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2022.08.06
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse
第11話「龍尾神への祈り」

淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)は3万の新兵のため、黙々と龍尾神(リュウビシン)を彫り続けていた。
やがて夜も更けた頃、手元が狂った緹蘭は誤って親指に小刀を刺してしまう。
侍女が慌てて門衛に知らせると、すぐ穆徳慶(ボクトクケイ)の耳に入った。
そこで穆徳慶は軟禁中のため侍医を派遣するにも皇帝の許可が必要だと伺いを立てたが、皇帝は苛々しながら報告など不要だという。
「掟の通り対処せよ…チッ、頑固な女だ」



一方、なかなか引っ越しを決断できずにいた清海(セイカイ)公・方鑑明(ホウカンメイ)は方海市(ホウハイシー)も連れて行くと決心、晴れて霽風(セイフウ)館は皇宮へ移った。
片付けが遅れていた海市は翌日に引っ越すことにしたが、今日は官服の採寸のため綾錦司(リョウキンシ)へ向かう。
すると海市は寸法を測ってくれた鞠柘榴(キクシャリュウ)の手首に方卓英(ホウタクエイ)が越州の母からもらったと話していた真珠の腕輪があると気づいた。
そうとは知らず柘榴は友からもらったものだとごまかしたが、その時、偶然にも少府監の内侍・施霖(シリン)が官服の生地を届けにやってくる。
「お?もしや新しい殿中郎の方海市方大人では?
 …私は清海公と懇意にしておりまして、施叔叔と呼んでください」
「施叔叔」
「方大人の武挙の合格、霽風館の移動、これで清海公の婚姻が続けば3つの吉事が重なりますな~」
実は方鑑明には父が決めた婚姻があり、相手は幼なじみで綾錦司の典衣である鞠七七(キクシツシツ)だった。
″儀(ギ)王の乱″のせいで婚姻が遅れてしまったが、皇帝が自ら采配するという。
寝耳に水だった海市は顔色が一変、そこで帰ることにした。

旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は緹蘭の怪我が気になっていたが、自分から尋ねるのも癪だった。
そこで医官院を訪ね、自分の治療記録を見たいと口実をつけて緹蘭の様子を探ろうとする。
山積みの治療記録に困惑する褚仲旭、その時、回廊から女官と医官が言い争う声が聞こえて来た。
聞いてみれば愈安(ユアン)宮のウサギが具合が悪くなり、医官に診せに来たが断られたという。
そこで褚仲旭は緹蘭のウサギの世話を穆徳慶に任せ、ひとまず昨日の治療記録を報告するよう命じた。
「陛下…昨日の治療は一件のみでした、淑容妃が小指を負傷され、薬を出しました
 休息を取るように伝えたのですが…薬を塗って簡単に包帯を巻いただけで彫刻の続きを…」

その夜、方鑑明が昭明宮に戻ると土砂降りの中、海市が門の前でうずくまっていた。
驚いた鑑明は海市を連れて殿内に入り、急いで濡れた身体を拭いてやる。
「師父、まるで子供扱いですね…そんなに年上だと?」
「そうだ、世代が1つ違う」
鑑明は茶を入れて温まるよう言ったが、海市の様子はどこかおかしかった。
「私と卓英が師父の幸せを邪魔したのですね?私たちがいなければ家庭を持って子供もいたでしょう」
「何があった?…とにかく今日はここに残れ」
鑑明はひとまず着替えを取りに出て行ったが、回廊でばったり方卓英と会った。
そこで卓英に海市の着替えと薬湯を届けるよう命じる。
卓英は昭明宮に海市がいると知って喜んだが、着替えと薬を持って行った時にはもういなかった。

海市は誰もいなくなった霽風館に戻った。
すると翌朝、方卓英がやって来る。
「昨夜、薬を届けに行ったらいなかったが、やっぱり帰っていたのか」
しかし海市はいつのも無邪気さが消え、急に大人びて見えた。
「何か悩み事か?」
海市は何も言わなかったが、用事があるので卓英と一緒に皇宮に行くという。

海市は一大決心して皇帝に謁見した。
先の真珠税の件では誤解していたと謝罪、実は黄泉関(コウセンカン)へ派遣して欲しいと嘆願する。
黄泉関と言えば北部の要衝だが極寒の地、流行病はもちろん食料の補給も滞りがちだった。
それでも海市は黄泉関を守ることが国を守ることであり、出世や俸禄を求めていないという。
「陛下の恩に報い、朝廷に尽くしたいだけです」
「いいだろう、師匠と同じく志が高い…ならば師父の婚儀が終わったら出立せよ」
「陛下、私も新しい兵士たちと一緒に出発したいと思います
 遅れて出発するという特別扱いは許されません、さもなくば兵士との関係構築に影響が出ます」
「分かった」
海市が下がると、入れ違いで太監が駆けつけた。
李侍医の薬で回復したと思っていたウサギの小乖(ショウカイ)が下痢をして弱っているという。
褚仲旭はふとウサギを飼っている女官がいたことを思い出し、金城宮(キンジョウキュウ)に呼ぶよう命じた。

