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风起陇西(ふうきろうせい) 第一計「梁(ハリ)を偸(ヌス)み柱を換(カ)う」 …3世紀、曹魏(ソウギ)・蜀漢(ショクカン)・東呉(トウゴ)が天下を三分して鼎立(テイリツ) 蜀漢の皇帝・劉備(リュウビ)が崩御した後、丞相・諸葛亮(ショカツリョウ)は兵馬を鍛えつつ侵攻の好機を待っていた そして西暦228年、諸葛亮は曹魏への北伐を開始する 北伐軍陣営、諸葛亮は将軍たちが集まった幕舎で間諜からの密報を受け取った 意外にも張郃(チョウコウ)の軍は番須(バンス)道を通らず、瓦亭(ガテイ)道から蕭関(ショウカン)へ向かうという 諸葛亮は自ら主力を率いて瓦亭道で敵軍を迎え撃つと決め、念のため街亭(ガイテイ)の守りを参軍である馬謖(バショク)に任せ、副将に王平(オウヘイ)、また魏延(ギエン)と高翔(コウショウ)を後詰めとして万一に備えさせた 『皆の者、この一戦で張郃を破ってこそ長安を落とせる、北伐が成功するのだ!』 しかし情報に反し張郃の軍は瓦亭道を通らず、夜を徹して番須道を抜け街亭を奇襲、馬謖は大敗を喫し、街亭を失った 王平は命懸けで馬謖と魏延、高翔を救出 腹背に敵を受けた諸葛亮はやむなく全軍を漢中(カンチュウ)へ撤退させ、第一次北伐は失敗に終わる そしてこれを機に蜀漢の司聞曹(シブンソウ)と曹魏の間軍司(カングンシ)による諜報機関の暗闘が幕を開けた… 曹魏軍は蜀軍に大勝し天水(テンスイ)を取り戻した。 城楼から感慨深げに空を眺める天水郡守・郭剛(カクゴウ)、すると天水郡の主簿で盟友でもある陳恭(チンキョウ)が吉兆だと喜ぶ。 「郡守は天水を起点として隴西(ロウセイ)で大事を成せるでしょう」 「そうなるよう願おう…」 その時、まるで急を告げるように風が巻き起こった。 漢中に撤退した諸葛亮の軍営では戦機を誤ったとして馬謖が処刑された。 例え参軍であっても軍法を厳守しなければならないという諸葛亮、すると丞相府長史・楊儀(ヨウギ)が″白帝(ハクテイ)″の情報にも誤りがあったと指摘する。 「我々の重要部署に曹魏の間諜が潜り込んだのかと…司聞曹に大きな穴が生じています」 「調べ上げよ」 そこで楊儀は早速、南鄭(ナンテイ)の司聞曹に駆けつけた。 曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)は暗号文がすり替えられた可能性は低いと言いながら、白帝が謀られた可能性もあるという。 実は曹魏も昨年、司聞曹をまねて地方官府に制約されない中書省が司る機関・間軍司を作り、偽りの情報を流しては司聞曹を撹乱していた。 確かに楊儀にも曹魏の間諜が司聞曹にいると内通があったという。 「一体、どこで問題が起きたのだ?!」 「白帝の調査に密偵を遣わしましたが、まだ報告がありません」 すると楊儀は声を荒らげ、一刻も早く解決するよう迫った。 北伐の失敗で丞相は追い込まれ、朝廷では北伐派と南征派が紛糾、誰かが責を負わねば混乱は避けられないだろう。 その頃、天水に潜入している蜀漢の間諜・林良(リンリョウ)が密書を受け取っていた。 …牛記酒肆(ギュウキシュシ)か… その日、郭剛は陳恭を誘って久しぶりに金御瑶(キンギョヨウ)で羽を伸ばした。 それにしてもあの知謀に長ける諸葛亮がなぜ罠にはまったのだろうか。 陳恭は読みを誤ったのだろうと受け流したが、郭剛が否定した。 「違う、我々には″燭龍(ショクリュウ)″がいる」 「燭龍?」 「ふっ、張郃の出陣は蜀漢の間諜・白帝によって10日前には漏れていた」 「ははは…″白帝″など伝説上の存在に過ぎません」 しかし郭剛は白帝が街亭を奇襲するという情報を盗んで祁(キ)山の蜀軍に届けたと知っていた。 