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―――教室 放課後――― 「ひろた―――ダメ・・・・・・」 引き寄せられている手。 ―――首筋に息があたる。 耳に息を吹きかけられ―――て。 ゾクゾクの感電。 ―――ハーモニカプレイ。 「ひと―――来ちゃう・・・・・・」 コシュ―――コシュッ・・・・・・。 衣擦れのいやらしい音。 、、、 、、、、、、、、、 まるで―――脱がされてるみたい・・・・・・。 真っ赤な顔をする鈴木さん。 茹蛸になる、鈴木さん。 「―――クスクス、風邪でも引いてるの・・?」 からか 揶揄うような響き。 ―――断定。 「でも、大丈夫―――誰も来ない・・・よ、 テラ盛りフルーツのパンケーキセットだから―――ね。 放課後は密室、 だからどんなに喘いだって―――」 * 「ゾッ―――ゾゾゾッ」 ゾンビフェイス。 溶け―――る。 「って、どうして思いっきり引いてるの」 「いやだって、」 「だって?」 「―――俺キャラ違うじゃん!!!」 * ―――十分前――― 「付き合って半年―――だよね」 改まってどうした、と振り返る広田。 「けどさ、」 「けどさ、」 「けどさ、」 ―――突然、リフレイン人形と化す鈴木さん。 こういうのを壊れたラジオではなく、 壊れかけたレディオというのが徳永式。 「一ッ度も―――。 ドキドキラブラブイチャイチャイヴェントないよね」 「サカってんのか、お前」 「サカってるよ、悪い?」 ―――認めた。 「こんな彼氏、豆腐の角に頭打ちつけてハゲろ!」 「―――いま、ハゲって言った? 男に言っちゃいけない禁句言った?」 ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ―――なんか、複雑だ。 * ―――教室 PM4時49分――― 「えーと、お前の瞳はマジ天使ダワ(棒読み)」 「―――殺すぞ、テメエ(ボソッ)」 演技指導する鈴木さん。 「感情こめろや、風立ちぬか、コノヤロ」 「風立ちぬの悪口やめろや、コノヤロ」 ・・・・・・なんかもうすげえ面倒くせえ。 ・・・・・・早く家に帰って飯食いてえ。 ―――まあ、男の子ってそんなもんです。 (でも、) (でも、) (でも、―――) 「―――なあ、千夏っ・・・・・・」 「ああっ? 何よ、まだ―――ふざけ・・・・・・」 ―――疑問の提示。 「別に俺じゃなくてもよかったんじゃないか」 「別れたい―――ってこと?」 確かに、そういう文脈に取れるわけです―――が。 「俺、こんなだから―――」 頭をボリボリと掻く。 百人の男子生徒中おそらく過半数にのぼる正常な反応。 気障なこと、気の利いたこと、恥ずかしいこと―――。 ―――絶対にできない。 * はじめて誰かに好きって言われた時はすごく嬉しかった。 人生を生きてきてこんな風な感情を一つも知らなかった。 知らなかっ―――た。 メールをしていても、電話をしていても、 一緒にデートしていても、その気持ちは続いた。 続いてい―――た・・・・・・。 本当言うと―――いまだってその気持ちは続いている。 持て余し気味だけど―――。 * 「馬鹿ね、そんなこと―――気にしてたの?」 「―――馬鹿言うな」 「わたしだって、馬鹿みたいじゃない。 ―――広田の嫌がることばっかり、して」 ちょっと、傷ついたような顔。 そんな顔を―――させたいわけじゃないから。 「目ェつぶれ―――よ」 「え?」 「いいから、いま、すげえ恥ずかしいんだよ」 ちょ―――っ。 ちょっ―――と。 いざという時―――威勢よく出れないヘタレ女の図。 「でもっ―――心の準備とかいうやつがですね・・・・・・」 * FLY...... (狭い教室が、放課後の魔法にかけられて―――ゆく・・・・・・) 時間を失う。 それから? 自分を―――見失う。 それから? それから? ―――不思議な高揚感が続く、目も合わせられない。 * 年齢を重ねてみるとわかってくる、 ドキドキの正体は、恥ずかしさや照れで、 こうしたいと思える自分と、 何も出来ないと思える自分が対峙してること。 * 本当の所―――思春期って、青春って、高校生活って、 何なんだろうと思う。 クリスマスみたいなものじゃないか、外国文化の受け売り。 何だったらパクリ。 日本人なめるなよ、みたいなものじゃないかと思う。 ―――そういうシナリオの特殊設定状態。 * 誰かに片想いをしている時ってそうじゃなかった。 切ない、とか、馬鹿馬鹿しい、とか。 それでもうまく断ち切れない糸の理由を探してた。 だのに―――付き合ってみるとやたらめっぽう恥ずかしい。 なんじゃこりゃ、と思う。 なんじゃこりゃ、は罰ゲームモード。 * 頬にあたる彼女の茶色い髪。 誰かが開けっ放しにした窓からの夕暮れの風に踊る。 and、and―――続く・・・・続く・・・。 ―――それが綺麗で、軽やかに宙に漂って、 初めて会った頃のことを思い出す、 * 折角付き合うという段になったのに、何も聞けない。 自虐的になる、不甲斐なく思う。 喋るのはもっぱら彼女の方で相槌を打つばかり。 彼女はクラスで一人か二人いる美人のタイプ。 (しかし美人だね―――) (美人だね、) (生きてて楽しいでしょ・・・・・・?) 劣等感―――引け目。 それが、足を引っ張る。 でもその時のことを、何故かすごく思い出す。 ずっと、僕の何処がお気に召したんだろうか、と考えていた。 考えて―――いた・・・・・・。 その夜は、うまく眠れなかっ―――た。 * (赤くなって―――る、) (赤くなって―――る、) ―――いまは二人とも、だ。 あの頃のように、 あの頃のよう―――に。 ―――君は笑ってるけど・・・・・・・。 「(これはこれで―――いいかなあ・・・・・・)」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年09月29日 07時59分08秒
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