|
テーマ:515の放浪(100)
カテゴリ:カテゴリ未分類
港の方向に進み始めた船は、波に当たって激しく上下し始めた。まだ、陸地は見えていたので安心感もあり、船が波からドンと落ちる感覚を楽しんでいた。
「ひぇ~!ジェットコースターみたいだな。レールがないけど……」 天気はますます荒れてきた。風が強くなり、波も高くなってきた。「ひゃ~」は歓声のつもりだったが、だれも言葉を発しなくなっていた。 だいたいが前に進んでいるんだろうか。風と波で押しもどされているとしたら、ずっと港に帰れないか。そのうち燃料がなくなって停船、救助を待つということになるのか。 しかし、救助されるのは、発見された船だけだ。こんな小さな船が見つからないということも有り得る。船が沈没すれば終わりだし、漂流すれば……太平洋上で餓死か。 何パーセントかの確立で死ぬなと考えたら、逆に冷静になれた。陸地は?と見回すと、左方向にかすかに見える。たぶん、今の進行方向に港があるはずだ。 船は上下にも前後にも左右にも揺れだした。 今の状態でもいい、なんとかこのまま進んで行ってくれないだろうかと考えていた。 「ヤマザキ運転代わってくれないか」 オレかぁ?以前にも操縦させてもらって、船の操作はわかってるけど。なんで今この状態でオレに代われと言う。荒れた海に動揺して操縦に自信がなくなったか。しかし、オレがやってもうまくいくという保障は…… 「代わろか」 『おれがやる』という決心があったわけでもなく、手すりを伝わりながら操縦席についた。 (つづく)第11話全編 は[楽天ブログ・FREE PAGE]に掲載します
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.09.10 22:03:50
コメント(0) | コメントを書く |