読書案内2008.7 夏休み直前号■英語通信Citrus 高校生のための読書案内 2008.7 夏休み直前号(1) 夏に旅をしたくなるテレビ番組と本 ●『水曜どうでしょう』 東京MXテレビ水曜夜11時(カナダのユーコン川をカヌーで下る「YUKON6DAYS ~160kmカヌー地獄~」)と神奈川TVK金曜夜11時 (自動車でひたすら旅をする「合衆国横断 ~北米大陸 3750マイル~」)で再放送中(DVDも出ています)。 北海道テレビ放送制作のバラエティ深夜番組『水曜どうでしょう』(1996年~2002年深夜放送)は俳優の大泉洋(おおいずみよう)と大泉洋の所属事務所社長・俳優の鈴井貴之(すずいたかゆき=「ミスター」)とディレクターの藤村忠寿(ふじむらただとし=「大魔神」「ヒゲ」)と嬉野雅道(うれしのまさみち=「うれしー」)の4人が世界を旅したり、サイコロを振って旅をする「サイコロの旅」をしたりする番組。4人のやりとりが楽しいだけでなく、日本や世界の広さと豊かさを伝えてくれるので、ぜひ夏休みに観て欲しい。北海道出身の大泉洋さんは東京で大学受験に2度失敗、しかし腐ることなく地元・北海道の大学に進学、演劇研究会TEAM NACSに入り、現在に至ります。臆病者の彼に年長者の3人が旅をする間に「やればできる」という気持ちと知識を授けていきます。映画・テレビドラマで主演できる俳優になった大泉洋さんの成長をこの番組で見守るのもひとつの楽しみです。 ●開高健[かいこう たけし]『もっと遠く』文春文庫 『もっと広く』文春文庫 『オーパ』集英社文庫 『風に訊け』集英社文庫 『輝ける闇』新潮文庫 『水曜どうでしょう』を観ると、いつも開高さんのことを思い出す。開高健さんは『もっと遠く』では北米を、『もっと広く』では南米を縦断した。その目的は「釣り」。釣りをしない人、海外をまだ旅したことのない人にこそ薦めたい。1冊だけ手元に置くなら『もっと広く(下)』。ノーベル賞がとれたかもしれない巨匠・開高健さんにこの本を通じてぜひ出会って欲しい。男性諸君には『風に訊け』もお薦めします。ベトナム戦争を描いた『輝ける闇』『夏の闇』は読み継いでいきたい作品。 (2) 心身共に健康であるための2冊 ●沖 正弘『ヨガの喜び』光文社文庫―美と健康シリーズ¥ 540 ポーズ、呼吸法、食事法、冥想法まで、ヨガの奥義をやさしくくわしく解説してあります。内容がちょっと大人向きです。 ●中村天風(なかむら てんぷう) 『君に成功を贈る』日本経営合理化協会出版局 ¥ 1890 『運命を拓く―天風瞑想録』講談社文庫 ¥ 580 日露戦争のときに軍事探偵(諜報員)をして死線をくぐり抜けてきた中村天風さんは戦後に奔馬性結核になり、喀血し、死に至る病だと聞いた途端にへなへなになってしまう。海外に行ける人が限られていた明治時代にアメリカに渡りコロンビア大学で医学を学び、ヨーロッパに渡って女優サラ・ベルナールのところに居候しながら東西の哲学者、宗教家を訪ねるが結核の治療法も人生の意味も得られず、失意の中、日本に戻ろうとした船上で出会ったヨガの聖者カリアッパ師に導かれ、インドの山奥で修行する(まるで「レインボーマン」のようです。ご存じかな?)。 ★天風さんの教え:夜寝る前には鏡を見ながら「お前は信念が強くなる」と唱えて自己暗示をかけ、朝起きたら「私は信念が強くなった」と唱えるだけ。寝るときは今日も1日ありがとうの感謝の気持ちで明るいことを考えて眠りましょう。朝起きたら朝日を浴びる。お金はかかりません! (3) 女性の自叙伝2冊 ●園田 天光光(そのだてんこうこう) 『女は胆力』平凡社新書 414 ¥ 798 天光光は本名で、妹の名は天星丸。大胆なお父さんのもとで育った天光光さんは戦後最初の女性国会議員になる。そして同じく国会議員だった園田直さんと結婚し、日中国交回復に奔走する夫を支える。そのとき夫婦で師と仰いだのが中村天風さんだというのを知って驚いた。 ●白洲正子(しらすまさこ)『白洲正子自伝』新潮文庫 マッカーサーと対等にわたりあったという、英語堪能な白洲次郎の妻。奥様である白洲正子さんも米国留学経験者。国際派の夫妻、豪快です! (4) 子ども向けに書かれている本 ●沢田允茂[のぶしげ]『考え方の論理』講談社学術文庫 小学生も中学生も高校生も「みんなケイタイ持っているよ! 買ってよ」とねだります。実際は小学生の場合、ほとんどが持っていないはずです。英語ではsome「ある人は~である」、Most ~「ほとんどの~は~である」という区別をかなりはっきり意識して話しますが、日本語ではあいまいにしがちです。英語を使いこなし、その発想を分かろうと思ったら、このような論理的なものの見方が不可欠です。この本は子ども向けにやさしく書かれていますが、読み応えは十分あります。 (1) 範囲が定まっている(the ~) all the students 学生全部 ├ almost all the students 学生ほとんど全部 │ └nearly all the students 学生ほとんど全部 ├ most of the students ほとんどの学生 ├ some of the students ある学生 └ none of the students 学生は全く~ない (2) 範囲が定まっていない all students 学生全部 ├ almost all students 学生ほとんど全部 │ └nearly all students 学生ほとんど全部 ├ most students ほとんどの学生 ├ some students ある学生 └ no students 学生は全く~ない 1. 「ほとんどの~」 “Is English spoken in Japan?” “Well, ( ) Japanese people don’t use English in everyday life.” 1 almost 2 any 3 most 4 none センター97 正解3 (5) 大学入試に役立つ2冊 ●中村雄二郎『術語集 気になることば』 岩波新書276(1984) 《Quiz》以下のキーワードを説明してください。 (1) アイデンティティ(自己同一性=「ぼくがぼくであること」) (2) 隠喩(metaphor[メタファー]) (3) スケープ・ゴート(scapegoat贖罪[しょくざい]のヤギ) (4) 通過儀礼 (5) ロゴス/パトス (6) パラダイム(paradigm:範疇[はんちゅう]) パラダイム転換(paradigm shift:例えば天動説から地動説へ換わること) (7) レトリック(修辞学) (8) コスモス/カオス (cosmos[コズモス]秩序/chaos)[ケイオス]混沌) このキーワードの使い方は本を読むとわかる。すぐ知りたい人は 『現代用語の基礎知識』『知恵蔵』『イミダス』などを引いてみよう。 この数年ではネット上のフリー百科事典wikipediaで検索できる。 ●柳瀬尚紀[やなせ なおき]『翻訳困りっ話』河出文庫 この本を読むと、大学入試の和訳を書く際の最低限のマナーがわかる。 (1) 細くて薄い字を書くな、読みやすく大きな字を! (採点者は意外にも中高年や老人が多いんですよね) (2) 日本語として破綻している文章を書かない。 (こころある採点者を苦しめないでね) |