その実、密報は燭龍がすり替えた偽物だったという。 こうして燭龍の手柄で形勢を逆転できたが、白帝は郭剛にとって依然、悩みの種だった。 「司聞曹が天水に密偵を遣わしたらしい、目的は″白帝″を調べ、街亭の事案を解明することだ」 闇に潜る燭龍の正体を知るのは都督と郭剛だけ、これが白帝を生捕にできる絶好の機会になるだろう。 その頃、間軍司の司馬・糜冲(ビチュウ)は大街に配下を忍ばせ、西蜀の密偵を追跡していた。 郭剛はあと1時辰(トキ/2時間)で面白い余興が見られると教えた。 すると陳恭が舞姫を下げ、ならば白帝を捕らえる前祝いだと言って2人の新入りの妓女を呼ぶ。 ちょうどその時、向かいにある牛記酒肆に林良が現れた。 2階にはすでに西蜀の密偵が待っていたが、ふと窓から金御瑶の店先に2つの花籠が掲げられるのを見る。 林良は罠だと気づいて踵を返し密偵に指で合図、慌てて店を脱出した。 しかし密偵は客になりすましていた間軍司に足止めされ、結局、殺されてしまう。 成都(セイト)に戻った諸葛亮は皇帝に謁見、自ら罰を請うた。 蜀漢皇帝・劉禅(リュウゼン)は勝敗など兵家の常だと見逃したが、輔漢(ホカン)将軍・李厳(リゲン)は追及の手を緩めない。 「これまでの功を笠に着た丞相は先帝の東呉への遺恨を顧みず、 身勝手にも大軍を率いて北伐を断行したのです!」 結局、皇帝は諸葛亮を右将軍に降格した。 その頃、白帝の調査を始めた馮膺は司聞曹で靖安司(セイアンシ)副司尉・荀詡(ジュンク)を水責めにしていた。 しかし荀詡は何度、聞かれても答えは同じだと訴える。 陳恭は若い頃、奇門遁甲(キモントンコウ)に熱中しており、李厳の門生だった。 司聞曹に推薦したのも荀詡だという。 荀詡と陳恭は義兄弟の契りを結び、表妹・翟悦(テキエツ)は陳恭の妻、翟悦も荀詡の属下として五仙道(ゴセンドウ)に潜伏していた。 「靖安司における役目は各教派の情報を収集すること… 連絡を取るのは私だけで他に知る者はいません」 …翟悦と陳恭が結婚した 3人で囲む夕食、しかし荀詡は縁者になると分かっていたら陳恭を司聞曹に推挙しなかったと後悔する 『間諜は死ぬまで間諜だ、夫婦で過ごす日々は短い…』 しかし翟悦は婿になったのなら家風を受け入れなければならないと笑った 荀家と翟家は琅邪(ロウヤ)の諸葛氏に仕えて百余年、代々、密偵として働いている 今や両家の生き残りは2人だけ、荀詡にとって陳恭と翟悦だけが家族だった… その頃、役所に戻った李厳は参軍の狐忠(コチュウ)から思わぬ報告を聞いた。 実は2時辰前に楊儀が現れ、李厳を驃騎(ヒョウキ)将軍に昇進させ、息子には江州を任せるよう奏上したという。 「楊儀によれは丞相がこう言ったそうです、国ために耐えて和を尊ぶのだと…」 「信じるものか?!」 李厳は憤慨しながら、司聞曹に潜り込んでいるという曹魏の間諜の件を聞いた。 しかし司聞曹を作ったのは楊儀、狐忠も内情を探るのに手間取っているという。 荀詡は拷問でどんなに苦しめても陳恭が裏切るはずないと訴えた。 根負けした馮膺は荀詡の信念を曲げない頑固さを評価し、重要な任務があると教える。 実は荀詡は掟の通り陳恭とは一切、連絡を取っておらず、どこで何をしているか全く知らなかった。 馮膺の話では陳恭は南鄭を離れた後、曹魏に派遣され、副都督・郭淮の軍門に下ったという。 そして軍功を重ねて校尉になり、やがて天水の主簿に着任、兵糧の管理を請け負っていた。 「しかし実際は司聞曹の間諜・白帝、これは最高気密だ」 ( ゚д゚)<陳恭が白帝?! 陳恭は曹魏に潜伏し、大量の情報を送り続けてきた。 