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彼女がどうして昆虫採集をしようと言ったのかはわからない。 商店街を立ち止まっては歩き出す朝、 蟻のような人間、兜蟲のような車。 仄かな油のひほひはまた新らしい夏を印象せしめ、 海へと出掛けた記憶を呼び起こす・・。 まるで何も買わないで動き出す人の合間。 ヒューマン・ユニヴァース <人間的宇宙> ―――銀行についての知識は知らないけど強盗はできる、 警察官については知っているけど鑑識班については知らない・・。 宇宙ステーションと宇宙コロニーの明確な違い、 拷問は知っているけど拷問器具は知らない、 大体一緒だろ、全然違う、 そんなこと・・・・・・。 ―――ねえ。 ―――うん? (時々、子供の頃の他愛ない戦隊ヒーロー物や、宇宙刑事物や、 太陽の戦士物とかを思い出す―――んだ・・) 太陽や自然に語り掛け歌いかけているような饒舌な五官の動き―――と、 ピックアップされる―――“麦藁帽子”と“Tシャツ”と“ギャザースカート” まだ甘くあどけなさの残る整った顔立ちと凛とした表情。 気が付いたら思い出し笑いして、 眼の前にいる不思議な親しみのある平静さの人物の表情を綻ばせている。 「・・・なんだい、楽しいことでも思い出したのかい?」 男前の口を聞く、服装と口調がまるで出鱈目なんだ。 ―――幼馴染。 「いやなに、郷土料理の一種をね」 ヒューマン・ユニヴァース <人間的宇宙> 、、、 動くな――。 (昆虫にせよ、草花にせよ、人間の略奪趣味は子供時代からある) (純粋な利己主義、不安が異質な変化をした姿のようにも思う) (たとえばそれは、クランビタン村の祝祭劇チョロナラン。集団的なトランス) (本能や遺伝子のことを考える) ・・・外では雪みたいに歴史が降っている。 夏といえばアウトドア、テントの設営の仕方―――。 シュラフも、バーベキューコンロもない、冗談みたいな夏休みの過ごし方。 ああ絵のような障害・・。 嫌悪をまじえた驚嘆もあるけれど、月影に隈なく見渡される森で、 科学的な好奇心、夜の茨に触れ、天体観測、バードウォッチング・・。 妙な所から知識を仕入れ、欲望、怪奇、風味、回転。 「(いまじゃ怖くて食べられない、きのこ・・)」 「(七草のてんぷらは美味いらしいぞ、つくしも食べた・・)」 お・・・ぼ・・・え・・・て・・・い・・・る・・・ “そこに、煩瑣な秘密を希わせるものは何だろう?” お・・・ぼ・・・え・・・て・・・い・・・る・・・ “山や森の地図、運動靴の足跡” 跳///ね///て/// ちょっとずつ、ちょっとずつ・・・。 少しずつ、少しずつ、僕等の世界は壊れていったんだと思―――う・・。 地球を育ててみるという小説はどうだろう、 月の石を食べてみるという漫画はどうだろ―――う。 ヒューマン・ユニヴァース <人間的宇宙> ―――情報は敏捷の身体に逃走を考えさせる、 命の危険を直感した動物のように、 百科事典で得た知識から脱線してゆく知識のように、 敏捷な身体はすぐに鋭く立ち上がった、筋肉と骨と血が四つ目の要素によって、 ぶつかり合うのが感じられ―――た・・。 フィールド・ワークをしよう。 さて、この森には何千種、 あるいは何万種の昆虫がいるだろうか? 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 相愛なる第一階を登つて始めて之を知るを得るなれ――。 狂気の沙汰だ、神経組織とグレープフルーツの夢、 拳銃とセックスのノイローゼ。 玉虫色の逡巡、そしてこの世界だって喰らっ―――た・・。 手塚治虫を読んだり、電池や万華鏡を作ったりした。 生活にもつれた蜘蛛糸をみるように、過去の僕等のさまざまな探検や、 冒険はカタログ。エリア51、富士の樹海。 面白いや、楽しいという感覚が、 合理的解明をもとめ、人間に夜の暗闇を走らせる。 時計の分解もした。自転車の分解もした。 いやしかし、僕等は蛙の解剖をしなかった、 爆竹を蟻の巣にいれなかった。 昆虫に備わっている複雑で驚異的な感度の知覚機構への畏怖? いや、そういう弱いものいじめが嫌いだった。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 感動は無気力なブラックボックスの中にはない・・。 大腸菌が適応的に作り出す乳糖利用の酵素類みたいだ――。 昆虫や菌類や蚯蚓など土壌中にすむ生き物の働きによって、 有機物はすべて肥沃な土壌の大切な要素である腐植土に変わる。 暗く蠢いているものは、果てしもなく長く思われた沈黙に似ている。 昆虫は枯れた植物や死んだ動物を再処理し、 効率的なリサイクル・システムによって地球を清潔に保っている。 昆虫たちはしきりに何かの目的に向かって動いている。 虫の世界はバッカスの饗宴。多様性はパノラマ的景観を呈す・・。 的へと一直線に向かうアーチェリーみたいなものだ。 汚れに染まぬ数多の声が、 静かに人の魂に向かって語り掛けているような気がする。 NPCみたいな存在だけど、そこに心がないという根拠はない。(僕等はまだ、“心”についてよく知らない・・) (―――べとべとびたびたな、蛙の卵を見ながら、 生物の本質を見たような気がしたのを思い出す・・) 食事、繁殖。農作物や家屋を食い荒らし、動植物の病気を媒介し、 受粉を助け、害虫を制し、排泄物を分解する・・。 そして食虫花は貴重な栄養源として昆虫を食べる・・。 アルプスの頂上も、深海の底も、北極の氷山も、アフリカの猛獣も――。 