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2020.09.08
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三生三世十里桃花 Eternal Love
第50話「吉報と凶報告」

白鳳九(ハクホウキュウ)は東華帝君(トウカテイクン)が大難に遭うと知り、それまでそばにいたいと懇願した。
「私が大難に遭うと?」
「…え?違うのですか?」
東華帝君は自分が間もなく死ぬ者に見えるのかと呆れたが、鳳九は見えなくても大難に遭う日まで離れないと抱きついている。
しかしそこに突然、白奕(ハクエキ)が現れた。
白奕は偶然にも白浅(ハクセン)の婚姻のことで天宮に来ていたという。
すると東華帝君は天族と狐族の婚姻は一大事だと言ってさっさと帰って行った。
取り残された鳳九はその場にひざまずき、いくら折檻されても東華帝君から離れないと訴える。
「諦めぬつもりか?」
「諦められません…ゥッ…」

崑崙山は墨淵(ボクエン)の復活と共に龍気が湧き立ち、ふもとには噂を聞きつけた小仙たちが集まっていた。
一方、崑崙虚ではすでに弟子たちが戻っていたが、仙気が漂うのを見て師匠の帰還を知る。
そこで門で待っていると、ついに7万年振りに墨淵が姿を現した。
「弟子恭迎師父」
「長い間、待たせた…」
弟子たちはしばし感動でむせび泣いていたが、墨淵と共に正殿へ向かった。

墨淵は改めて弟子たちの拝礼を受けた。
すると第16番弟子・子闌(シラン)が報告があると申し出る。
「師父が逝ってから司音(シイン)も姿を消し、それ以来、消息を絶ったままです
 恐らく無事ではないと…」
「無事です」
その声は物陰から現れた白浅だった。
「師兄、私が司音です」
白浅は兄弟子たちの間に入って一緒にひざまずくと、師匠に叩頭してから告白した。
「私は師兄たちを泥酔させ、師父の仙体を抱え崑崙虚を出ました、それが真相なのです
 16師兄が言わなかったのは私を守るためでしょう」

「17?…17なのか?!アイヤー…
 名を伏せて隠れているのだと思ってあらゆる土地を探したが、見つけられなかった
 ところがお前と来たら…よりによって…
 いくら私たちから身を隠したいとは言え…女装して生きて来たとはぁぁぁ~」
「ちょっと16師兄?…私のこの姿が女装の男に見える?」
その時、ようやく一番弟子の疊風(チョウフウ)がすでに司音が女だと知っていたことをばらした。
実は司音の正体は青丘白浅上神、四海八荒(シカイハッコウ)で尊ばれ、自分たちが敬意を払う立場になるため、言えなかったという。
しかし白浅は師匠がいる限り自分は永遠に崑崙虚の弟子であり、師兄たちの司音だと安心させた。

白浅は折顔と白真と一緒に裏庭へ出た。
「師父がこんなに早く目覚めるとは不思議ね~」
「夜華(ヤカ)が一生分の修為(シュウイ)を与えたからだろう」
「夜華も一途な男だ、だが恩を返し終えたお前は再び恩を受けたことになった
 墨淵への恩は心の血で返したが、夜華への恩返しはどうする気だ?」
しかし白浅は四兄の問いかけに臆する様子もなく答えた。
「私と夜華はいずれ夫婦になるのよ?夫婦の間には愛さえあれば恩返しなんて必要ない
 そうでしょう?…房間に戻るわ」
折顔と白真は思わず顔を見合わせた。

その夜、墨淵は珍しく折顔と桃花酔(トウカスイ)を傾けた。
昔はどんなに折顔が勧めても飲もうとしなかったが、墨淵は聞きたいことが多いので酒の力を借りたいという。
「なぜ17は私を連れて青丘へ戻った?」
しかし折顔は聞くべきかまず良く考えた方がいいと言った。
「目覚めて以来、心が乱れているし、白浅への思いは弟子に対するものか、または愛なのか、
 混乱するだけだぞ?」
「…話してくれ、聞きたい」
「そなたが逝った時、17は亡骸を抱きかかえていた
 悲しみのあまり逆上し、翼(ヨク)族を皆殺しにしようとしたのだ…」

