こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

入社時面接で社長と会い、運転手経験がないなら最初の１カ月は、石川町車庫で待機してお得意さんの場所を覚えるのがいいなと聞いていたので、それに従うことにした。

他の先輩運転手からは、社長の言うことなんかいいんだ雷神前で待った方が稼げるぞと言われた。でも、意地になって昼間は石川町待機を続けた。

 ハイヤーなので呼ばれてから迎えに行くという体制だが、石川町、雷神前、この２か所しか待機場所はない。あとは駅で長い行列の後ろで待つかだった。

 夜は雷神前で待機して、飲み屋などから営業所に電話が入り、無線で呼ばれるというかたちだった。

 無線は「１３、エンペラー」などと車番と店名だけ言われて、客を迎えに行く。

 最初のころ、この店名だけ聞いても場所がわからない。後ろにつけている先輩に店の場所を聞いて出ていくというかたちだった。

 この店の名前と場所を覚えるというのがめんどくさい。１晩に数回しか自分の番が回ってこなくては、常連の店を全部覚えるまでに、１年間など過ぎてしまうだろう。

 そうだ！自分で検索ノートを作ろうと考えた。

 勤務時間は、原則として初日が朝から夜中まで、２日目が昼から夜中まで、３日目が明け番休みだ。空いた時間に一人で歓楽街の店名を調べてみようと考えた。

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