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いよいよ完結、三島由紀夫著
『天人五衰』を読み終えた。
この作品を入稿した後、市ヶ谷で割腹自殺をしたという、三島由紀夫の遺作。
妻を亡くし年老いた
本多は、わき腹に3つの黒子のある少年
安永透を、
松枝清顕→
飯沼勲→
ジン・ジャンの生まれ変わりと信じて養子にするという設定。
透が二十歳を過ぎても死なず、彼らの生まれ変わりではないとわかった後、自分の死を感じ始めた
本多が、出家した
聡子に会いに行き、再会したところで幕を閉じる。
これまでの3作(
『春の海』、
『奔馬』、
『暁の寺』)も決して容易であるとは思わなかったけれど、本作は特に難解。。。
聡子の口から出た言葉は、
本多と同様、私もにわかには信じがたく、どう解釈していいのか、読み終わった後、しばらく混乱してしまった。
『暁の寺』から登場し老いた
本多の友人となった
久松慶子が、
透に対して次のようなことを言っている。
「あなたは歴史に例外があると思った。例外なんてありませんよ。人間に例外があると思った。例外なんてありませんんよ。
この世には幸福の特権がないように、不幸の特権もないの。悲劇もなければ天才もいません。あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです。もしこの世に生まれつき別格で、特別に美しかったり、特別に悪だったり、そういうことがあれば、自然が見のがしにしておきません。そんな存在は根絶やしにして、人間にとっての手きびしい教訓にし、誰一人人間は『選ばれて』なんかこの世に生まれて来はしない、ということを人間の頭に叩き込んでくれる筈ですわ。」
続けて
慶子は、「例外はない」としつつ、
清顕や
勲、
ジン・ジャンについて、
「松枝清顕は、思いもかけなかった恋の感情につかまれ、飯沼勲は使命に、ジン・ジャンは肉につかまれていました。(中略)外から人をつかんで、むりやり人を引きずり廻すものが運命だとすれば、清顕さんも勲さんも、ジン・ジャンも運命を持っていたわ。」
「本多さんが探している生れ変りは、自然が自分の創造ったものに嫉妬せずにはいられぬような、そういう生物なんですもの。」
と言い、例外を肯定しているように読める。
しかしそれが、
聡子の言葉によって再びひっくり返され、最初の
慶子の言葉がより強いものになっている・・・私は今のところ、そう理解している。
【今年の読書目標達成まで---あと25タイトル】
折り返し地点までやってきました~!