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风起陇西(ふうきろうせい) 第九計「暗(ヒソ)かに陳倉(チンソウ)に渡る」 大雨に見舞われた司聞曹(シブンソウ)で廖会(リョウカイ)が殺され、解読用の木版が盗まれた。 荀詡(ジュンク)は曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)を容疑者とする捜査報告書に渋々、署名捺印して靖安司(セイアンシ)に戻ったが、違和感は拭えない。 すると腹心の裴緒(ハイショ)もまるで仕組まれたように証拠が揃い過ぎていると疑った。 そこへ休暇で故郷に戻っていた馬盛(バセイ)が慌てて戻って来る。 「荀頭!廖会は?!」 「死んだ」 「私の身代わりに…故郷に戻っていなければ私が死んでいたはずです」 馮膺の義理の弟・孫令(ソンレイ)も捕縛された。 孫令は拷問で姉夫が黒幕だと証言するよう強要されたが、決して認めようとしない。 一方、軍謀司(グンボウシ)では高堂秉(コウドウヘイ)が自分たち古株の行く末を案じていた。 すると陰輯(インシュウ)は覚悟を決める時が来たという。 高堂秉はそれが西曹掾・李邈(リバク)につくべきだという意味だと分かったが、さすがに馮膺を見捨てるのは気が引けた。 荀詡たちは馮膺の潔白を信じ、独自に事件の捜査を始めた。 争った形跡はなく、腕利きの廖会が正面から一撃で殺されている。 恐らく顔見知りによる犯行だろう。 しかし狐忠(コチュウ)将軍の配下が現場を荒らしたため、新たな手がかりは何一つ残っていなかった。 聞き取り調査が難航する荀詡だったが、偶然にも当日、西門に近い宕渓(トウケイ)で山津波が起きたと耳にする。 李(リ)校尉の話では楽城(ラクジョウ)へ至る道が土砂で10里ほど埋まり、早上がりしていなければ情報を届けられなかったという。 「もう開通したか?」 「まさか、少なくとも10日は必要でしょう」 今は伝達するにも青石谷(セイセキコク)を回るため余計に3日はかかっていた。 五仙道の大祭酒・黄預(コウヨ)は陳恭(チンキョウ)を糜冲(ビチュウ)と信じて義兄弟となった。 そこで聖姑に五千道の案内を任せる。 こうして陳恭と翟悦(テキエツ)は思いがけず情報交換の機会を得ることになった。 「君が残した菖蒲に救われたよ、よく覚えていたな」 陳恭が五仙道から抜け出そうとした時、居所の外にあった葉は翟悦が危険を知らせるために置いた菖蒲だった。 この″指南針″は陳恭が翟悦に最初に教えてくれた秘伝の技、忘れるはずがない。 『この草の上は北、下は南を表す』 『最も長いのが北ね?』 『そうだ、上は北、下は南、左は西、右は東…西を指す最も短い草で情報を伝える 例えば折った場合は危険を意味する、もしくは折って東に向ける…安全という意味だ』 『哥からそんな技は聞いてないわ』 『私だけの暗号だ』 あの時、陳恭が使者と会ったのは賭けだった。 陳恭はなぜ黄預が自分を疑うのか分からなかったが、翟悦の話では直前に燭龍(ショクリュウ)から″陳恭が白帝だ″と急報が届いたからだという。 黄預は極めて猜疑心が強く、長老2人を犠牲にしてまで一芝居打ったのだった。 五仙道の峡谷には1万人が住んでいた。 丞相の南征に乗じて勢力を拡大、各支部に兵がいて、市井にも根を張っているという。 この数年で黄沙(コウサ)と西郷(セイキョウ)が五仙道の拠点となっていた。 その頃、長老・秦沢(シンタク)は当日、糜冲は出口まで来たが急に引き返したと報告していた。 「李長老と陳長老が気の毒で…」 黄預は2人の遺族を手厚く世話するよう命じ、念のため糜冲を警戒するよう命じた。 一方、荀詡と裴緒は廖会を埋葬、孤児で苦労続きの人生だった廖会の哀れな最期に涙した。 荀詡は裴緒に実は馬盛が嘘をついていると教え、直接、話を聞きに行くと決める。 しかし馬盛は居所ですでに息絶えていた。 すると手には箱が握られている。 中には全てを記した竹簡が入っていた。 「口封じか…」 翟悦は陳恭を連れて見張りの死角となる場所まで登った。 「どうして五仙道へ?」 「司聞曹の任務ではない」 翟悦は司聞曹に潜入した燭龍が白帝を陥れ、丞相・諸葛亮(ショカツリョウ)の街亭(ガイテイ)敗北を招いたと知った。 情報をすり替えられた白帝は今や逆徒となり、馮膺は荀詡に白帝の暗殺を命じたという。 つまり陳恭と従兄は独断で燭龍探しを始めたのだ。 「これからどうするつもり?」 「燭龍を捕らえ、すべてを明るみに出す」 しかし五仙道は謎に包まれ、2年も潜伏している翟悦も未だ何もつかめなかった。 