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2022.09.28
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风起陇西(ふうきろうせい)
第二計「火に趁(ツケコ)んで打劫(ウバイト)る」

蜀漢(ショクカン)の間諜・″白帝(ハクテイ)″こと陳恭(チンキョウ)は自分が司聞曹(シブンソウ)と曹魏(ソウギ)の諜報機関・間軍司(カングンシ)双方から疑われていると知った。
ちょうど谷正(コクセイ)から会いたいと連絡が来たが断念、念のため林良(リンリョウ)に谷正にも警告を発しておくよう頼む。
一方、陳恭の義兄弟・荀詡(ジュンク)は司聞曹の曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)から裏切り者の白帝を始末するよう命じられ、天水へ向かっていた。
すると国境で軍謀司(グンボウシ)司尉・高堂秉(コウドウヘイ)が待っている。
抱き合って再会を喜ぶ2人、聞けば高堂秉は北伐失敗の後始末を任され、司聞曹と一緒に南鄭(ナンテイ)に移らず留まっていた。
それにしても馮曹掾から凄腕を送ったと急報が届いたが、まさか荀詡だったとは…。
「お前がなぜ外勤に?」
「…馮曹掾に嫌われたのかなw」

蜀漢・成都の丞相府。
丞相府長史・楊儀(ヨウギ)は司聞曹が白帝を調べるため送り込んだ密偵が殺されたと諸葛亮(ショカツリョウ)に報告した。
馮膺は損失を抑えるため荀詡を天水に派遣したという。
荀家と言えば代々諸葛氏に仕える密偵、諸葛亮はふと幼い頃の荀詡に思いを馳せた。
『劉備は太平の世を築けるのですか?』
『私、諸葛亮が手を貸せば間違いなく築ける…荀詡、忘れるな
 この地に生きる誰もが値千金だ、大切にせよ』
しかし未だ司聞曹に潜り込んだ曹魏の間諜の手がかりはなかった。
「急いで突き止めよ、火種になり得る」

高堂秉の話では白帝は張郃(チョウコウ)の作戦をつかんだ後、すぐ早馬を飛ばしていた。
間軍司の司馬・糜冲(ビチュウ)はその動きを察知して暗殺部隊を派遣、使者は窮地に陥ってしまう。
しかし使者は危ないところで次の使者に密書を託し、幸いにも楊儀の元に到着した。
「だが白帝は暗号文を使っており、解読用の木版は馮曹掾が管理している
 木版がなければ暗号文を解けるはずがない、つまり…」
「ということは白帝に問題がなければ…馮曹掾が怪しいと?」
「俺は言ってないぞ~w」
すると高堂秉は荀詡から頼まれた精鋭たちは関所で待っていると教え、見送った。

それから数日後、輔漢(ホカン)将軍・李厳(リゲン)は諸葛亮を弾劾する上奏文を準備、参内することにした。
参軍の狐忠(コチュウ)はどうやら白帝が裏切ったらしいと報告、免職されて丞相を恨む李邈(リバク)から直接、聞いた話だという。
「はお、これは突破口になる」
実は弾劾は単なる芝居に過ぎず、司聞曹の掌握が目的だった。
結局、皇帝への謁見は叶わなかったが、侍従の話では皇帝の耳にも曹魏の間諜が潜入している件が届いているという。
「これより勅命を出し、将軍に司聞曹を引き継がせるそうです」
李厳は皇帝から街亭(ガイテイ)の事案を捜査するよう命じられた。
しかし諸葛亮の顔を立てて皇帝は楊儀を罰しなかったという。
ともかく李厳は真相を突き止めるためにも人員を刷新すると決め、早速、狐忠と共に南鄭へ向かうことにした。

