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テーマ:純粋バカ一代(1051)
カテゴリ:純粋バカ一代
【第5章】------------------------------------------------------------
空腹だった子が、メザシ1匹で満腹になるはずもない。ダイエット中なら話は別だが。余分な脂肪も、ゆるんだ締まりのない表情も、可笑しくなさそうな笑い声も、この子には見当たらない。ダイエットの必要はないようだ。 もう1匹のメザシもあげた。 「今度は、さっきみたいにガツガツ食べないで、ゆっくりよく噛んで食べな」 手のひらにメザシを持ったその子は「ゆっくりよく噛んで?」とオレの言ったことを確認している。 「ねぇ。さかな食べるとき、頭としっぽではどっちが好き?」 「う~ん……しっぽ」 「そうか。おにいちゃんもしっぽのほうが好きだったよ」 「おにいちゃんも、そうだったの?」 まだおなかがすいてる状態だろうけど、ちゃんと会話が成り立っている。ゆっくり食べ始めた子は、顔全体を上下に動かして、よく噛んでいる。 メザシの乗った皿は空になった。これでオレのおかずがない。あとはご飯が半分と味噌汁か。オレは今日一日だけ食事が足りないだけだが、この子は、この後いつ食べられるかわからない。残りのご飯と味噌汁もあげよう。 「ごはんもあげる。食べな。これもゆっくりよく噛んでな」「うん」 鬼美人も、オレが無視しているため、だんだん黙ってきた。 味噌汁もあげた。 「これは熱いから、フーフーして食べな」 「うん……フーフー」 父親も黙ったままだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.05.28 10:43:57
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