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风起陇西(ふうきろうせい) 第六計「屍(シカバネ)を借りて魂を還(カエ)す」 司聞曹(シブンソウ)に戻った荀詡(ジュンク)は内偵のため曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)に全てを明かさなかった。 しかし説明に納得した馮膺は荀詡に解毒薬を渡し、新任の西曹掾・李邈(リバク)にも報告するよう促す。 荀詡は早速、西曹掾を訪ねると、李邈は任務を果たした荀詡を労い、靖安司(セイアンシ)の司尉に推挙すると言った。 荀詡は門外漢から来た李邈だけに曹魏(ソウギ)の間諜が潜入していると報告した。 白帝だけの連絡係だった谷正(コクセイ)が司聞曹の密命を受けて赤帝という密偵に矢文で情報を送っていたが赤帝は偽物、曹魏の間諜が蜀漢(ショクカン)の軍機を送っていたらしい。 「潜入した間諜の秘匿名は″燭龍(ショクリュウ)″です」 すると李邈は秘密を守ると約束し、荀詡に内偵の権限を与えた。 「誰にも言ってはならぬ、報告は私だけに…」 一方、宿で馬に乗り換えた陳恭(チンキョウ)と糜冲(ビチュウ)は国境の関所・陽平(ヨウヘイ)関に到着した。 しかし糜冲が兵士に従っておとなしく馬から降りたのに対し、後方にいた陳恭はなぜか降りようとしない。 すると異変に気づいた兵士たちが陳恭たちの周りに集まって来た。 その時、陳恭はわざと糜冲を自分の名前で呼び、玉符を投げ渡す。 「陳主簿!受け取れ!」 糜冲は谷正が持っていた玉符の半分だと気づき、やはり陳恭が白帝だと分かった。 陳恭はそばにいた兵士を斬り殺し、方向転換して引き返して行った。 「証拠を見つけろだと?(ふっ)あれほど言ったのに…」 糜冲は郡守への恨み節を漏らし衛兵たちに抵抗したが、何者かが放った赤い羽の矢が命中、絶命してしまう。 一方、逃亡した陳恭は断崖絶壁に身を隠し、敵兵の追跡を逃れていた。 司聞曹では上役が集まり、荀詡は改めて任務の報告を済ませた。 馮膺はこれで街亭(ガイテイ)の捜査を打ち切ると伝え、荀詡の昇進も決定する。 しかし李厳が秘密だと約束したはずの燭龍の話を公言し、捜査の継続を訴えた。 馮膺は平静を装い、密偵の潜伏と街亭の事案は分けて考えるべきだと主張する。 そこで街亭の事案は打ち切り、燭龍の調査は自分と李邈が指揮を、また荀詡と高堂秉(コウドウヘイ)、陰輯(インシュウ)を捜査に加えると決めた。 「李曹掾、これでいいだろうか?」 「事は重大だ、進捗(シンチョク)については李厳(リゲン)将軍に報告します」 孫令(ソンレイ)は義兄を出し抜いた荀詡に不満を募らせた。 そこで義兄に楊儀(ヨウギ)の再起は見込めず、狐忠(コチュウ)からの誘いに応じた方が良いと訴える。 馮膺は馬鹿馬鹿しいと取り合わなかったが、孫令には西曹掾と懇意にしておくよう勧めた。 荀詡は李厳の思わぬ裏切りに困惑しながら靖安司(セイアンシ)に戻った。 すると腹心の従事・裴緒(ハイショ)から自分が戻る前日、すでに白帝が天水郡の主簿・陳恭だと知れ渡ったと聞く。 荀詡は会議で誰も言わなかったと憤慨、念のため裴緒と外に出てから話すことにした。 荀詡は裴緒だけに全ての経緯を説明し、燭龍という間諜こそ大きな脅威だと訴えた。 計画では陳恭が糜冲に成り済まして五仙道に潜入、燭龍を突き止めることになっている。 「同じ頃に発ったから今頃は漢中に着いただろう…全て順調なら間も無く白帝の死が知らされる」 恐らく燭龍は解読用の木板を扱える立場にいるはずだ。 …あの時、最後の運搬役は深手を負って軍営に到着し、密書を無事に届けたものの絶命した 楊儀は天幕で密書を受け取り、一緒にいた馮膺に託して暗号文の解読を頼む すると馮膺の命で孫令が木板が入った箱を持って現れ、馮膺が木版を密書に照らし合わせて楊儀に渡した… 祁(キ)山の軍営で密書に触れた者は限られていた。 