天水の城門に雍(ヨウ)州・郭淮(カクワイ)都督の侍衛一行が到着した。
金(キン)侍衛隊長は令牌を見せたが、門衛は郡守の命で西蜀の密偵を探していると断り、念のため馬車を調べさせてもらう。
一方、糜冲は陳主簿への疑念を払拭できずにいた。
腹心の梁倹(リョウケン)は牛記酒肆(ギュウキシュシ)から一足先に逃げ出した林良を見ていたが、記憶がおぼろげで似顔絵が上手く作れない。
そんなある日、馬蹄の跡を調査していた配下が戻って来た。
都督の役所から情報が漏れた日に5里圏内にいたのは軍馬のみ、しかし役所の南西にある林道でかすかに残った民間の馬の蹄跡があったという。
当日、民間の馬で役所に来たのは陳恭だけ、糜冲は恐らく酒楼にいた男が協力者だと考えた。
その頃、人けのない道を歩いていた陳恭は思いがけず雍州刺史・郭淮の侍衛隊に呼び止められた。
陳恭は嫌な予感がして逃げようとしたが、いきなり殴られ拉致されてしまう。

金侍衛隊長は郊外の山奥に穴を掘らせ、そこへ陳恭を放り込んだ。
「お前は西蜀の間諜・白帝だな?すでに正体は露見している
 今回お前は街亭に関する情報を盗んだ、証拠は明らかだ!」
すると金侍衛隊長はその証拠に都督による直筆の書状と役所の令牌を見せ、仲間を吐けば命は助けると持ちかけた。
しかし陳恭は頑なに濡れ衣だと否定、どんなに砂をかけられても決して口を割らない。
その時、突然、荀詡が現れ、陳恭を助け出すよう指示した。
( ゚д゚)え?おま…はっ!( ๑≧ꇴ≦)出ないぞっ!
いくら白帝を調査するためとは言え、陳恭は荀詡の酷いやり口に腹の虫がおさまらない。
そんな陳恭の顔を見た荀詡は相変わらずだと失笑した。



一方、一向に手がかりをつかめない糜冲は苛立ちを隠せずにいた。
しかし配下がついに民間の馬車の鮮明な馬蹄の跡を発見、報告に駆けつける。
「ここに特徴的な溝があります!」
「試してみる価値はあります」

陳恭は荀詡を自分の家に案内し、しばらく工房の2階に隠れるよう勧めた。
実は天水郡守・郭剛(カクゴウ)も白帝の正体を突き止めようと糸口を探しているところだという。
荀詡は司聞曹の最高機密である″白帝″がなぜ漏れたのか首を傾げたが、陳恭は機密も何も司聞曹に曹魏の間諜が潜んでいると指摘した。
「蜀龍(ショクリュウ)だ」
恐らく荀詡の動向も筒抜けだろう。

陳恭は確かに″張郃は番須(バンス)道を通り街亭を夜襲″と情報を送ったと訴えた。
しかし丞相のもとへ届いた時にはすり替わっていたという。
「司聞曹の者が来ることは予期していた…まさかそれがお前で、あんな方法を使うとはな」
そこで荀詡は馮膺から渡された毒を塗った短刀を出した。
本当なら尋問せずに始末するよう命じられたと明かす。
陳恭は事情も調べず裏切り者だと決めつけられ、さすがに応えた。
すると荀詡は自分も毒を飲んだと教え、白帝を殺さなければ毒消しをもらえないが、それでも真実こそ重要だという。
その時、林良が工房の窓に石を投げて合図、慌てて姿を隠した。

陳恭の家に突然、糜冲たちがやって来た。
先の件で陳主簿を疑ったことを郡守からも叱られ、迷惑をかけた謝罪に来たという。
陳恭は恐縮しながら母家へ案内しようとしたが、糜冲は勝手に納屋へ入り、荀詡がいる2階へ上がってしまう。
万が一の時に備え金槌を隠し持った陳恭、しかし荀詡はいつの間にか1階に隠れて無事だった。

陳恭は母家で糜冲に茶を振る舞い、率直に何を聞きたいのか尋ねた。
すると糜冲は例の火事の件でいささか疑問があるという。
「郡守にも聞いたが都督は病を患っており、ここ1年は郡守が手配した薬を陳主簿が毎月
 届けていたそうだな、調合も手掛けていたとか」
「司馬が調べた通りだ、で何を尋ねると?」

