6/20新>フェラーリに任意保険をいくら掛けるべきか?
念願のフェラーリを手にされたラッキーなオーナーの皆さん、任意保険は大丈夫でしょうか?308GTBQVから488ピスタと296GTBアセットフィオラノまでフェラーリを10台乗ってきた中で、色々勉強してきましたので、私の経験が少しでも皆さまのお役に立てばうれしいです。任意保険料が高いからと言って、保険金額をむやみに抑えると万一の場合に役に立ちません。なお、私の個人情報だけでなく、保険会社、代理店の秘密情報もありますので、具体的な保険証書や見積書を公開することはできませんが、ファクトとして受け留めていただいて結構です。まず、「対人」の任意保険金額です。これは絶対「無制限にすべき」ですよね。強制賠償保険は対人賠償に限られますが、支払い最高額は被害者1名につき、死亡で3,000万円までです。フェラーリを見たら、被害者、遺族、弁護士などからの請求額は天井知らずになります。加害者の私たちも厳しい社会の批判に応えて「誠意」を示すために値切るような交渉は道義的に許されないでしょう。人身事故を起こせば、忙しい日常の中で厳しい世間の眼にさらされ、時間的、精神的に多大な負担を強いられるので、ここは保険料の問題ではないことをご承知おきください。例えば、3,000万円とか、4,000万円のような金額制限を付けても無制限と比べて思ったほど、保険料は年数万円も違いません。ご存知の方も多いかと思いますが、人身事故を起こした場合、警察は被害者からの聴取に専念し、加害者であるあなたの言い分は一切聞いてもらえません。その意味では保険だけではなく、ドラレコの装着も必須ではないかと思います。新聞には「福山市の医師、高倉裕征(37)被告」と実名が出ていました。厳しい社会的制裁を受けるので、せめて金銭面の打撃だけでも保険で緩和してもらいたいものです。執行猶予が付いても有罪判決が出れば、公的専門資格のはく奪や免許取消を始め、失職、家族の離反、離婚など、次々ほかの試練が続くかも知れません。次に「車両」の任意保険金額です。愛車や事故の相手のクルマの修理に関しては、修理業者や相手の保険会社から必ずカモにされます。「対物」の任意保険金額は過失相殺もあるので、3,000万円も掛けておけば無難でしょうが、問題は愛車の車両保険金額です。普通に行けば、購入時の車両価格に対して付保することになりますが、注意すべきはオプションの価格は車両保険金額に含まれないことです。つまり、本体価格4,000万円にオプション1,000万円を付けても、付保の基準になるのは通常4,000万円です。だからと言うことではないでしょうが、購入時にオプションを削る方も多いです。しかし、フェラーリの場合、オプションが多いほど納車時期が早くなる傾向があるのはご存知でしょうか。また、万人受けする魅力的なオプション仕様であれば、購入時に無理をしても付けておけば、後付けするよりはるかに安いですし、リセールバリューに大きく影響します。ピスタの例で行きますと、例えば、写真のリアモールをカーボンにするオプションは当時260万円ほどでしたが、後付けすると塗装、取付工賃込みで480万円掛かった実績を知っています。目立つリアモールがFRPのままですと、フルカーボンでないということでリセールでの人気が大きく落ちて、引合い件数や売れ足に影響し、最終的な価格にも響きます。260万円の差どころではありません。というわけで、人気オプションは車両保険金額に含まれなくても付けたほうがいいのですが、幸いなことに事故でスポイラーなどのオプションパーツを損傷して交換することになっても、ボディなどの本体部分の修理費用と併せて保険で求償できます。ただ、問題は「全損事故」になった場合です。「全損なんてないよ。」という声が聞こえてきそうですが、「全損」とは「原型を留めないほど修復不能な物理的状態」だけをいうのではなく、「修理費用が車両保険金額を上回る経済的状態」を言います。フェラーリの修理費が一体どれくらいかかるか、ご存知ですか。ちょっとした擦り傷程度は別にして、前や後ろをへこましたとなれば、カーボンやアルミの外板ボディなので、鈑金は効かず即交換になりますので、200-500万円コースでしょう。センサーやコントロールユニット、盗難防止装置がぎっしり入った前後バンパーやホイールハウスがへこんだ上に自走できない状態になれば、1000万円は軽く超えます。従って車両保険金額を当初の購入価格から減価償却に応じてドンドン下げている場合には修理費用が高いので車両保険金額を上回る「全損状態」に容易になります。オプションパーツも修理しなくてはならない場合はなおさら不足します。