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カテゴリ:斛珠夫人~真珠の涙~全48話
斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse 第24話「生き返った心」 愛する方海市(ホウハイシー)を守るため自分から遠ざけたい清海(セイカイ)公・方鑑明(ホウカンメイ)。 しかし何も知らない海市は鑑明に拒絶され深く失望し、2人の関係はぎくしゃくした。 その日も海市は鑑明たちと黄泉関(コウセンカン)に出立する湯乾自(トウカンジ)たちの見送りに出たが、公務が終わると独りでさっさと戻ってしまう。 見かねた陳哨子(チンショウシ)は海市に中衛軍の腰牌を渡す際、礼儀として任務の初日には挨拶するべきだと諭した。 海市は不機嫌そうに師匠の書斎を訪ねたが方鑑明が戸を開ける気配はなく、そのまま回廊から声をかける。 「罪を認めに来ました」 「…必要ない」 すると鑑明は勅命が下ったからには自分ですべきこととすべきでないことを把握するよう戒めた。 一方、宗室の生き残りを探していた旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は褚琳琅(チョリンロウ)だと名乗り出た娘を朝廷に呼んだ。 皇弟・褚季昶(チョキチョウ)はカゴを持って大殿に入ってきた娘を見た瞬間、幼い頃の五姉の面影が蘇り、思わず駆け寄ってしまう。 「牡丹姐姐!」 褚琳琅は幼い頃から牡丹が好きで、いつもカゴに牡丹の花を入れて持ち歩いていた。 すると褚仲旭はこの娘こそ先帝と聶(ジョウ)妃の娘だと確信し、焉陵帝姫(エンリョウテイキ)に封じて帝姫府に住まわせると命じる。 しかし臣下たちは当然、皇帝の早急すぎる決断に困惑した。 褚季昶はそんな大臣たちの反応を心配していたが、褚仲旭は他人など気にするなという。 「そなたは朕のただ一人の皇弟、欲しい物なら何でも手に入れてやる」 焉陵帝姫は屋敷に入り、挨拶回りも一通り終えた。 しかし淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)は静養中のため、愈安(ユアン)宮だけは訪れていないという。 穆徳慶(ボクトクケイ)から話を聞いた褚仲旭は緹蘭がなかなか回復しないことを訝しみながら、冷遇していると誤解されないよう今夜の宴に呼ぶよう命じた。 緹蘭はしがない1日、窓辺に座って過ごしていた。 元気がない淑容妃を心配しながら見守る侍女・碧紅(ヘキコウ)、そこへ蔵に出かけていた碧紫(ヘキシ)が戻ってくる。 「道すがら嬉しい話を聞きました、小方大人(ダーレン)が黄泉営から中衛軍に異動を… 今夜の帝姫の歓迎の宴を全て小方大人が手配したそうです」 侍女たちは宮中に心強い味方が戻って来たと喜んだが、緹蘭は複雑だった。 方海市を友だと思うからこそ、自分と親しくすることで名声が傷つけられることがあってはならない。 「さらに望まぬのは…陛下の八つ当たりよ」 そこへ皇帝の使いがやって来た。 皇帝は美しい外套や豪華な装飾品を下賜、今夜は帝姫の歓迎の宴に同席するよう命じる。 上の空だった緹蘭は侍従に促され勅命を受け取ったが、どんなきらびやかな贈り物を見ても虚しいだけだった。 海市は宴を前に中庭を見回っていた。 すると偶然、宴に向かう皇帝と淑容妃に出くわす。 海市はその場で膝を突き拝礼、緹蘭は海市の姿に思わず顔をほころばせたが、それを見た褚仲旭は嫉妬から急に緹蘭の腕をつかんで強引に引っ張って行った。 褚仲旭は酒が身体を温めることから、緹蘭にたくさん飲むよう強要した。 そのせいで病み上がりの緹蘭は気分が悪くなり、咄嗟に着替えてくると断って退席する。 すると道すがら、危うく池に落ちそうになったところを巡回していた海市が助けた。 しかし運悪く皇帝が現れ、二人の親密そうな様子を見て憤慨、急に緹蘭を抱きかかえて連れて行ってしまう。 海市は具合が悪そうな緹蘭を心配し、念のため寝宮の前で待機していた。 一方、褚仲旭は亡き紫簪(シサン)の部屋に緹蘭を連れ込み、夜伽を強要する。 緹蘭はもはや屈辱に耐えきれず、ついに皇帝に反発した。 「こんなことをしてはいけない!