その頃、林良は物陰から糜冲の配下たちが馬の蹄を調べているのを見ていた。
「気をつけろ、その馬は蹴り癖があるぞ?」
陳恭が警告した途端、梁倹はいきなり蹴り飛ばされてしまう。
「糜司馬、これが謝罪なのか?」
「失礼した…しかし馬と言えば不審な点がある」
糜冲はあの日、役所の5里圏内にいたのは軍馬のみ、陳恭の馬車だけが違ったと言った。
そこで役所の南西の林道で見つけた馬蹄の跡を見せる。
「例えばの話だ…陳主簿が情報を送りたいなら情報を預けた従者を馬で行かせればいい
 そうすれば留置中の7日間で嫌疑を晴らすと同時に情報も送れる」
「そこまで言われたら協力するしかないな」
しかし陳恭の馬は全て馬蹄を新しく換えていた。

郭剛は勝手に陳恭の家を捜索した糜冲に憤慨した。
実は郭剛は陳恭に恩がある。
かつて天水が奪われた時、当時の郡守・馬遵(バジュン)が無能なばかりに郭剛の軍が孤立した。
郭剛は死を覚悟したが、その時、援軍を率いて現れたのが陳恭だったという。
「命の恩人だが、だからと言って庇ったりはせぬ、調べるがいいさ、ただし真実を明かせ!」

荀詡は曹魏が白帝にここまで肉薄していることに驚いた。
「ひとつ気になる点がある…白帝の暗号文を知るのはお前と馮膺だけ、燭龍はどう偽情報を作る?」
「本人に尋ねるしかあるまい…とは言え郭剛に情報を送る際、手がかりを残しているはず」
情報を迅速かつ安然に送る方法は早馬しかない。
曹魏は早馬の記録を残していたが、さすがにひと月も前の記録は残っていないだろう。
しかし陳恭は数日前、燭龍が蜀漢の密偵に関する情報を送って来たことを思い出した。

蹄の件で出し抜かれた糜冲だったが、配下が新たな成果を報告した。
当時、上邽(ジョウケイ)は防衛線を3つ設け西蜀の間諜を警戒、各防衛線で通行証を確認していたという。
そこで出火した時点から翌日の夕方、西蜀の間諜を殺した時点まで上邽を出た馬車と人々をしらみ潰しに調べてみたところ、翌日の巳の刻、入城する者に紛れ、城外へ出た馬車を見つけた。
どうやら西蜀の間諜は検問の穴を突き、入城する馬車に成り済ましたのだろう。
通行証に問題があれば、おのずと城外に出されてしまう。
「これが白帝が情報を送り出した方法か…」
その馬車の御者は吉利車馬行(キツリシャバコウ)の谷正、交易と消して魏と蜀を行き来していた。
つまり白帝は盗んだ機密を南西の林にいた腹心に届け、腹心が谷正に渡したのだ。
一方、谷正は漢中から届いた急報を赤帝(セキテイ)に渡し、吉利車馬行に戻っていた。
白帝からはひと月も音沙汰なし、何かあったのだろうか。

陳恭は妻・翟悦(テキエツ)が大巴(ダイハ)山にこもっていると聞いた。
五仙道(ゴセンドウ)が勢いを増しているため、丞相から制圧を命じられたという。
「張魯(チョウロ)の残党か?」
「ああ、名こそ違うが実体は同じだ」
荀詡は連絡するのは自分だけで他に知る者はなく、心配はないと安心させた。

その夜、寝衣になった陳恭は肌身離さず持っている平安符を握りしめた。
翟悦の平穏無事だけを願って来た陳恭、しかし結局、翟悦は危険と隣り合わせの道を進んでいる。
この平安符は任務へ旅立つ朝、翟悦がくれたものだった。
翟悦は元気でいるだろうか。



つづく


( ー̀ωー́ )これが白帝が情報を送り出した方法か~って…どれが( ゚ェ゚)?!
よもや2話目でつまずくとはw
↓あくまでイメージで







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最終更新日  2022.10.02 15:01:33
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