金曜日……国井咲也の満巻全席　第57席

アニメ化作品も絶好調といわれる
（衛星なので咲也は観られない。しくしく）
雪乃紗衣（ゆきのさい）さんの
『彩雲国物語』（角川ビーンズ文庫）。
原作はシリーズ累計で300万近いというので、
読んでおられた方々には
「いまさらおそいよ！」なのでしょうが、
まだまだアニメ化ときいて
「そういう作品があるんだ」という方も
多いのでここらで１発。（なにを？）

いやもう、これがね！
素晴らしいのよ！
以前、このブログでも
咲也がどっぱまりしているラノベで
竹宮ゆゆこさんの『とらドラ！』について
きゃーきゃーいったけども、
ゆゆこリズムがコミカルながらも
しゃきしゃきしててどこか甘酸っぱい（レタス系）ものなら、
雪乃センセのはほんと、『小説』！！
どーん！！
ラノベ的表紙だけで中身もすべてそうだとは思ってはいけません。
まぁ、当然ラノベ・コメディな部分も
たいへん面白く読めるのだけれども、
ニュアンスとしては京極夏彦氏の
中野の本屋シリーズに近いかな。
内容ってんじゃなくて、
……う～ん、そうねぇ。
「血の匂いも感じる事ができるような文体」かな？
そのへんの表現が素晴らしくてね、
世界の構築バランスがおそろしく良いんですよ。
壮絶で陰惨な地獄がきっちり読める（見える）から、
「あんな世界にはもう絶対にさせない」とがんばる
秀麗ちゃんやそのヒロインを守る漢（おとこ）たちの
熱いハートに泣いちゃうのね！
これがただ「君を守る」っていうんじゃないのが
この作品のミソ。
強いんだ、秀麗ちゃん。
『ツンデレ』とかいう強さじゃない、
人としての強さ。
咲也造語だと『アルデンテ』（実は芯がある、の意）。
ものすごい努力家で庶民派。
庶民派（血統は真正の姫なのだけども）だからこそ、
民を守るのだ、と政治家を志す女の子なのね。

作品に登場するメインキャラクターたちは、
政治の話でもあるのでみんな頭がいい。
ただ、頭がいいといっても、
妙な発明したり、
数式をどーっと解くようなものではなく、
また、
『デスノート』『遊戯王』のような
“戦略もの”という
対個人知略というよりも世界（多数）をみつつ、
動き、動かす『沈黙の艦隊』の海江田艦長のような
“頭の良さ”ね。
みんなあのレベルの頭脳明晰さで
困難に立ち向かうんだけども、
これ、
作者の雪乃氏の指向（嗜好？）なのでしょうね、
ほぼ全員が先天的天才ではなくて
努力型の天才、つまりは『秀才』として描かれています。
作中にもたびたびそのニュアンスの表現が登場しますが

「努力を努力と思わないで努力できる才能」

っていうのが、基本。
だーから、キャラがみんな背負ってるのね、
「過去」を。
その自分の過去をふまえて「誰かを守る」ってことなので
なけるんだ！
そう！
泣けるのよ、この作品！！
シリーズ第8作目の『光降る～』なんか、
ずっと泣きっぱなしだったよ！
世界の政治家に読んでもらいたいよ！
医者を志す若者に読んでもらいたいよ！

これラノベはラノベだろうけども、
“短編小説”だから！
すごいよ！　小説なのに短いんだよ！
あっと言う間に読めるんだよ！
京極作品の風格をもちながらも、
某センセや某センセが目指す（やってる）、
「文字数を減らして読みやすくするという“デザイン”」を
『彩雲国物語』はやってんのよ！
いやこれもう「完成」の域に
達しているといえるんじゃないかっ？！
だって、ホントに読後感は
うーんと長い『風と共に去りぬ』とか、
パール・パックの『大地』だぜ。これ。
まごうことなき
大長編大河（でロマンス）ということなんですよ！！
でもしっかりアニメ的コメディ＆ファンタジー。
すげぇ！
すげぇよ！
未読のひとはすぐにでも書店へはしれっ！！
目の前に並んでいるのは『彩』という名の、
希代なる『才』だぞ！！
リアルタイムでこういう作品と接せられるなんて、
本読み者一生の幸福である！！
読み逃すなっ！！！！
ああっ、
ああああっ！！
“紗衣ならばの才による、彩”！！
雪乃センセ、天才だっ！
（駄洒落がいいたかったわけではありません(笑)）