カテゴリ:砂的博物誌
葉のひろごりざまぞ うたてこちたけれど 異(こと)木どもとひとしう言ふべきにもあらず 唐土(もろこし)に ことごとしき名つきたる鳥の撰(え)りて これにのみゐるらむ いみじう心ことなり。 まいて琴に作りて さまざまなる音のいでくるなどは をかしなど世の常に言ふべくやはある いみじうこそめでたけれ 源氏物語に登場する「桐壺」は、宮中に桐(きり)が植えられていたことに由来する。 花札に、桐と鳳凰という札がある。 古代中国で、王の即位のときに鳳凰が桐の枝にとまったことから聖樹とされ、 以後、桐の花は権威の象徴とされたそうだ。 日本では、桐をモチーフにした紋を桐紋とか桐花紋(とうかもん)と呼ぶ。 桐花紋は、五七桐、五三桐、太閤桐、桐揚羽蝶、桐車、光琳桐など140種ある。 足利幕府は貨幣に刻印し、皇室や公家、豊臣秀吉も好んで使用しており、 秀吉の死後も"それっ桐(きり)"にならず、今では日本国の紋章として用いられる。 桐は、5月に花を咲かせ、秋から冬にかけて羽のある種子をつくる。 学名はPauloumia tomentosa、中国から渡来したといわれるけど、 アメリカにも自生しているから定かではない。 桐の木は、軽くて丈夫で加工性がよく、湿度の調整もできることから、 昔から、桐箪笥や琴などの材料として珍重され、各地で植栽された。 ブランドでは、会津桐や南部桐は古くから有名だ。 桐の花はよく目立つし、その花の香り甘く周囲に漂う。 実家の近所にも、かつて桐の大木は数本見られたけれども、 伐採されてしまったのか、桐はこの一本きりになってしまった。 この桐の木は個人の敷地にあるけど、これが伐採されてしまうと、 桐は、もう"これっ桐(きり)"になってしまう... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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