褚仲旭は鞠柘榴にウサギを見せた。
確かにウサギはひどく弱っている。
柘榴は小乖が清潔で新鮮な野菜や果物を与えられていると聞いて原因に気づいた。
「陛下、洗った野菜を時々食べるのは構いませんが、食べ続けると下痢してしまいます
 ウサギの餌に向いているのは干草やオオアワガエリ、苜蓿草(モクシュクソウ)などです
 ともかく果物や野菜は与えず、水もあげないでください
 今、申し上げた草の粉末に蜜柑の皮と生姜を加えて食べさせてください
 回復したら普通の餌に戻します」
すると褚仲旭は鞠柘榴に自分のウサギを連れて来るよう命じて帰した。
(  ̄꒳ ̄)ノ″🐰<病を治してやる、遊び相手も見つけてやったぞ?
穆徳慶は珍しく機嫌の良い皇帝の姿に目を細めたが、褚仲旭が急に顔をしかめた。
「ウサギの世話もできぬとは、役立たずめ!」

海市は左衛(サエイ)に師匠を訪ね、黄泉関への派遣を皇帝に願い出たと報告した。
驚いた方鑑明はなぜ自分に相談もなく決めたのかと困惑し、理由を尋ねる。
すると海市は師匠のように一切の私欲を捨てて国と陛下に尽くすためだと言った。
「都より辺境の地で鍛錬したいと考えました
 大徴(ダイチョウ)の要衝である黄泉関で鵠庫(コクコ)という強敵を食い止めたいのです」
理路整然と説明する海市、さすがに鑑明も師匠として引き止められなくなってしまう。
「いいだろう、お前にとって良い経験になる」
海市は呆気なく了解した師匠に落胆しながら下がることにした。
しかし去り際、つい師匠の婚儀には参加できそうにないと断ってしまう。



鑑明は独りになると海市からもらった香り袋を手に取った。
昨夜、海市の様子がおかしかった理由は自分の婚姻を知ったからなのか。
互いに惹かれ合う2人、しかし鑑明は自分の気持ちを認めることができなかった。

霽風館に戻った海市は早速、荷物をまとめ始めた。
すると馬射の試験の前にもらった師匠の玉板指を見つけ、感傷的になってしまう。
そこへ知らせを聞いた方卓英が駆けつけた。
卓英はてっきり海市が嫌がらせで辺境に送られると誤解、しかし海市は自分で希望したという。
必ず大事を成し遂げるつもりだが、都にいるだけでは経験をつめないというのだ。
「鞠典衣が屋敷に来るまでは師父の世話を頼む」
「鞠典衣?」
卓英は師匠と鞠典衣の縁談話を知り、なぜ海市が無謀な決断をしたのか気づいた。

昭明宮に戻った方卓英は師匠を訪ねた。
しかし師匠は海市が黄泉営の参軍に封じられたことを了承し、かえって永遠に一緒にはいられないと諭されてしまう。
「ここはもう皆の家ではなくなるのですね…海市は荷物をまとめながら涙をこぼしていました」
「泣いていた?」
「師父!師父の婚姻が原因ですよ!いや変な意味ではなく…私たちと距離を感じたのかも
 きっと寂しいんじゃ…海市が不びんです!」
「出て行け…」
「師父?!」

卓英は師匠に追い出され、自然と綾錦司に足が向いていた。
するとちょうで中庭でウサギの小白(ショウハク)を連れた鞠柘榴を見かける。
「明日は小乖のところへ行くのよ?…小乖は危ないところだったの」
卓英は屋根の上で柘榴の話を聞きながら、いつの間にか嫌なことも忘れていた。
「…風神大人、小乖は具合が悪くかわいそうでした、早く回復するようお守り下さい」

翌朝、海市は黄泉営参軍として軍営に向かった。
すると門の前に武挙で同期だった任勇(ジンユウ)たちがいる。
4人は大兄が黄泉関へ発つと聞き、一緒について行くと決めていた。

張承謙(チョウショウケン)と符義(フギ)は清海公の弟子である海市を暖かく迎えた。
「で出自は?」
「…流觴(リュウショウ)の方氏です」
師匠の故郷である流觴(リュウショウ)の方氏は代々、英傑を輩出している名家だが、″儀王の乱″により一族の大勢が犠牲になっていた。
張軍候は″方″という姓を聞くと寂しい思いがすると吐露し、ひとまず休むよう勧める。
しかし海市は疲れていないのですぐ練武場へ行きたいと頼んだ。

つづく


(´-ω-`)うむ…こういう微妙な場面になるとヤンミー社長の声がねえ…





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最終更新日  2022.08.06 10:39:05
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