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风起陇西(ふうきろうせい) 第十八計「連環の計」 馮膺(フウヨウ)は李厳(リゲン)に豪華な別荘を用意、気兼ねなく柳瑩(リュウエイ)と過ごせるよう手配していた。 その裏で柳瑩には見聞きしたことを時折、報告するよう指示しておく。 「安心して、恩は必ず返す、私は永遠にあなたのものよ…」 「命が惜しければ口には出すな」 柳瑩は馮膺を翻弄しながら、李厳には寄る辺のない身ゆえ情けをかけて欲しいと潤んだ目で訴えた。 すると李厳は柳瑩を決して見捨てたりはしないと約束する。 一方、西曹掾(ソウエン)の地位を得た陳恭(チンキョウ)は荀詡(ジュンク)の家で夕餉を共にしていた。 「まさか朝廷が馮曹掾の監督不行き届きを許すとはな、波紋を広げたくないようだ」 陳恭はこれ以上の追求は危険だと警告したが、実直な荀詡は良心に背かなければいいという。 「予感がするのだ、燭龍の事案の謎を暴くことが人生の意義だと…」 そこへ裴緒(ハイショ)が息せき切って飛び込んできた。 「一大事です!高堂秉(コウドウヘイ)が自害を!」 李厳は馮膺に皇帝から密勅を賜ったと教えた。 今回の朝議を機に諸葛亮(ショカツリョウ)とはいずれ決裂することになるという。 しかし丞相の影響力があまりに大きいため、痕跡を残さずやり遂げなければならなかった。 そこで密かに諸葛亮を陥れて君主を欺いた罪に問いたいという。 「分かりました、周到な計画を練ります」 陳恭と荀詡が牢に駆けつけた。 裴緒の話では酉の刻(18時頃)に夕餉を届けた後、亥の刻(22時頃)に夜回りに来た時には死んでいたという。 高堂秉は机を割った木片で喉を突き刺していた。 陳恭は落胆する荀詡に手を貸して立たせると、むしろ都合良く死んでくれたという。 翌朝、陰輯(インシュウ)は高堂秉の自害を知り安堵していた。 実は荀詡の調査には批判がでており、司聞曹の古株を一掃するつもりだと揶揄されていたという。 馮膺は燭龍を捕らえるため大きな代償を払った荀詡をかばい、陰口を叩くなと憤慨した。 すると孫令(ソンレイ)が根拠のない批判ではないという。 「荀詡が高堂秉を調べる動機は不純です、怪我をしてから性格が一変しました、姐夫を恨んで…」 「口を慎め!」 馮膺は話を遮り、荀詡とは個別に話すと言った。 陳恭は高堂秉が死んだことで燭龍の事案に決着がついたと言った。 「いいか、自害として処理しろ、それがお前のためだ」 裴緒も確かに木片が刺さった角度や力の大きさ、血が飛び散った方向を見るに自害だと納得する。 しかし荀詡はどうしても自害とは思えなかった。 「あいつは自害するようなヤツではない…机を割ったにしては指に傷ひとつなかった 割ったのはヤツではない」 天水(テンスイ)郡守に復帰した郭剛(カクゴウ)、すると郭淮(カクワイ)が五仙道の大祭酒・黄預(コウヨ)を連れてやって来た。 黄預は漢中で30年あまり隆盛した五仙道が1日で滅亡し、曹魏が賢士を集めていると聞いて庇護を求めたという。 すると郭淮は陳恭が自分たちの仲間だと明かした。 「今後は陳恭を追及するな、私の命を受けてしたことだ」 実は皇帝が天下統一において大きな役割を果たした五仙道を国教に考えているという。 郭淮は漢中に戻ったら陳恭と協同するよう指示し、大局を重んじるよう黄預を説得した。 陳恭は李厳の別荘を訪ねた。 李厳はまだ到着していなかったが、柳瑩が対応する。 「高堂秉が死んだ…これでそなたの身元は割れぬ ただ残念ながら荀詡は徹底的に追及するつもりだ…静観していろ、でそちらは?」 「将軍は私に惚れ込んで詩まで書いてくれたわ」 柳瑩は陳恭に茶と一緒に李厳直筆の詩を渡した。 馮膺は荀詡を呼んで高堂秉の件を聞いた。 荀詡は正直に陳恭から自害にするよう言われたと報告したが、どうしても腑に落ちないという。 すると馮膺は陳恭が正しいと言った。 朝廷の権力争いに終わりはなく、丞相が再び北伐するため司聞曹は平穏を保たねばならないという。 