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灯台

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2018年08月16日
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 小さな子供が、
 エッフェル塔とBENZとエレベーターが、
 不合理にくっついたような建物を見てる。
 それはフンコロガシのそれのように丸かった。
 道の下に道があり、建物の上に建物があった。
 深海に建物をつくりたいとねがった四十歳あたりの建築家の、
 針に糸を通せないときにうみだされたアイディアだった。
 トスア・オーシャン・トレンチの不思議なみずのなかに、
 梯子くだって飛び込みたくなるような感じで、
 僕は網膜にうつしだされたイメージをキャッチする。
 僕は小さな五歳か六歳ぐらいの女の子の頭を撫でながら言う。
 「想像力は自由だって思う?」と僕は聞く。
 「じぇんだーてきせいぎ。」と女の子は言った。
 ちょっと意地悪な質問をしてみた。
 「それは何だい?」
 「バカ、ダマレ、ヘンタイ。」と言われた。
 僕は太平洋あたりのトビウオになったような気がした。
 ジャンプをすると、
 大体貨物船のデッキにまでぶっ飛んで行ってしまう。
 クレイジー! でも私的マイブーム、社会の常識だぜ、とかね。
 「あそこなんて果物の断面みたいだね。」
 「・・・・・・」
 無視された。いま、無視された。
 僕はいままで、女の子にひそかにブレイクしていたかと思っていた、
 その性格をちょっと反省した。いや、しないけど。
 「でも僕はああいうの好きじゃないな。」
 僕はもっとぐにゃぐにゃした感じが好きなのだ。
 なんでそんなにぐにゃぐにゃしてるんだろう。
 自然を模倣してる、草とか、海藻のぐにゃぐにゃ感。
 「・・・・・・あたしは、すき。」
 ある人々は、難解で、意味不明なものを好む。
 理屈がないと言われるけど、僕は違うと思う。
 それは、まぐろが八十キロ、中には盛って百キロ、
 百六十キロで泳ぐと言われているけれど、
 本当は、時速七キロぐらいで泳ぐらしい、という種類のものだ。
 動物の体に直接センサーを取り付けるバイオロギングという方法では、
 そういうものらしい。瞬間速度とか、最高速度は別のようだが、
 それでも、こんなことがあるので情報は怖い。
 難解なものや、意味不明なものに多く触れていると、
 人は、それって本当に正しいのかという場面でとても正直になれる。
 餃子に焼肉のタレでも美味しいんじゃないかという類のものだ。
 僕の口には合わなかったが。
 「よしよし。」と僕は頭を撫でた。
 すると、女の子は蛸のような眼をして、でっかい声で叫んだ。
 「サワルナ! ヘンタイ! ロリコン!」
 僕はしょうがないので、女の子から離れた。
 それはモデルと女優が並んだ時の美貌やスタイルや身長差で、
 いわゆる公開処刑という形容がされるように、僕も周囲の眼を気にした。
 人懐っこい猫だって実はそう言ってるのかも知れない、と思った。
 しかし離れると相手にされていないと思うらしく傍に来た。
 恐れるものを知らない巨大なクジラのようにやって来た。
 何がしたいのかわからない度数は高く、ひじょうに子供だった。
 「・・・・・・どうしてあんなものを作ったんだろうね。」
 「・・・・・・お金持ちだから。」
 僕もそう思った。仮にひねりをきかせても、馬鹿だからとしか言えない。
 もっとカレーみたいにスパイスを入れたら、肩書きと妄想の産物だから。
 キングコブラ的に言ってよいなら、
 社会を芸術でリードしたいという強迫観念の行き過ぎた産物。
 でもそんなの砂浜で喧嘩する蟹同士の全面戦争ほどではない。
 「お金持ちになりたい?」
 「あたしの家、お金持ち。」
 ああ、と僕は言った。多分、ああ、を二回ぐらい言ったと思う。
 今もしここで不謹慎に誘拐しようかと言ったら、
 後ろの方にいる携帯いじっている通行人が警察に電話かけてしまう。
 「機械都市、未来都市もいいけど、レトロもいいよ。」
 かれー、と言って欲しかった。
 れとろ、と、れとると、を勘違いして。でも。
 子供はそこまで馬鹿ではない、馬鹿なのはむしろ僕の方だ。
 「アインシュタイン、すごい。」と僕は言った。
 「誰それ?」と女の子が言った。






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最終更新日  2018年08月16日 06時46分12秒



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