「全損状態」と認定されると、修理を止めて車両保険金額を貰えますが、廃車にした車両の所有権は保険会社に移るので、あなたの手許に残るのはもらった保険金額だけになります。何とか、同等車に買い換えたいところですが、フェラーリの場合は年式やオーナー数ではなく、車種の人気と走行距離、オプション仕様で相場が決まるので、もらった保険金だけでは買い換えはできないと考えて間違いありません。全損にはせず、中古部品を使ったり、工賃の安い業者に頼んで、修理費用を安く抑えて車両保険金額以下にすることも可能でしょうが、修理して売ろうとしても「修復歴あり」でリセールバリューは極端に下がるので、我慢して乗り続けるしかなくなります。つまり、車両保険金額を下げて保険料が安くなったと喜んでいる場合ではないのです。保険会社にとっては、車両保険金額は「私たち契約者に対する支払い補償限度額」なので、全て保険で修理ができるわけでもなく、同等車を買い換えられるわけでもありません。私たちオーナーは万一の時の資金不足を緩和するために、むしろ保険会社と交渉して車両保険金額が下がらないようにする努力が必要なのです。フェラーリの場合は元々の購入時の車両価格より高いプレミアムが付いている車種も少なくないので、そのような車種では当初の購入価格より車両保険金額を上げたいくらいです。488ピスタ ベルリネッタの場合ですと、元々の車両販売価格は4,300万円前後(+オプション1,000万円前後)だったと記憶しますが、今やカーセンサーなどを見ると2024/6/20現在で8,000万円近い相場になっています。このようなギャップは昔はなかったのですが、さすがに保険会社のほうも最近では購入時の車両価格から相場を少しでも意識した付保をできるように新価特約を付けるようになりました。ただ、新価特約により車両保険金額にどこまで保険対象価格を追加できるかは保険会社によって異なり、代理店を通じての個別交渉になります。国内保険会社で新価特約により相場の85%前後まで付保を認めた事例や購入後3-4年経過していても新車時の車両価格まで認めた事例があります。新価特約を付ければ保険料は当然上がりますが、全損時の買替資金不足はそれだけ小さくなるわけです。なお、この新価特約は盗難の場合には適用されません。新価特約なしの車両価格が基準になるので、ご留意ください。以上のことを考えたうえで、ご自分の利用状況に応じて車両保険価格をいくらにするかをご検討下さい。殆ど乗らない方や街中で流すだけで事故をしても接触事故程度と言い切れる方は修理費用も高額にはならないでしょうし、相手の保険を使える場合も想定されます。ご存知の通り、車両保険はサーキットをレースであってもなくても走行中の事故には適用されません。私の場合はプレミアムの大きい愛車をワインディングを飛ばして自損事故で大破するようなことも想定できるので、車両保険金額を高く設定できるよう、代理店とも相談のうえ、保険会社とかなり真剣に交渉しました。最後に車両保険の「免責金額」です。国内大手保険会社は軒並み20万円で統一しており、中々交渉で引き上げることは難しいです。しかし、保険料が高額なだけに事故を起こしても修理費用が軽微であれば、保険を使わずに修理するオーナーが殆どと思います。事故によって保険を使って求償すると、翌年から等級が3段階下がって事故有係数が3年間適用され保険料が増額してしまうからで、フェラーリでは元々保険料が高いので、非常に大きな問題です。元の等級と保険料レベルに戻るには3年間保険求償歴なしで過ごして4年目まで待つ必要があります。ですから、そのような契約者側の対応実態から考えれば、全損も意識して車両保険金額を高くして付保しようとすれば、免責金額を上げて保険料を下げられないかという考えが出てくるわけです。外資系保険会社では免責金額を20万円から100万円まで引き上げることができた事例があり、免責金額の引き上げで年間保険料が10万円以上安くなることもあります。以上のように、任意保険は過去の踏襲による更新継続では十分な補償が得られない可能性がフェラーリには生じていることを忘れないでご検討いただければと思います。もちろん、35歳以上不担保条件にする、運転者を本人配偶者限定にするという工夫や、安全運転でゴールド免許を目指したり、抜かれたら抜き返すというような血気にはやった運転はしないというフェラリスタのプライドを持つことが前提として私たちに期待されていることを忘れないようにしましょう。GOOD LUCK!今後も新情報により、更新を続けていきますので、よろしくお願いいたします。