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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2017 金森 強さん これからの外国語教育

●講演:「これからの外国語教育ー次期学習指導要領から考える」
       金森 強さん(文教大学教授)
1. はじめに
・ 講演者より:次期学習指導要領に示される内容から今後の外国語教育の在り方について指導方法、教材、評価等の留意点について考えたい。
・自己紹介:長崎県出身。学校教育課程英語専修教授。専門は英語教育、英語音声学。第4期中教審委員。高等学校学習指導要領作成委員。
・ 主な著書:文部科学省検定教科書/中学校英語 One World (教育出版)
『英語力幻想-子どもが変わる英語の教え方』(アルク)
『小学校の英語教育~指導者に求められる理論と実践』(教育出版・編著)
『小学校外国語活動 成功させる55の秘訣―うまくいかないのには理由(わけ)がある』(成美堂)

2. 基本的な考え
・ NHK『クローズアップ現代』に出て、全国から反応やクレームが凄かった。外国人に英語で自分の気持ちを伝えられた経験→大きなモチベーションになる。
・World Englishesという考え。なぜ欧米のALTに特化しないといけないか? ネイティブさえいれば英語力が上がると思っている人が多い。
・速くしゃべれればいいと言うものでもない。小学校で、時限爆弾を持たせてquick response(英語の瞬発力)を競わせる練習が当然のように行われている。まず、教室に爆弾を持ち込む必要はない。生きる力を育てる練習なのか? そんなに速く答えることが必要なシチュエーションはない。・ALTに会話で急かされることはない。英語話者のモデルでなく、コミュニケーションの仕方のモデルになることが肝心・音読をしている教室を見て、目的に合わせた音量であるべき

3. Workshop
①Tongue Twister
1)バスガスバクハツ
2)Quick Kiss, Quicker kiss.
3)キャリーパミュパミュミピャムピャム、アワセテパミュパミュムパミュパミュ…
②好きな漢字を当てさせる
・ 文字を音声化するだけの授業と意味を把握させる授業
③相手に伝わるように言う
・ 谷川俊太郎「ひとりひとり」から 
・ひとりひとりがたがいに出会うとき/ひとりひとりそれぞれの自分を見つける

4. 英語教育の意義
・ 同じような人間でグループ化してしまう傾向を打ち砕くのが外国語の授業の意義である。コミュニケーションで人とかかわりあいながら自分を知り、自分を発見する。そういう風に、人間は育っていく。言葉の教育として考えたときにどうすべきなのか。言葉をせっかく学んでいるんだから、言葉を学ぶことの意義を考えていくべき。

5. 新指導要領
・ Action Oriented Approach
CAN-DO LIST
Learner Autonomy
・ 文科省が指導要領を作っている段階でOECDが出したThe OECD's Education 2030 Projectを参考にしている。新しい部分は、Meta-learning で、自律的に生涯学び続けていくという考え方。1980年、私が20歳の時比べると2060年は人口比が様変わりする。一番手っ取り早いのは、外国から移民を受け入れて人口を増やす。スイスで移民の研究を行っているが、お互いの文化を捨てないで共通言語ドイツ語を通じて、意思疎通を図っている。注目すべきは、言語教育を通じて同じ市民だという共通認識をはぐくむ。それがこれからの日本が目指すべき姿である。

6. 教室で育てるべき力は?
・ 知識はスマホで手に入る:スマートグラス、スマホが通訳・翻訳してくれる。AIが教育を支配するか? しかし人間でなければできない教育。「絆」「信頼」は、直接顔を突き合わせたコミュニケーションでしか生まれない。そういう授業をしてくれる教師が必要とされる。
・金森氏作詞作曲の歌:Thank you, Mom Thank you for your .×3 空欄に言葉を入れるのに具体的な人を浮かべないと現実味がない。でないと、適当に( )にいろんな言葉を入れることはできるので、意味のないコミュニケーションになってしまう。英作文でも具体的にyouをイメージすべき。
・ 「外国語で、情報や考えなどを表現し伝え合う力」:コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて育成すべきskillsに4つのCが。Creativity / Critical Thinking / Communication / Collaboration情報を取り入れる段階から意思決定し、criticalでなければならず、他者との協働も必要となってくる。

7. Active Learning指導の留意点
・ 指示・発問・反応(生徒の発言への)の工夫。考える時間の確保→待つことから深い学びへ
・ かかわりを生み出す活動、地域、社会、世界につなげる橋渡しの工夫
・ 振り返り(気づき)
 個性、創造性を認める
 学習者の興味、関心を活かした指導を

8. 小学校英語教科化
・6年生UNIT9で、[目標:覚えて言う、書き写すことができる]となっているが、児童は「覚えて言うだけならぼくでもできるよ」言葉というツールをどう使うか。コミュニケーションは「想」という漢字、相手の方に心を持っていく。学習者の発達段階に合った質の良いインプット活動が必要。「ビッグボイス!」「アイコンタクト!」の連呼は空しい。


