異教の都 麗しの古都
砂漠の向こうにあるという異教の古都はいずこへ消えたか日干し煉瓦の町並みは青の綾目も美しい麗しの宮殿はいずこに日に六度朗々たる祈りの歌が響く都よ慎ましやかな信仰厚き人々が詣でる教会逞しき商人たちと砂の海を越えた旅人の集まる市場ナツメヤシの葉陰のオアシスよ時の流れの中で砂の波に呑まれたか魔神の呪いで砂嵐に消えたのか砂漠を越えた商人はいう都は壊されたのだと長き歴史の行き着く先でおろかな争いのはてに麗しき都は破壊されいまは苦しむ人々が哀しみに打ち沈むのだと誰が?商人は無言で指を突き出してまた砂の波間に去って行った私は身を貫かれるかと思ったほど激しく自分に突き出された指を思い出し日の沈む砂漠を見つめながら立ち尽くす砂漠の向こうにあると聞くいにしへの都この世のあらゆる食べ物と酒と動物と美しいものすべてが集まる都いまは戦火に焼け落ち悲しみは焦がされた壁の煤のごとく拭い去ることもできず残っていると暗い目をした商人はらくだの手綱を握りしめ私にそう言い残した