しかし馮膺は荀詡の性格上、手を引けと言っても無駄だとあきらめ、表向きは自害で処理し、秘密裏に捜査するよう提案した。 陳恭は数日以内に馮膺を捕らえると伝えた。 「罠を仕掛ける、この日を3年も待った」 そこで柳瑩に馮膺の伝達経路について刺史から聞いているか確認する。 すると柳瑩は付近を警戒しながら声を落とした。 「″青石谷(セイセキコク)の赤岩(セキガン)峰…」 「分かった」 馮膺が屋敷に戻ると復職した楊儀(ヨウギ)が待っていた。 すると楊儀はそろそろ″網″を引く時が来たという。 馮膺は街亭(ガイテイ)の事案後、郭淮が青萍(セイヒョウ)計画を始動したが、連弩を盗むのは目くらましで、狙いは李厳を制圧することだったと教えた。 そこで敵の裏をかくため計画の実行を阻まず、自ら李厳の腹心になったという。 「お前に売られた時、計画を実行するのだと悟ったよ」 「ですが決心がつきません…丞相は何もご存じない、我々の連環の計は大勢を巻き込みます 非常手段であり公にできません、露呈すれば李厳は我々を許さないでしょう 当然、司聞曹にも累が及ぶ、罪は免れません」 「だが危険を犯すしかない、李厳を倒す唯一の機会だ」 馮膺はついに覚悟を決め、これから李厳と昼餉を共にする際、計画を伝えることにした。 李厳がこの計画を始動すれば破滅したも同然、自分たちも無事ではいられないだろう。 ただし馮膺には気がかりがあった。 ひとつは陳恭だが、楊儀は10年前の父親のことなら機会を設けて釈明すればいいという。 あとひとつは荀詡のことだった。 「私の段取りより嗅ぎつけるのが早く、高堂秉の死への関与を暴かれるやも…そうなれば台無しです」 ↓何も知らず姐夫を心配する孫令 荀詡は裴緒からもう一度、当日の話を聞いた。 当直だった裴緒は高堂秉が亡くなったとされる2時辰(トキ)半の間は誰も独房に入っておらず、重罪犯の牢に痕跡を残さず侵入するなど無理だという。 馮膺が李厳の別荘を訪ねると陳恭の姿があった。 すると李厳は陳恭も仲間だと安心させ、早速、諸葛亮を陥れる策を聞くことにする。 馮膺は今回の目的を総括、北伐は国力を削ぎ国本を危うくするゆえ密勅により北伐を阻止すること、実際の行動に李厳が関わらないことだと切り出した。 「連環の計を考えました、全部で3段階です この計画を簡単に言うと″刀を借りて人を殺す″、以上です」 今回の北伐の戦術はかつて韓信(カンシン)が使った策を模倣している。 魏延(ギエン)が陽動作戦で隴西(ロウセイ)を攻める隙に丞相は主力を率いて故道を通って陳倉(チンソウ)を奇襲、その後、陳倉を兵糧の拠点にして長安を狙うのだ。 そこで1歩目はこの情報を曹魏に流し、魏延の部隊を殱滅するという。 その目的は丞相の攻勢を遅らせ、陳倉の攻略を滞らせることで、2歩目の時間稼ぎを行うことだった。 李厳は陳恭に目配せした。 そこで陳恭はこの計画には難点があると指摘する。 諜報機関の情報は虚実ないまぜ、曹魏の上層部が信じる保証があるのだろうか。 するとついに馮膺は郭淮と直接、連絡する経路があると白状した。 李厳もこれには恐れ入ったが、馮膺は漢復興のための非常手段だという。 計画の2歩目は呉(ゴ)軍に変装した李厳の腹心が関所を襲い、呉と蜀の商道を断って東呉の侵略を装うことだった。 しかし東呉は丞相に曹魏を討つと請け負っている。 李厳はまた陳恭に目配せした。 「つまり東呉の侵略が真実である必要はないと? 情報が伝われば丞相は不在のため皇帝は李厳に勅命を下すはず…」 「その通り」 李厳はようやく自分が東呉との戦に備えるという口実で東呉との前線に兵糧を送り、北伐を覆すと分かった。 すると急に険しい顔になる。 「これは謀反だぞ?!」 つづく ( ๑≧ꇴ≦)全然、ついていけない管理人が通りますよw で、馮膺も楊儀も陳恭が父の件で恨んでいると知ってるのか〜何だそれ? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.11.20 21:42:27
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