9. Good Communicationを目指す
・ Mother Teresa から。やさしい言葉はたとえ簡単な言葉でも心にひびく 心を込めて聞いてみようWhere do you want to go?①道に迷っている人に②おじいちゃん、おばあちゃんに③二次会を決める④ロマンティックなディナーの後のシチュエイションで等 覚えるだけになってしまってはダメ チャンツやリズムを付けることの弊害もある。World Englishes内容がすばらしければ発音アクセントは問題にならない。
・ 1顔の表情 
2体の表情 
3声の表情 
4心の表情 
5聞き手の表情(相手意識)

2だけでなく1,3が大切 マララ、セヴァン・スズキ等の良いスピーチを見て、聞いて経験することが大事

10. 結論
学習指導要領が変わっても…
・ 育てるべき大切な資質・能力は変わらないものもある→深い学び(MEXT)は、母語で深く考えられないと実現できない。
・ 教えるのが教師である意味、教室で教える意味は?→ロボット・AIにはできないことが、人間にはできる。
・授業研究、教材開発→教科書会社が作ったものも何かしら制限がかかっている。それを教員が教科書をどう実情に合うように変えていくか。

11. 質問と討議
・ Q:World Englishesに関して、日本語英語べったりの生徒にどう対応すべき?
A:それがアイデンティティの問題であれば、変えることは不可能。良い関係を作って、この先生には素直に英語らしい発音をしてもいいかなと思ってもらうしかない。
・Q:教師だからこそ発音にこだわる人が多いと思うが、World Englishesの考え方を教えられるか?
A:無理だ。早い段階で学生にそれに触れさせるべき。英語の認識を変えないとだめ。
・ Q:拠点校でモジュールが取り入れられているが、どうなのか?
A:長野市で週1時間分を15分×3で、5分ごとに違うアクティビティを導入したが、子供たちは飽きている。発信することや活動にかかわる楽しさがない。横須賀市は週2時間やろうとしている。いろんな工夫をして週2時間を取ろうとしている。文科省の提言では出されておらず、教材は、モジュール対応していない。


• 文構造の教え方で悩んでいましたが、いっぱい文章に慣れさせて伝えていこうと思いました。一つ質問があります。多重知性を意識して授業づくりをすると、毎回授業が違ってくると思うのですが、授業展開のルティーンはつくらない方がいいんですか?
• 金森先生の熱い気持ちが伝わってきました。英語とはコミュニケーションの道具、言語は道具であって、大切なのは人との関わりあいだというふうに感じました。私は小学校教員で、母国語が育っていない中、英語を入れるのはどうなのかという意見をよく耳にしてきました。しかし今回、金森先生のお話を聞かせて頂き、他者:多様性が実感するのに、外国語はとても有効だと改めて考えさせられました。私自身、フィリピンで働いていたことや、旅行が好きだということもあり、これからの子どもたちに必要な力、そして是非つけてもらいたい力というのは、多様性を受け止められるコミュニケーション能力だと思います。今後の授業実践に還元していきたいと思いました。ありがとうございました。
• 「言葉」の教育という意識を常に持ち続けたいと思います。誰もがやりたくなる授業づくり、知識と技能もセットで覚えられる授業づくりをこれから考えたいです。学級活動とのつながり。本当にその通りであり、大切にしていきたいです。
• 楽しく話をうかがわせていただきました。これからの英語教育を考えるよい機会でした。金森先生に指導を受けられる学生がうらやましいと思います。今後も若い学生を育てていかれることを心から願っています。ありがとうございました。
• 久しぶりに「金森節」を聞けて、良かったです。
• とてもinspiringでした。私は初任より10年間、英語ばかりか学習全般が苦手な子どもたちを相手にしてきて、授業で何を与えてあげられるかずーっと考えてきました。昨年あたりから英語授業を通じて生徒の人間性を育てたいと考えるようになりました。このタイミングで金森先生のお話を聞けたことに、この幸運に本当に感謝しかありません。たくさんのアイデアを頂きました。目の前が少し開けたように思います。本日のためにたくさん時間をさいて下さって、ありがとうございました。今日は、来てよかったです。答えとヒントを頂けたような気がしました。
• そもそも何のための英語教育なのか、コミュニケーション力とは何かを根本から考えさせられました。もう一度、自分の頭の中でも整理してみたいと思います。ありがとうございました。
• 大変勉強になり、楽しく過ごしました。ありがとうございました。
• 本当に勉強になった。改めて言葉、コミュニケーションの大切さを意識しないといけない。また、教師として、生徒の心に響くような活動が自分はできているか。まだまだだと、とても思った。だからこそ、もっと勉強しなければと思った。金森先生の人間性も、きっとすばらしい授業の一因だと思います。人間として、まさに自分もすばらしいコミュニケーターにならないといけないと思いました。
• 良い意味で、聞く前のイメージと違いました。お話がとても上手で(もっと難しいことを話されると思っていたのですが)、楽しく拝聴しました。自分がやってきたことと重なる部分がありましたし、なるほどと思えることが多くありました。ありがとうございました。


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