、、、、、、、、、、、、 その一瞬の先に垣間見えた。 脳の鋳型。パターン認識。共通にセットされている行動プログラム・・。 (二重、三重、四重五重にきこえる蝉の鳴き声は、 アスファルトの街とは違う響き方をする。 腹から尻尾へかけての伸縮であれほどの高い音を発し、 本能は身体の構造あるいは形と結び付いている) 心理学、統計学。底知れない甚大な疲労をしながら積み上げてきた歴史の、 脳内の快楽をつかさどるモノアミン作動性神経系。 オピオイドペプチド作動性神経系。 さて朝には四本足、昼には二本足、 夕べには三本の足の者は何か? 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 薄い紗に冷たいアルコールを浸して身体の一部を拭いたあと。 重たい一秒一秒が、たった一匹の昆虫の中に凝縮されている。 、、、、、、、、、、、、、、、、 押し入れで蟷螂の卵が孵化している。 あるいは無垢な眠り、白昼夢のような妄想の中に達成されている。 歯朶、毛蕊花、毒人参、鋸草、じきたりす、丈高い雑草。 小鳥の囀りで足りないところは昆虫の羽音が補っている。 ―――愛という不思議な言葉がもたらす美しい一つの場所の作用だ。同性愛的な、中性的な友情。無尽蔵な驚異と歓喜の材料を提供してくれた。 例えば植物の生長の模様、動物の心臓の鼓動、昆虫の羽根の運動の仕方・・。 森蔭は咽ぶばかりの松脂のにほひ。 アダムとイブの頃からの人間の進化の道程をさかのぼった遠い祖先の時代の記憶・・。 傷心の風。光と花と夢。彗星の運動と旋転に従属させる。 ―――ねえ、君はがっしりしたね。 ―――うん? ―――咽喉仏も顔のラインも変わった、髭も生えてきているじゃないか。 「・・・・・・」 はじめもえたつ色にそまって年頃らしく伸びた白い脛、 快感誘起性聴覚要素のある虫の声。 ファンがひっついたトランジスターラジオ。 蝉は地上に出るまでにどんな夢を見たのだろう? しなを作り、霧の色と音の水をまとって・・。 渋面をして他人との交渉を避けたりする僕等のそれは、 臙脂虫、油虫、足長蜘蛛のいる草叢に、積極的対他性を表わしている。 甘える者と甘えられる者との間には、常に積極的な通路がある。 香料や試薬も注いでみようとする・・。 フェアリーやゴブリンの王国。 ちぐはぐな凹凸は近代的感覚が根こそぎ奪っていったもの。 鉱物的興味と百科事典の耽読。 マラリア、デング熱の病原蚊、睡眠病の蠅、毒蚋・・。 命の精華。(フレームに入らなくなった。 ファインダーで覗きこめなくなった・・・君の姿は―――) 眼にかかっても気にしなかった前髪だったのに、、、、、、、、、、、、、 絵で過ごすような長い一日。 カーラーで巻いて、アイロンで内巻きにして、 ワックスなんかをつけてカールさせていて・・。 この前の東京のごちゃまぜ感の強いファッション―――も、 身体にあわく映って揺れているよう―――さ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、 華車な骨に石鹸玉のような薄い羽根を張った、この生き物。 (カブトムシをお小遣いにしようと企み、 融合実験ならぬ有言実行し、 ショップに売りに行こうとしていた悪い顔も忘れたよ・・) 、、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、 頭の中に爆竹やコーラの泡がある。破裂しそう。 すっかり女の子らしくなっちまいやがってさ、 君が似合うのは、それこそ乞食みたいにした泥だらけの、 短パンとTシャツじゃなかったけ? 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 行こうぜって言葉にドキドキした僕を誘ってくれないか? 「君と掻き分ける空気が好きだった、と言ったら信じるかな?」 ―――信じるよ。 「誰よりも信頼してた、何でも一緒に出来る君のことが、 わたしは好きだったんだよ・・・・・・」 犬みたいな顔をして一緒に馬鹿をしていた友達とお別れしたように、 眼を欺かれ、マニキュアにコンシーラーに、口紅、 そんなのが全然変じゃなくなってしまいやが―――る・・。 誇張・変形する神様の視点。愛の視点。 ランダムドット・ステレオグラムの誘惑。洞窟の影。 時間が、イメージの範囲に思えてくる・・。 牛の群れ、バターと砂糖・・瞑想――。 夢想的で、空想的な領域――感情のパラメーター。お伽噺が終わってしま―――う・・前に・・・。 長い長い物語が終わってしま―――う・・前に・・・。 ヒューマン・ユニヴァース <人間的宇宙> ―――流動でなくて、必ずいくらかの律動的な弛張がある、みたいに――。 互いに少しずつ異なる角度の識別を持っていることも知らないで・・。 心臓を搏撃したように感じられる――。 少年時代、あるいは少女時代、あるいは―――子供時代・・、 汗が煌めき、頬が火照り、陽が雲を透かすように、躍動し、 薄い影を足元に投影する、雪崩れてゆく、飛び込んでゆく、 僕等はそれを、忘れないでいる方法を見つけた―――から・・。 Let's find a song that never ends... Let's find a song that never ends... (僕等はきっと―――まだ何も知らない・・・) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年05月14日 23時05分12秒
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