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砂菩に詠む月

砂菩に詠む月

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 くーる31@ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
 殿ヨーク@ こんばんわ 砂さんだー
 王様@ 潮 吹 きジェットw サチにバ イ ブ突っ込んだ状態でジェット…
 お猿@ やっちまったなぁ! http://feti.findeath.net/9fx91h7/ ちょ…
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カテゴリ:小説
 間一発。飛び乗った地下鉄のドアが閉まる。

(ふー間に合ったか)

この路線の下りは8分に一本しかない。乗り逃すとまた8分待たなくてはならない。

(なんで都心を走ってる地下鉄が、こんなに本数少ないんだ)

とは、つねづね思うことだ。
今日も列車の揺れは激しい。
地上の路線と比べると、2.5倍強の揺れ具合だ。
毎日のことだが、立っているのは案外つらい。
空席はなかった。できれば腰を下ろして帰りたかった。
次のターミナル駅までおよそ18分。
そこまで、席を取るチャンスはない。
辺りを見回して、途中駅で降りそうな客の見当つける。
比較的に腰を浅く掛けていた年配の女性客の前に立つことにした。

 目的の立ち位置を確保して、中吊り広告などを見回す。
これは単に癖というか、習性であって広告そのものに興味などないし、実際に役立ったこともない。
そうして目線を動かすうちに、気になる人物を見つけた。
それは、同じ職場の女性だった。
いつも、職場ですれ違うときなど 朗らかに冗談を言ってくれたりする。
俺にとっては貴重なことだ。
美人ではないが、チャーミングという言葉がしっくりくる。
そんな彼女は、お気に入りの女の娘だった。

(同じ路線か? 今まで見かけたことはなかったな)

俺は声を掛けるかどうか迷っていた。
仕事中は後ろで一本に束ねていた肩より少し長い髪を、今は下ろしていて印象が大分違ったのも 躊躇った理由かもしれない。
が、俺は決心して声を掛けることにした。

(普段はゆっくり話す機会もないからな、もしかしたら何処かで一杯くらい付き合ってくれるかも知れないし)

其のときだ。

 列車内に不似合いな音楽が流れた。

(携帯はマナーにしとけよな どこの馬鹿だ?まったく)

そう思った。
曲のイントロ部分が過ぎてもいっこうにとめる気配がない。

「ゴメンね 素直じゃなくて 夢の中なら言える  思考回路はショート寸前 いますぐ会いたいよ」



車内に動揺が走る。
幾人かは明らかに表情がゆがんでいる。


俺は鼓動が大きくなるのを感じていた。

(しまった! これは俺だ!俺の携帯がなっている!)

俺は焦った。汗った。

(まずい。早く切らなくては!)

ショルダーバッグに手を入れ携帯をまさぐる。
こんなときに限って上手く見つからない。
あった。
しかし、サイドキーが押せない。
仕方なく本体をバッグの中で開こうとした。

 ゴトン!

足元に携帯が落ちたとき、列車は駅に近づいたのか減速を始めた。
前述のとおり、この路線は地上より2.5倍揺れが激しい。
そのほとんどが、加速時と減速時の慣性によるものだ。

俺が手を伸ばすより早く、携帯は滑り出し乗客の足の間をすり抜ける。
巧妙にバンクしながら。
例えば、9ボールで相手のセーフティしたボールを避けて、狙った的をポケットするときのように。

バッグからでて音をさえぎるものがなくなった。
当然、音量は上がっている。
ボリュームは最悪なことに最大になっていた。
もはや車両内でその音を聞き漏らす者はいないだろう。

「月の光に導かれ 何度もめぐりあう」

そう歌いながら、俺の携帯は彼女の足にあたって止まった。
彼女の視線はすでに俺を向いていた。
目が合ってしまった。
その表情といったら、泣き笑いだ。
涙を堪えて笑いを抑えている。
周りの乗客からは クックとか プッフとか 声が起こっている。

俺は凍りついた。
頭の中では、氷河の最先端が崩れ落ちるときの壮絶な音がしている。
この後どう行動すべきなのか?
何か言うべきなのか?

答えが出ないまま俺は動けなかった。

列車がようやく駅に着いた。
ドアが開く。
乗客のけっこうな人数が降りていく。
それらの人々は、ホームに降りたとたん。
堰を切ったように噴出し、中には大声で笑う者もいた。

もう駄目だ。
息も出来ない。

まだメロディーは鳴り止まない。
「ミラクル・ロマンス 信じているの ミラクル・ロマンス

月にかわっておしおきよ!」


フルコーラスが終わった。

(なんで台詞が入ってるんだ……)

最後に俺が見たのは。
彼女が口を手で覆いながら、携帯に見向きもせず 恐らくはまったく降りる必要のないはずの駅に、肩をふるわせながら降り立ったところだ。

身をよじりながら……



--FIN--

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絶対突っ込む人がいるんで、敢えて言います。

すべてはフィクションです。
どんなに実在の人物や団体その他に似ていても、また作者の行動パターンに比較して違和感がなくても。
す・べ・て!想像上の出来事であり、一切事実と関係ありません。

また作者の使用している「着うた」もこの曲ではありません!!

ありませんったら!!!





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Last updated  2007/01/28 05:21:43 PM
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