その頃、司音の房間に子闌が布団を抱えてやって来た。
「私の房間も客間も師兄たちに占領された、だから今夜はここで眠ることにしたよ~」
すると子闌が翼族の公主・臙脂(エンジ)を覚えているかと聞いた。
「若水(ジャクスイ)の戦のあと会ったことはないけれど、物分かりが良くて感じのいい娘だったわ」
「ああ…感じのいい娘だ」
実は子闌は人間界で司音を探している時、臙脂と顔見知りになっていた。
白浅は16師兄が臙脂に恋したのだと気づいたが、子闌は急に話を切り上げて眠ってしまう。
「いいところで話をやめるの?!」
仕方なく白浅も布団に潜り込んだが、ふいに夜華のことを思い出した。
…こうやって夜華と話したい
…でもまだ私の言葉を理解できないわね
…だって今は満1歳くらいだもの
…どんな赤子かしら?息子の阿離(アリ)と似ているかもね

墨淵は酒を飲みながら折顔の話を聞いていた。
「(胸に手を当て…)ここから心の血を抜いたのだ、それを碗に入れ、そなたに飲ませていた
 救えると分かっているならまだしも、何の確信もないままに…そうやって仙体を守ったのだ
 九尾狐(キュウビコ)族の血を使って元神を失ったものを守るとはな~」

一方、東華帝君を諦めきれない白鳳九は、一芝居打ってそばに置いてもらおうと企んだ。
そこでちょうど床に就いた東華帝君の隣にいきなり姿を現し、人間界で帝君に操を捧げたと知った父からぶたれたと同情を引く。
しかし東華帝君はあっさり鳳九の顔の傷が偽物だと気づいた。
「小狐狸よ、″断つべきは断つ″と先日、言ったのを忘れたか?そなたの恩返しはすでに終わった
 また何をしに来たのだ?」
「大難に遭うまでおそばに置いてください」
東華帝君は呆れ果て、自分の年齢を知っているのかと聞いた。
「そなたの父が生まれる前にもうこの姿だった、そなたが知らぬ世の移り変わりを見て来た
 両手を血に染めて戦った私を知らぬであろう?
 そなたが慕うのは本当に目の前にいる者か?言っておくがそれは本当の私ではない
 太晨宮(タイシンキュウ)にいるのも本当の私ではない、無論、人間界で会った者も違う
 本当の私とはかつて掟を定め、天地を治めた者、欲や感情がなく、世の無常も知らぬ
 何を見ようと心が動かぬ東華紫府少陽君(シフショウヨウクン)だ!」
「でも…」
「もう良い、今すぐ立ち去れ」
(´・_・`)、しょぼ~ん

白鳳九は作戦を考えてくれた成玉元君(セイギョクゲンクン)に失敗したと報告した。
すると成玉は司命星君(シメイセイクン)に東華帝君の過去を説明するよう頼む。
「まだ天君が赤子の頃、帝君は諸神を率いて戦い、四海を平定しました
 もちろん私も書物から得た知識です」
「ほおぉぉ~そんな高齢じゃ大難にも遭うわね~」
しかし成玉の話を聞いた司命星君は帝君が大難に遭うなどあり得ないという。
もし天地を治めた帝君が大難に遭うとなればすでに知れ渡っているはず、混沌にかえるどころか鳳九より長生きだと教えた。
「お忘れなく、帝君は石から生まれたのですよ?しぶといのです」
成玉は霊宝天尊(レイホウテンソン)が言っていたと訴えたが、どうやら誤解だったらしい。
「帝君が大難に遭わないなら、今日の私って本当に恥さらしだわ…
 どうしよう…父上に知られたら死ぬほどぶたれちゃう…」

実はその頃、白奕は娘のために東華帝君に拝謁していた。
そこで人間界で娘と夫婦であったなら、鳳九を娶る気があるのか尋ねる。
父として娘の心は見て分かるもの、白奕は帝君の気持ちを聞きに来たと率直に話した。
すると東華帝君は自分と白鳳九には縁がないと断言する。
そんな2人の姿を回廊から鳳九が見ていた。

東華帝君は白奕を見送ると、隠れている白鳳九に出てくるよう命じた。
姿を現した鳳九は帝君が大難に遭うと誤解し、そばにいたい一心で恥をさらしたと釈明する。
東華帝君は自分たちに縁はないと言い聞かせたが、それでも鳳九は食い下がった。
「私のことを何とも思わないなら、あの日、なぜあの小屋に?
 もし心の中に私がいるなら、人間界の時のように…」
「はおら(好了)!」
一喝された鳳九は最後の手段に帝君にそっと口づけした。