当初、丞相の第一次北伐は順調そのもので攻略できなかったのは広魏(コウギ)と隴西のみ、その状況に危機を感じた曹魏は張郃に関中から隴山を越えるよう命じる。 張郃がどの道を通って隴山を越えるかは曹魏の最高機密、考えあぐねていた諸葛亮に白帝から情報が届いた。 まさかその情報が偽りだったとは…。 結果、諸葛亮は街亭を失い、北伐の大業は頓挫した。 郭剛はせっかくの余興を台無しにされ不機嫌だった。 糜冲の報告ではすべて燭龍の情報通りだったが、想定外にも何者かが密偵に警告したという。 すると陳恭は道すがら白帝が天水にいるならいずれ捕獲できるとなだめた。 「…そう願おう、軍務が忙しくしばらくは付き合えぬ、独りで遊ぶなよ?」 「ハハハ~もちろん、ではこれで」 郭剛は陳恭と別れると、再び糜冲と合流した。 「疑念は晴れたな?」 「…いえ、現場にいなくても白帝と無関係とは限りません」 西蜀に機密が漏れていると知った糜冲は機密に接する高官を調べていたが、最後に残ったの1人が陳恭だった。 そこで郡守に頼んで陳恭を妓楼まで誘き出してもらったが、結局、尻尾をつかめない。 思えば出陣の10日前、都督の役所で火事が発生したが、その日に機密が漏れていた。 「その場に陳恭がいました」 しかし郭剛は自分が陳恭に頼んで叔父である都督に薬を届けさせたと教え、自分を疑っているのかと激高する。 そもそも火事の現場にいた者は皆、留置され、陳恭が解放された7日後には祁山に機密が届いていた。 「もし陳恭が白帝ならどうやって情報を送った?飛んだとでも?!」 盟友の陳恭を誠実で裏表のない男だと評している郭剛、まさか陳恭が本当に白帝だとは知る由もなかった。 一方、荀詡も陳恭を信頼し、恐らく正体を暴かれ、離間策に利用されたのだと訴えた。 しかし馮膺の話ではひと月前、街亭の事案を調べるため密偵を天水に遣わしたが、密偵は曹魏に見つかって酒楼で襲われ落命したという。 実はその密偵の居場所を知るのは馮膺を除いて陳恭だけだった。 馮膺は荀詡を天水に送り込むことにした。 「調査を終えたら始末しろ」 そこで猛毒が塗ってある短剣を差し出し、実は荀詡が飲んだ茶にも毒が入っていると暴露する。 「戻ったら毒消しを渡す」 ( ̄▽ ̄;)<そこまでするか?普通… (  ̄꒳ ̄)<外勤の掟だ、仕方がない 陳恭が屋敷に戻ると林良が待っていた。 酒楼は切迫していて間軍司に気づかれたかどうかまで確認できず、怪しまれた可能性もあるという。 「お前を知る者は少ない、すぐには正体を突き止められぬはず、良かった」 すると林良は密書を渡した。 谷正(コクセイ)が会いたいと言ってきたが、陳恭は念のため会わないと決める。 あの様子では間軍司も白帝について調べを続けるはずだ。 「今日の分析会で糜冲に聞いた、密偵が天水に来ることは燭龍が知らせたそうだ 郭剛の話では我が軍が街亭で負けたのは私が送った情報がすり替えられたからだと…」 「まさか、あり得ぬ!」 しかし司聞曹が情報のすり替えなど信じるはずもなく、陳恭は自分が裏切ったと判断されると分かっていた。 恐らく西蜀から来た密偵は自分を調べに来たのだろう。 その密偵が殺されたとなれば陳恭への疑惑はさらに強まる。 今や両国に追われる身となった陳恭、しかし何より恐れたのは曹魏の間諜が司聞曹の中枢に潜り込んでいることだった。 「私の経路も危うい…何とかして司聞曹に燭龍の存在を知らせねば…だが、そうすれば…」 つづく ( ゚ェ゚)…何だか疲れたw文句言いながら宮廷物語を見ていた頃が懐かしいw お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.02 15:02:04
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