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カテゴリ:ノーマル小説(♂×♀、♀×♂)
-----1、姫乃への想い入れ
姫乃は、神様より勝手に決められた運命から解放される為に蒼龍の神社へ居候中の身なのである。今日も姫乃は、蒼龍の相応しい嫁になるべく当番を欠かさずに朝食を作り始める。 「管理犬さん、朝やで。起きてぇな」 「う゛ぅ~、あと5分・・・」 幾ら揺さぶっても蒼龍は中々布団から出てこようとしない。 そこで姫乃は、キスをする顔で蒼龍に自分の顔を近づけた。 「起きてくれないと、チューしちゃうでぇ?うー・・・」 大胆な行動に出た姫乃に驚愕した蒼龍は、急いで布団を跳ね除けて飛び起きた。 どうやら、姫乃には頭が上がらないようだ。 「わ、分かったよ!すぐ起きるってば!」 姫乃の大胆な行動には、いつも驚かされてしまう。 先週の妖怪退治の時もそうだ。 敵の妖怪は何でも溶かしてしまう妖怪で、その妖怪はトンでもなくアブナイ奴だった。 真っ向から敵に立ち向かって行った姫乃は、こけた拍子にうっかり地面に残っていた妖怪の唾液を踏んでしまった。 唾液で溶かされてしまった姫乃の服は、あっという間に露わになった。 蒼龍は真っ先に後ろを向いた。 「みんなどうしたの?何で後ろ向いてるの?」 「ふ、ふ、ふ」 「ふ?」 「服ーーーッ!胸、見えてるんだよ!!///」 「えッ!?きゃあああッッ!///」 慌てて隠した時には時既に遅し、妖怪は逃げた後だった。 素っ裸になっていた姫乃は、そのまま地べたにしゃがみ込んだ。 蒼龍は自分の装束を一枚脱ぎ捨て、それを姫乃に羽織らせた。 「ほら、俺のを着てろ。風邪ひいちまう」 「ありがとう」 大きい着物に包まれ、姫乃は蒼龍に担がれながら神社に戻った。 自分の部屋に戻って新しい服に着替え、蒼龍に着物を返した。 「はい、服貸してくれてありがとう」 「・・・」 蒼龍は無言で着物を受け取り、そのまま部屋に戻る。 実はあの時、姫乃の身体を見て胸の鼓動が激しく高鳴っていたのだ。 「(俺のバカ!!何中学生の女に欲情しちまってんだ!!相手は7つ下の子供だぞ!?)」 姫乃といる時だけ、特別な感情を抱いていた。 だけどその感情は、蘭丸といる時とはまた違った感情が沸き上がっている。 異性として?仲間として?一人の女性として・・・? 義妹の蹄孤だって血は繋がっていないが、兄妹として接している。 しかし姫乃と過ごしている時は、そうでもない。 それは、姫乃を一人前の女の子として見ているからだった。 「(俺、知らない間に姫乃の事を意識してたんだ・・・)」 このまま彼女を神社に居候させ続けたら、いつか絶対姫乃に手を出しかねない。 決意した蒼龍は、姫乃を自宅に帰す事にした。 「姫乃、一度実家に帰れ。このままだと俺は、お前を襲ってしまうかもしれない・・・だから」 「いいよ、管理犬さんがそこまで言うなら。これは、姫乃に対する飴と鞭なんだよね?」 「そうだ」 姫乃は服と勉強道具を鞄に詰め込み、自宅へ戻って行く。 蒼龍は何も言わず、ただ姫乃がこのまま忘れてくれればいいと願っていた。 再び犬神神社は、むさっ苦しい男性陣と狗姫だけになってしまった。 「あ~あ、姫乃の作るたこ焼きスッゲー美味かったのに。何で実家に帰しちゃうんだよ?」 「馬鹿野郎!!あのままずっと彼女を家に置いたままにしてたら、近所から中学生を監禁してるって思われちゃうだろうが!」 「・・・それもそうですね、元に十分そうですし」 「安心せい、慈父!女子なら、ほれ妾がいるであろうに」 「バーカ、お前は見た目は6歳でも中身は100歳越えてるババアじゃねーかよ」 「だッ、誰がババアじゃ!?」 静かになった犬神神社は、再び静寂な雰囲気に包まれた。 -------2、蒼龍の求婚申請 一方姫乃の神社での生活ぶりを聞いていた姫乃の母は、大怪我はしていないかと体調は大丈夫なのとそればかり気にしている。 しかし、本人は全然気にしていない。 父が聞いてきた事は、お世話になっている神主の事だった。 