しかし東華帝君は顔色ひとつ変えず、鳳九を睨みつけている。
「なぜ私には冷酷なの?」
「私は誰に対しても同じだ」
「違うわ…そうとは思えない」
すると東華帝君は実は白奕が娘を娶ってもらえないか頼みに来たと教えた。
鳳九はあの父が頼み事をしたと知って衝撃を受け、それでも東華帝君が断ったことに深く失望する。
「私のせいで青丘に恥をかかせてしまうなんて…もう東華帝君から離れます…ゥッ…」

白鳳九は逃げるように天門へ走った。
すると自分が来るのを待っていた父の姿がある。
しかし白奕は鳳九を叱らず、恥を知って傷ついた娘を黙って連れて帰った。

一方、白鳳九が青丘へ帰ったと知った司命星君は、珍しく東華帝君を諌めた。
「小殿下は恩返しのために天宮へ来て、人間界にまで下ったのです
 いたわりの言葉もないのは、傍観する私から見ても酷だと思いますが…」
そこで東華帝君は、運命簿において縁のない者同士が縁を持つことがあるかと聞いた。
司命は確かに自分が書き換えない限りは不可能だという。
「では婚姻を定める″三生石(サンショウセキ)″でも無縁なら?」
「三生石で?」
すると東華帝君は寂しそうに1人で出て行ってしまう。

崑崙虚の復活の裏で、翼界では″先王・擎蒼(ケイソウ)が戻り、翼王・離鏡(リケイ)を成敗する″という噂が広まっていた。
当時の翼族の栄光を懐かしむ民も多く、先王の残党が怪しい動きを見せているという。
離鏡は王位にしがみつく気はないものの、民を顧みない父だけには王位を譲れなかった。
「私がここである事をなせば、翼族と世を守れることになるやもしれん…」
そこでわずかに残った臣下に信頼できる兵を集め、大紫明宮(ダイシメイキュウ)を死守するよう命じた。
臙脂は大戦後の翼界を再建した兄の功績を称え、誰が翼王になっても二兄には及ばないと励ます。
「二哥哥が何をするにしても必ず私が助ける」
すると離鏡は天宮へ行って皇太子に会ってくると言った。

離鏡が洗梧宮(センゴキュウ)を訪ねると、慶事の飾り付けに気づいた。
結局、皇太子は2ヶ月ほど不在のため会えなかったが、夜華と白浅の婚儀が近いと知る。
すでに司音との縁は尽きたと分かっていても、離鏡は言いようのない喪失感に襲われていた。



墨淵が戻って10日ほど経ったが、未だ謁見を求める客人が絶えなかった。
そんな中、師兄たちと談笑していた白浅は、子闌から″婿殿といつ会えるのか″と揶揄され、思わず再来月の婚儀に招待するという。
白浅の婚儀の話題を聞いた墨淵はなぜか顔を曇らせたが、白浅は師匠の様子がなぜ変なのか想像もつかなかった。
「以前、白真とも話したことがあるが、お前は色恋に疎い
 出来のいい神仙だが、男女の情が分かっていない」
折顔に指摘された白浅は目を丸くし、同じ事を四兄にも言われたという。
「…本当に疎いな、疎すぎる」
「あぁ?」

白浅は煉丹炉(レンタンロ)の掃除にやって来た。
「ここは片付いているわ」
すると奥の部屋から第2番弟子・長衫(チョウサン)が現れる。
「当然だろう?最近まで使われていたんだ、許婚から聞いていないのか?」
あの夜、右腕を失った天族太子が血まみれでここに来たが、なぜか傷の手当てではなく、煉丹炉を使ったという。
白浅は夜華が誰にも知られず丹薬を作るためにここへ来たと話し、実は自分のために作ってくれたと教えた。
「そうだったのか、お優しいのだな〜では夕餉の準備をしてくるよ」
「はお」
…すべては私のためだった
…本当は神芝草(シンシソウ)も修為も私が師父に捧げるべきなのに、でも夜華が
白浅は改めて夜華の自分に対する深い愛情を実感していた。

つづく

(๑°⌓°๑)え?16師兄が言わなかったって?司音が師父を連れて逃げたって知ってたの?





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最終更新日  2020.09.08 23:49:11
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