が課金制スマホゲームで、その市場規模は8000億円に達しているという。週末の夕方から夜、ネットの速度が極端に遅くなることから自分もそのことは実感している。 しかし、企業の中にはこれらの「ASD」型の人間を生かそうという動きもあるという。集団の中で浮いた存在だと考えずに、「特異なこだわり」を生かしていこうというわけだ。 現在、コロナ感染症の拡大でオンラインの世界が拡大している。そのなかで、「コミュ障」や「ASD」と言われる人たちの出番は増えてくるだろう。しかし自分はそれはまだ限定的だと考える。「発達障害が活躍する時代が来る」とまでは言い切れないと思う。 本書のタイトルに戻ろう。 最近、「発達障害」という診断を受けたら気が楽になるという人が増えているという。特に女性に多いという。家庭プラス職場という負担がストレスとなっているのだろう。発達障害は大人になって判明する場合もある。だから、単なる怠慢や単純なミスで生じた問題を「発達障害」のせいにして安心したいというわけだ。 短い文では十分にまとめることができなかった。新書版のサイズに、広くて深い「発達障害」というテーマを、素人にも分かりやすくまとめた著者の努力に敬意を表したい。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020/08/19 09:25:15 PM
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