すると陳恭は燭龍が五仙道を手助けして連弩の機密を盗む″青萍(セイヒョウ)計画″を利用すると教える。 「黄預と燭龍の連絡方法は?」 「直接は会っていないと思う、連絡用の麻紙や竹筒は読んだら火の中へ…」 「…燭龍が黄預に当てた密書を見たい」 「私がやるわ」 2人はすぐそばにいながら、決して触れ合うことは許されなかった。 「苦労をかけたな…」 「漢の復興を思えば…あなたと暮らせる日を思えばつらくない」 陳恭は涙をこらえ、別れの朝に翟悦がくれた護符を見せた。 「必ず成功させてね…」 李厳(リゲン)が役所に戻ると、南鄭から帰った狐忠が待ち構えていた。 実は司聞曹の事案が急転したという。 しかし報告書を見た李厳はこれが李邈の策略だと知り、むしろ災いを招くと呆れた。 確かに司聞曹が敵と通じていたと証明できれば楊儀(ヨウギ)を負かせることはできるが、もし楊儀に退路があれば自分たちが転覆するという。 狐忠は李邈の策なら万全だと自信を見せたが、李厳はしょせん偽りに過ぎないと冷静だった。 「これは使ってはならぬ…いやちょっと待て、かくなるうえは静観しよう これは我々とは関わりがない」 荀詡は取り調べと称して拘置所の馮膺を訪ねた。 そこで密かに馬盛が書き残した証拠を渡す。 「馬盛は義父の見舞いを理由に休暇を取りました 事案が起きた時、馬盛は不在だったとして被疑者から除外 ですが実際は楽城へ戻っていなかったのです 馬盛の絶筆を見つけ謎が解けました、すべては李曹掾の陰謀でした 私が木版を調べるよう仕向け、書庫から取り出して靖安司に渡した後、馬盛を潜り込ませた」 あの日、ちょうど従事たちは猛烈な雨の中で荷下ろしを始めようとしていた。 しかし孫令が濡れたら荷物がだめになると止め、従事たちはあきらめる。 実は馬盛はこの荷車の下に隠れていた。 馬盛は誰もいなくなったところで何食わぬ顔で靖安司に戻り、激しい雨なので帰郷を断念したと嘘をつく。 独り残っていた廖会も馬盛なら警戒せず、油断していきなり胸を刺されたのだろう。 「事の重大さに気づいた馬盛は万一に備えて記録を残していました 残念ながら黒幕を脅す機会もなく、口封じされたのです」 すると荀詡は白帝の潔白を訴え、馮膺を助ける代わりに燭龍探しに協力して欲しいと切り出した。 馮膺はならば燭龍に関わる証拠を全て自分に報告するよう条件を出し、2人の取り引きは成立する。 そこで荀詡は脱獄させたら丞相に事情を説明に行くよう頼んだが、馮膺には考えがあった。 青萍計画が目前に迫る中、五仙道の峡谷に竹鵲(チクジャク)が到着した。 陳恭は軍技司の警備が厳重なため、乗り込んでも立ち往生するかもしれないと心配したが、黄預は総成部の内部を描いた地図があると安心させる。 その頃、翟悦は黄預の居所を訪れ、燭龍からの密書を盗み出そうとした。 しかし密報はすでに火鉢に投げ捨てられた後、翟悦はかろうじて残っていた小さな切れ端しか発見できない。 一方、司聞曹では馮膺がこつ然と姿を消していた。 兵士が昼餉の後で交代に来たところ、侍衛が昏睡していたという。 李邈は激怒、聞けばその日の朝に荀詡が馮膺の尋問に来ていた。 荀詡は李邈から馮膺が脱獄したと聞いて驚いた。 確かに馮膺を尋問したが、大したことは聞き出せなかったという。 「馮曹掾が大雨の中、なぜ司聞曹に戻ったのか聞きたかったのです」 「そんなことで?!…馮膺の仕業だとは思っていないのだろう?」 「急死した馬盛は事件の日、故郷に戻っていませんでした、捜査せねば…」 焦った李邈は南鄭の役所がすでに明確な結論を出したと説得した。 荀詡は反省し、今後は行動を慎むと謝罪する。 そんな2人の話を陰輯が立ち聞きしていた。 裴緒は馮膺をかくまった。 南鄭は封鎖され、李邈は駐留軍に城内を捜索させているという。 「今日中に城外に出なくては…」 一方、李邈は陰輯に荀詡の印象を聞いた。 陰輯は荀詡が馬盛という手がかりを見逃さないという。 「決して目を離すな、妙な動きをすればその場で殺せ」 「そう命じました」 「…馬盛のところに何も残っていないだろうな?」 「反撃される前に殺しました、残しようがない 証拠も全て燃やしたため、馬盛が生き返って証言したとしても馮膺は事案を覆せないでしょう」 しかし馮膺の脱獄を隠し通すことは無理だとわかっていた。 そこで李邈は李厳に報告するよう命じる。 つづく ( ;∀;)涙をこらえるチェンクン…色気がダダ漏れ〜 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.20 23:44:41
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