020354 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

現代京都詩話会ホームページ

現代京都詩話会ホームページ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007年05月27日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
1.
半夏 田中昌雄

せめぐ気圏
雨の前線に弧状列島が水漬くころ
塩漬けの死海では
いくさの前線が神の三枚舌を切り裂く

およそ地に張りついて生きる
凡百の下々にとって
身に降りかかるどんな小さな厄災も局所にすぎぬ
とはいえないが(わたしはきょう蟻を踏んだ!)
〈国〉や〈世界〉を身とする者は
とりわけパノラマが好きだ(蟻以下のわたし!)

そのパノラマに
かつて瞬時、
幾万の消失があり、
そのまた以前、それ以後も
幾百千万の消失がつらなったが、
パノラマに変化はなかった

風塵
裏返った生よ!
生きることも 死ぬことも
わしづかみだった時代、
少年は
それでも歯をむき出して
笑っていたか?

あの時から
半夏。
回帰するオニヤンマは
そのたびごとにすり抜け、
夢は
何度も網を張る。

めぐる暦日
あの世からこの世へ
また、暑い夏がやってくる。
(半眼の、
 はぎとられた
 もうひとつの夏よ!)

ならば、老体
生き残った亡霊!
なおも跣(はだし)で恩讐のはざまに立ち
銀翼の回路を鎮めよ

リトルボーイ!
挑む少年は
いまも少年

2.
寒蝉 田中昌雄

路傍の寒蝉
ピクリともしない
とはいえ
永遠に動かないと
だれが云えるか!
―少なくとも(きみ)の
 微塵子よりも微細な
 離合集散は
 きみの生き死ににかかわりなく
 ずっと元気だ!

その蝉の
一瞬と永遠
一点も無限も
見境なく同じだが、
有限な
自意識だけが
―踏もうか踏むまいか?
まずは蹴飛ばしてみるのだ!

この大きなお世話
タガのはずれたさいづち頭は
まちがいなく出来そこないだが、
そのせいで
太陽系第三惑星は
火星を尻目に
皇位簒奪に熱中しはじめたという
エンショ、エンショ!

若者たちもまた熱く
「愛国」を語りはじめる今日この頃
殺されて、殺されて
黙々と消えていくものは何だ?
起ち上がってくるものは何だ?
と、原初以来の風がささめく
どこにもいて
どこにもいない
デジャヴのような
夢の楽土?
その窪みで
ミミズが羽化するのをじっと待っている子供は
きっと永遠の命を生きる

もう思春期をひきずった
血の気はいらない
目を引き継ぎ
気の遠くなるほど星を見つづけた者たちの意望は
老人と子供ばかりの
砂時計のような
まほろば
(かすかに木々が
 身じろぐのを哀惜する)

そこは冬

まだヒグラシは鳴かない


3.
虹の傀儡師 田中昌雄


木の鱗
封印された受胎の木魚
億年の墓をあばいて
地霊のミイラに心血を注ぐ
その再生(あるいは吸血)に
石炭紀以来の
死に物たちが狂いはじめる
(たとえばペガソス
 その畜産
 石汁を呑む死馬)

加速する
燎原の人文字
すっくと逆立して
天を足蹴に
ニューロンの毛髪で地を払う
ナルキッソスの魔物
「心頭不滅
 火もまた涼し」

蛆蠅の
〈わたし〉という小皇帝が
奴婢の姿でかしずかせる
わが身の、模作
俑の肢体をバラバラにして
五体投地する
世界庭園の挿し木
(蛇苺に魅入られた
 傀儡師という名の傀儡)

身に巣くう
生霊である〈わたし〉は
身のほど知らずにも足を描き
身から出たのだ、金棒かついで!
(蜘蛛が置き捨てた
 空巣の虹よ)
 糸を切らして
 凧が舞う
 鬼蜘蛛の形相で)

虹は
目のない鳥が死肉で運ぶ?
都会のチベット
(きっと22世紀には)

「まだ木の葉を小判には変えられないが…」
と、留保する
全能感の〈わたし〉の末路は
赤、青、緑
まみれて白虹
(躰の奥で、地の底で
 〈わたし〉への叛乱がはじまる)

ホリゾントの影絵
木魚の夢
(中空の
 この世は脳髄
 あの世も脳髄)
演目は
「丑寅の蓑虫
 灯蛾(ひとりが)の恋」

御託
「せめて俺が生き物という現象であるうちに
 俺と世界と
 どちらがどちらの見納めになるか
 天覧したい」

だったら
死んでも
眼だけはおいていけ


4.
ミラージュ 田中昌雄

遠目の異客
気の祠
神様が「おいで、おいで」している
子供たちの日溜まり
裸形のシェルター

大人たちが卵割する
手込めの傀儡
(わたしも不審者)
思いをとげられなかった者たちの
ルサンチマン(手塩にかけた)
殺す母と
殺せぬ母の
(男の夢精
 死者の生誕)

頭で見る
自大の浮島
「きみは世界を睥睨するが
 すべてはきみの股間に落ちた
 きみ自身の影にすぎない」
(エーゲの妄想
 アトランティスの碑文?)

(立てなかった子供は
 お臍や足裏で
 どんな夢を見たか)

成り上がりのヒトの双六に
脇道をつける
ででむしの迷路
(アリアドネの糸)
虫たちが踏みつける
ヒトの名書き
(模様ですらなく)
そのあとかたに
無人に豊かな
未来が見える?

流沙に死者を充たすのは風
ならば
この湿地
木に鼻をくくれば
犬のようにわたしは
馥郁と(汎神論的に)
世界認識できるか

物の怪に
むしりとっては投げた
毛衣(恥毛その他若干を遺す)
そのたびに物の怪になった
九十九(つくも)の体毛

「巣はくらますものなのに
 まっすぐな舗路に
 家を建てるのは不自然だ」

身をくらました子供たちが
蓬莱のかなた
そのまたむこうの仙山で

一心に(微々として)
螺旋の隧道をかじっている












お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年05月27日 15時02分52秒
コメント(0) | コメントを書く


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

現代京都詩話会

現代京都詩話会

お気に入りブログ

まだ登録されていません

コメント新着

しばらく見ていなかったが@ それにしても 詩人は言葉を大切にするものだ 己の吐い…
根木哲正@ お元気ですか! 堀高の時の佐藤文代を探しています! …
王様@ 潮 吹 きジェットw サチにバ イ ブ突っ込んだ状態でジェット…
ドライブ好き@ 風呂入るのメンドクサイ! http://feti.findeath.net/migb7fj/ 今日…
開放感@ 最近の大学生は凄いんですね。。 竿も玉もア○ルも全部隅々まで見られてガ…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.