頭の中の古き魚
脳の襞の間には小さな魚がすみついている透明でわずかに脊椎があるような原始的な魚それが脳の間をのたくって人に太古の記憶を見せる時として大自然にもどりたいこと海に魅かれるのはこの魚のせいだこいつがいつ人の頭に生まれるかわからない胎児の時からすでに分化を始めて物ごころつくころには魚として脳に巣くっているのかもしれないこの魚を取り去ったら人は未来的になるだろうかもっと大胆に自然を支配下に置こうとするだろうかいや大自然の本当の猛威のみをおもいだし身をすくませるだけだろう魚は”憧れ”を分泌しているそれが脳を特に古い部分を刺激して自然との折り合いを仲立ちしているたとえ、いかなる災害が人の身にふりかかろうと人が立ち上がりこの星に生きて行こうとする不思議な心の力の源はここにあるのだ