最も疑わしいのは馮膺だが、司聞曹の創始者である楊儀と馮膺が裏切るとは考えづらい。 荀詡と裴緒は馮膺との関係が近く、木版を管理する孫令に疑いの目を向けた。 荀詡は李厳が自分に内密を保つよう厳命しておきながら、会議で不意打ちをくらったと悔しがった。 しかし裴緒は李厳が馮膺を失脚させたがっていることから頭領は利用されたのだと指摘する。 その時、荀詡はふと気配を感じて辺りを見回した。 実は司聞曹に戻って以来、誰かに見張られている気がするという。 「怖がらせないでくださいよ~」 「はっ…風が起こった」 馮膺に合わせる顔がない荀詡だったが、急に軍の使いから馮曹掾の部屋へ呼び出された。 馮膺と待っていたのは軍技(グンギ)司の校尉・譙峻(ショウシュン)、実は青萍(セイヒョウ)計画について聞きたいという。 すると高堂秉が駆けつけ、馮膺に陽平関からの急報を渡した。 馮膺は2人の話が一区切りしたところで、荀詡に平北(ヘイボク)将軍・馬岱(バタイ)からの急報を見せる。 「曹魏の間諜が1人、逃亡したらしい、特定してくれ」 どうやら陳恭の計画はうまく行ったらしい。 そこで荀詡は後は譙峻と2人で話すと断り、自分の執務室へ向かった。 一方、糜冲に成り代わった陳恭は予定通り官道を歩いていた。 すると荷馬車が通りかかり、相乗りさせてもらう。 男は秦沢(シンタク)と名乗り、名前を聞いた。 陳恭は糜冲の偽名だった″糜衡(ビコウ)″と教え、安康(アンコウ)の没落した商家の出だと告げる。 「…2人連れのはずでは?」 「1人は陽平関で見つかり吊るされた、案じるな…任務には影響ない」 陰輯は高堂秉に疫病神の荀詡と関わらないよう警告した。 会議では一触即発だった曹掾2人、聞けば西川(セイセン)の士族が連盟で丞相の弾劾状を上奏したという。 荀詡が西曹掾に利用されるのは必至だ。 「そう言えば今夜、馮曹掾と紫煙(シエン)閣で飲む、お前も来るか?」 陰輯は馮膺が自分たちを取り込むつもりだと疑ったが、結局、一緒に行くことにした。 荀詡は曹魏の密偵が連弩の技術を盗むなら設計図を狙うはずだと指摘した。 譙峻の話では連弩の設計図は2枚、丞相の役所と軍技司の総成部にあるという。 しかし定軍山の地形は特殊で官道は盤山(バンサン)路のみ、片側は絶壁だった。 途中には関所が3つ、厳重に検査される上、下山するにも同じ道を行くしかないという。 すると荀詡は念のため合言葉を毎日、変えてはどうかと提案した。 「それは名案だ、張翼(チョウヨク)将軍に報告しよう」 「終わったか?」 その声は馮膺だった。 その頃、陳恭たちは国境の西郷関に到着していた。 この関門の検査は厳しいと有名だったが、秦沢が差し入れた酒のおかげか陳恭は新しく雇った下働きを装い、無事に難所を通過する。 すると陳恭は改めて間軍司の糜冲だと名乗り、今日中に五仙道の黄預(コウヨ)祭酒に会いたいと頼んだ。 馮膺は譙峻を見送ると、荀詡を誘ってその足で茶屋にでかけた。 何と釈明したらいいのか分からない荀詡、そこで李厳の聞き取りが事細かだったと言い訳したが、馮膺は自分を疑っているのかと聞く。 「まさか!」 「…ならばいい」 馮膺は荀詡を遣わしたのは白帝を生かすためだったと教えた。 しかし街亭の事案を早く解決しなければ大勢に累が及ぶため、疑わしい点があっても打ち切るという。 一方、陰輯は馮膺との酒席に参加すると決めて屋敷に戻ったが、驚いたことに李邈が待っていた。 「今日は折り入って話があって来た…」 つづく ( ๑≧ꇴ≦)えーっ?!司命(違うけどw)がもう退場なんて… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.10 22:07:36
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