5/28新>タウシュベツ橋梁 崩落近づく この7年間の変貌
タウシュベツ橋梁はJRのポスターにもなったので、ご存知の方も多いと思います。旧国鉄士幌線の糠平駅と幌加駅間に掛けられたコンクリート造りのアーチ橋ですが、1937年に建設されてから1955年に糠平ダムが完成すると士幌線が人造の糠平湖を大きく迂回する形で路線変更になったため、結局18年間しか使われませんでした。私が1972年に初めてクルマで訪れた時は軽トラックが廃線になったこの橋梁の上を往来し、釣り人が橋に座って釣りをしていました。冬季は糠平湖の水位上昇で水没するとは聞いていましたが、殆ど注目されることのない単なる廃線跡という感じでした。その後、2017年から毎年訪れていますが、元々コンクリートの外皮の中に石を詰め込んだような簡便な構造であったうえに水没時の凍結の繰り返しで劣化が激しく、恐らく数年のうちにアーチの一部が完全に崩落して連なった姿は観れなくなると思います。地元の方々も保存のための補強計画を検討したことがありますが、数億円の工費が掛かるため、このまま放置して崩れ行く成り行きに任せるようです。雄大な景色の中に取り残されたようなアーチ橋の姿はまるで古代遺跡を思わせるだけに誠に寂しい限りです。写真を経年順に掲載しますので、崩落が進む状況を見ていただくとともに、時期や水量で橋の姿が変幻万化するのをじっくりご覧下さい。なお、現在立ち入りが制限されており、近くで観る場合は糠平温泉郷に朝6時ころに集合の2時間ほどのツアーに参加されるのがお薦めです。1937年(昭和12年)ころに建設中のタウシュベツ橋梁です。セメント以外の原材料は現地調達でした。竣工直後のタウシュベツ橋梁です。当時は原生林が迫っていましたが、1955年(昭和30年)の糠平ダム人造湖建設に際して伐採されて現在の景色になったようです。2017年7月まだツアーの存在を知らなかったので、対岸の展望台から遠景を観るだけでした。2018年8月初めてツアーに参加し、施錠されたゲートを通って、旧士幌線跡を通りながら橋梁に行きました。30年ぶりに変わり果てた姿を近くで見て、軽トラが走っていた昔を俄かに思い出せませんでした。この時もアーチの一部が崩れていますが、まだアーチ橋の柱の下に崩れたコンクリートや石が堆積しているところまで至っていませんでした。2019年8月 練平湖の水位が余り下がっておらず、アーチ橋が綺麗に水面に映っています。宮崎駿のアニメ作品に出て来そうな何とも幻想的な眺めです。橋の向こうから仙人が歩いてきてもおかしくありません。崩落部分も前年から殆ど変化がないようでした。それにしても古代の遺跡にしか見えません。橋の上面はどんどん浸食が進み、詰石が減って鉄筋がむき出しになりつつありました。2020年8月この年は春先まで糠平湖の水位が高かったのか、流木が旧士幌線跡の奥まで押し寄せていました。この年から橋梁に近づき過ぎないよう、ロープが全周囲に張られるようになりました。橋桁部分にクラックが入っています。橋の上端の鉄筋もかなり露出して見えるようになりました。崩落が進み、橋梁の柱の下に残骸が堆積しているのが観られるようになりました。腐った鉄筋が橋から柳にように垂れているのがはっきり分かります。近くで観ると、コンクリートの外側だけが残っているかのように見え始めました。2020年10月2020年の2か月後に再訪するとすっかり紅葉して寒いくらいでした。ここはツアーの集合場所がある糠平公園ですが、昔ここに下の写真のような大雪グランドホテルという大きなホテルがあり、2003年に倒産後も惨めな姿を13年間晒していたようですが結局公費で解体、整備され、現在に至っています。この旧士幌線跡に沿って林を抜けると橋梁が現れます。夏の姿とは全く異なる風情です。夏の農業用水需要が終わって、糠平ダムが貯水時期に入ります。こんな手すりのような鉄筋はなかったのになあと年々進む露出に驚かされました。2021年9月この年は数位が高く、ツアーには参加せずに対岸の展望台から遠景を観るに留めました。崩落が冬に進まないことを祈りながら・・・。2022年9月訪れたのが例年より遅く9月下旬でしたので、秋というか冬の足音を感じる気配がありました。寂寥感が胸に迫ってきます。2023年8月この綺麗なアーチの影がなくなると思うと切ないです。橋梁の上流側に広がる雄大な自然です。このような風景は北海道しか味わえません。何度も訪れる理由です。岸辺と接続する橋梁部分が崩落してなくなっていて驚きました。下に崩落破片が堆積しているのが見えます。もはやよじ登って渡るのも困難になってきています。もちろん、立ち入り禁止ですが。お付き合い願っている糠平郵便局の局長さんから分けていただいた記念切手シートです。このような形でタウシュベツ橋梁のことがより広く伝わり、沢山の方々のこころの中に残るといいですね。以上のように毎年確実に劣化が進んでいます。訪れるたびに私は古代遺跡の中に一人取り残されたような錯覚に陥ります。このまま崩れるのがいいのか、それが自然の輪廻かも知れませんが。