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林沖

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2021.11.17
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カテゴリ:エッセイ
秋風が草花を揺らして青空の下を吹いていく。
かっこつけた文句の一つでも言ってみようとしたが失敗しても、あいかわらず今日も「願立剣術物語」を眺めている。

「手の上げ、仕舞、謡の心に形叶うを見て能き思い入れかなという人あり。」

日本舞踊をイメージするような言葉。
ある人がその舞を見て、思いがこもっているなと言った・・・かな。

「剣術にたとえてみるに、敵を打たんと思い入るにもなし。打たれまじきと思うにてもなし。」

剣術にたとえてみよう。
敵を打とうなどと思いをこめるのではなく、打たれないように思うのでもない。

来た来た~!ややこしい話。

「身を捨てても、身を立てても、力を出しても、怒りても喜んでも、死身に思いきりても、その時のたよりには少しも成る事にてはなきと見えたり。」

やけになっても、偉そうにしても、力んでも、怒っても喜んでも、死に物狂いになっても、少しも役にはたちませんぜ、だんな~。

こんな意味かな。

「さりながら似せ物の死身に思い切っても莫大の臆病者にはましなるべし」

なんちゃって死に物狂いでも、臆病物よりは、まだましかな。

「さて思い切りという事は、何事ぞ。」

いよいよ本題に入ります。

「なれば、天命自然なれば進めども死なず。退けども生きず。有情の生死はことごとくその期あることを知りて、死すべきときもやすく、退くべきもやすき人の似せ物、思い切ると世話に人のいう也。」

ここが難しい。

なので、命あるものすべてに死期というものがある。天命が尽きなければ、突き進んでも死なないし、天命が尽きれば、逃げても死んでしまう。世間では思いきりがいい人というのは、こういうことがわかっているんだというけれども、それは偽物だ。

こんな解釈かな。

「上手の仕舞もただ平生の志し、仕舞拍子に思い入れ深く、寝ても志し、懈怠せず、ゆえに終いには直のなんともなき心に至り、その時、思い入れの能きと人のいうべきかな。」

そんなやけくそなことではなく、踊りの名人上手は、寝ても覚めても休むことなく、踊りの動きやタイミングのことばかり考えて、ついには考えなくてもできるようになる。このとき、はじめて思い入れが良いというのだ。

つまり、踊りの名人というのは、いつも踊りのことばかり考えているほど、踊りにたいする思い入れ、強い情熱がある。だから、怠けることもなく、ひたすら稽古し、研究していると、無心に踊っていても、見る人には思いのこもった踊りに見える。
もはや、無心に踊っても、その一挙手一頭足に踊りに対する思い入れが現れる。

こんなところかな。

「金春太夫、能を教えはじむる時、先ず悪きくせをのみなおし待つるなり。わずかでも悪しき袖ふり残りぬれば、よきに至るまで稽古を尽くしつつ、よき品を強いて求めず。ただ、謡の理に叶うように物し、大さわやかにつつましやかに習いを積み、稽古を重ねて自然の義にいたらんことをねがう。」

能の名手、金春太夫は、能を教えるとき、まず悪い癖をなおすことから始める。少しでも悪い癖があったら、その癖がなおるまで稽古して、あえて、品よくきれいに踊れるように教えようとはしない。
ただ、歌の心情に叶うような動きを教え、大胆に細やかに稽古を積む。そして自然の動きになるように導く。

「学実も又、この悪心を去る如し。すなわち、善心充足すとあり。」

理論も実技も、この偽物の心拭い去るためにある。心に剣術に対する情熱があることが当たり前のようになるまで稽古を尽くせ。

結論が出た。

死に物狂いもやけっぱちも、その無謀な思いきりの良さも、偽物だ。
剣に全ての情熱を注ぎこみ、稽古に稽古を重ねた者だけが、生死の狭間で剣技をふるうことができるのだ。

竈門 炭治郎のように。

あ、これは一言余計か・・・・。





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Last updated  2021.11.17 14:17:47
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