どういう男だとか、アブナイ奴じゃないかなど色々聞いてくる。 「姫乃、将来はその神主を婿にする気なのか?」 「・・・うん、姫乃が20歳になってからね。姫乃が嫁いでもいいんやけど」 「その男を今度、家に連れておいで。父さんが姫乃に相応しい男かどうか、見極めてやる」 少し早いが、姫乃のお見合い会の話に持ち掛けられた。 その事を電話で蒼龍に伝えると、本人はあっさりOKを出した。 「いいじゃん、お前の親父さんに逢ってやるよ」 「ええの?!姫乃のお父さん、特に婿選びに厳しいんやで?」 「・・・俺を誰だと思ってる?京都で最強の、陰陽師だぜ。俺に怖いものなんてねェよ!」 「じゃあ、信長は?」 「怖い」 蒼龍の答えに元気を取り戻した姫乃は、一安心した。 そしてその一週間後、蒼龍は盛装して姫乃の父親に挨拶しに行った。 見守る彼らも、神社から緊張している。 天子家の食卓が、静寂な空気に包まれる。 「お父さん、ちょっと早いけど姫乃の彼氏紹介するわ。犬神蒼龍さん、犬神神社の神主さんやってるねん。夜のお仕事はな、妖怪退治してるんやで」 「初めまして義父さん、姫乃ちゃんとお付き合いさせて貰っております蒼龍です。年は20歳、今は犬神神社の神主をしております」 「成程。私が姫乃と神社に来た時、神主は別の人だった気がするが?」 「あの神主さんは俺の育ての親であり、犬神神社の元の神主です。所がある日、俺が中学に上がった頃病で亡くなってしまいました」 「では、ご両親は?」 「父も母も、妖怪に喰われてこの世におりません。唯一の血縁者は、義妹の蹄孤だけです」 蒼龍の深い事情を知った姫乃の父は、納得したように頷いた。 「・・・では、17年間一人で神社に暮らしていたと。大したものだな、感心したよ。学校はどうしていたんだ?」 「学校へは一度も行っておらず、そのまま神社の家業を継ぎました」 「一人で、神社に暮らしてたのか?家族も無しに」 家族がいないと言われた時、蒼龍は家族ならいると姫乃の父に言った。 「はい。でも今は頼りにし合い、信頼出来る・・・血は繋がってないけど大事な仲間達と言う大勢の家族がいます」 この言葉を聞いた魔愚那達は、心を揺さぶられた。 多分、自分達の事だろうと。 蒼龍の苦労した思いは、やがて姫乃の父にも行き届いた。 「君の苦労が良く分かった。姫乃も、その大事な仲間とやらに入っていたんだな」 「はい、全く持ってその通りです。ですから、姫乃を俺にください!必ず姫乃を泣かすような真似はしません、彼女は・・・俺が命に代えてもお守りします!だからお願いします!!」 「お父さん、姫乃からもお願いや!姫乃も管理犬さんも、ホンマに付き合ってるし慕い合ってるねん」 必死に土下座を繰り返す娘と蒼龍の姿を見た姫乃の父は、昔の自分を思い出した。 私も若い頃、こんな風に結婚を申し込んだっけと・・・。 遂に姫乃の父は、蒼龍と2人の仲を認めた。 「・・・君の押しには負けた、姫乃を頼むよ蒼龍くん」 「あ、ありがとうございます!」 「お父さん、ありがとうな!!」 あれ程毛嫌いしていた蒼龍を、姫乃の父はあっさり認めた。 これが不良の彼だったら、とっくに反対されていた筈だ。 喜びに浸る2人は、そのまま神社に戻って行った。 「姫乃、もう暫く彼の元で世話になりなさい。彼とやらなきゃならない大事な事があるんだろう?」 「大事な事??・・・子作り?」 折角認めて貰った矢先、蒼龍は思いっきりいつも通りのツッコミをかました。 「な・・・なんでやねーーーーーん!!」 「ああ、そっか。オロチ退治やったな、あははは!」 そう、2人のやらなければならない大事な事。 まもなく復活するであろう、ヤマタノオロチ退治。 仲間達と力を合わせて・・・。 2人は今日も明日も明後日も、明々後日もずっと妖怪と戦い続けなければならない。 END お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月26日 16時55分04秒
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