紫簪姐姐が天から見ています… 愛する人を永遠に失うのは不幸なこと、でも陛下の行為は私に不公平だわ! なぜ私をいじめるの?!」 その時、突然、雷鳴がとどろき、激しい雨になった。 褚仲旭は奥の部屋に掲げられた肖像画の紫簪が見つめていることに気づき、一気に酔いが覚める。 「公平?…俺は愛する人を失った…悪いことなど何もしていないのに…なぜ私なのだ?!」 褚仲旭は肖像画の前でへたり込み、泣き崩れた。 すると緹蘭は褚仲旭を抱きしめ、子供を優しくあやすようになだめる。 「自分を苦しめないで、もう泣かないで…全ては過ぎ去ったこと…」 海市が穆徳慶(ボクトクケイ)と控えていると突然、皇帝が淑容妃を抱きかかえて飛び出して来た。 「侍医を呼べ!」 淑容妃の姿を見た海市は子宮から出血していると気づき、このまま医官院へ直行するよう進言する。 すると脈を見た侍医は淑容妃が自分の処方した薬を飲んでいないことに気づいた。 もはや手遅れだと聞いた褚仲旭は驚愕、しかし緹蘭はむしろほっとしているように見える。 「陛下が私を見ると心を痛めると知っています…これでいいのです」 その時、海市が民間の処方を知っていると上奏した。 一方、務めが終わった方卓英(ホウタクエイ)は綾錦司(リョウキンシ)に差し入れを届けることにした。 しかし鞠柘榴(キクシャリュウ)が独りでまだ刺繍を続けている。 「夜も更けた、続きは明日にしたらどうだ?」 「…目が見えぬのですよ?昼も夜も違いはありません」 その言葉に胸が裂ける思いの卓英、するとちょうど刺繍が完成した。 「これを差し上げます」 「深夜に刺繍していたのは私に贈るためか?」 「日没の頃、やっと花の図案を考えたのです、お好みでしたら受け取ってください」 卓英はありがたく受け取ると、皇帝から賜った菓子を勧めた。 「これは柘榴の菓子ですね?」 「だが松の実が入っていない、私が以前に食べたのとは違うんだ」 その言葉を聞いた柘榴は思わず笑みがこぼれる。 実は風神様にいつも供えていた柘榴の菓子には必ず松の実が入っていた。 褚仲旭は独り医官院の前で悶々としていた。 すると気配を感じ、方鑑明が来たのだと気づく。 「鑑明…」 しかし振り返ると方鑑明ではなく弟子の方海市が立っていた。 「こんな時は皆、朕に近づき痛い目に遭うのを恐れるが、怖くないのか?」 「私は誠実にお仕えしています、何も恐れません」 実は海市も穆徳慶からこんな時、皇帝に声をかけることができるのは清海公だけだと聞いていた。 褚仲旭は方海市の真っ直ぐな目を見ると、普段なら似ても似つかない方鑑明と方海市がひどく似ていると驚く。 「…師父と私は純臣です」 「純臣か、純臣は忠実で温厚なはず、鑑明は幼い頃から従順ではない むしろ当時は朕が鑑明に譲歩するほうが多かった、だがその後、だんだんと変わった」 「師父はそんなにわがままだったのですか?」 「わがままではない、自由だ…あの頃は朕も鑑明も自由だった 忠実な臣下でも天子などでもなく、我らは共に遊び、共に暮らし、共に学ぶ親友だった」 「師父は昔の話をほとんどしません」 「方海市、師父に代わり答えよ… お前のそばに良き人がいる、だがその者はいつもお前に思い出させる、最も辛い過去を… お前は愛する人を失った、ただの生ける屍だとお前に悟らせる お前はその者を喜ばせたくも思う、だがある時は傷つけたくなる、同じ痛みを与えたくなる ゆえにお前は一生、その者を愛せぬやも…そのような時、お前ならどうする?」 「お答えします… 私ならその人に優しく穏やかに接し、いつも共にいて互いに尊敬し合います 失った恋人と同じように… 愛する人を失うことは最大の不幸、ですが天はまた良き人を与えてくれた その人を喜ばせたいと思い、傷つけ、痛みを味わわせたくも思う 私の心がその人のおかげで生き返ったのです、ならばなぜ優しくしないのですか?」 褚仲旭は言葉を失い、ただ呆然と立ちすくんでいた。 つづく (´-ω-。` )緹蘭… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.12.04 22:15:16
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