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カテゴリ:BALLET
ノイマイヤー「ニジンスキー」
すごいもの見ちゃった。世の中にはすごいものがあるものだ。 リアブコ、よかった。 この作品は1幕と2幕で作品が分裂している。それはニジンスキーの、人生の前半が輝かしい「陽」、後半が30年も狂気の中に囚われた「暗」だからである。 きっとどちらかは駄目、という人がいるだろう。あまりにも違いすぎる。 前半はショパン、そしてリムスキー=コルサコフの華々しい音楽、後半はショスタコーヴィチの暗く重々しい音楽が彩る。音楽も分裂しているのだ。 ペトルーシュカ(ウルバン)、すごかった。 すごすぎて総毛立つぐらい。 痛ましすぎて涙するぐらい。 後半、テーマは「狂気」だ。戦争の狂気と平行して描かれる狂気だ。 客席に神田うのさん、高岸直樹さん、そしてノイマイヤー。 開演前からショパンのピアノ曲が流れている。もう始まっているのだ。客電が落ちずに人物が現れ始める。舞台はニジンスキーの最後の公演のシーンから始まる。客席も劇中劇の観客なのだ。 スイスのホテル、着飾った男女が座り、ニジンスキーの登場を待っている。あんまりニジンスキーが待たせるのでドイツ語でうるさくしゃべっている。 ニジンスキーの父、(カーステン・ユング)は気を揉んでいる。真っ赤なドレスの妻ロモラが登場する。繊細そうな神経質そうな女性。ヘザー・ユルゲンセン。髪はブルネット。 ようやくニジンスキー(アレクサンドル・リアブコ)が登場する。 真っ白な浴衣に布団みたいなものを巻きつけて出てくる。出てくる瞬間、すごかった。月曜に見たあの明るい男はどこにもいなかった。世界フェスで見た性格の良さそうな若者はどこにもいなかった。そこにいるのはほのかに狂気をまとった、色気のある男だ。 舞台上の客は待ってましたとぱらぱらと拍手をする。ゆかたや布団を脱いで、黒いじんべえみたいな姿になる。沈黙が訪れる。やがて音楽なしで踊りだしたのは狂気の踊りだった。これがすごい。不規則な足の動き、不規則なジャンプ(“ニジンスキーの精神病院での最後のジャンプ”を髣髴とさせる)アントルシャ 宙を掴む上に伸ばした手。 客は完全に引く。 ところが、しばらくすると、明るいショパンの(?)音楽で楽しく踊りだす。客は喝采。 舞台は彼の回想に入る。彼の狂気の世界に行ってしまった兄(服部有吉)と妹であるブロニスラヴァ・ニジンスカ(ニウルカ・モレド)がセーラー服姿で登場し、3人で踊る。楽しそうなタップダンスのような、足で床を打ち鳴らすようなステップのダンス。ところが次のシーンでは、この兄が拘束服を着せられて舞台上手からごろごろ転がってくる。母(ジョエル・ブーローニュ)も登場する。 ホテルの二階のバルコニーのような客席に男が立っている。セルゲイ・ディアギレフ(ロイド・リギンズ)、エンファサリオだ。彼の存在感は圧倒的だった。 ニジンスキーは彼を見つめると走って駆け寄り、二階のバルコニーまでよじ登っていって、彼に抱きつく。 アルルカン(アルセン・メグラビアン)が踊る。 マリインスキー劇場のダンサーたちが登場し踊る。先頭バッターはセバスチャン・ティル。あとはバルボラ・コフットコヴァ、エレン・ブシェー、エミル・ファスフディノフ。 第2場 稽古場。 ニジンスキーのアンドゥオール。 ディアギレフとニジンスキーのダンス。 妹と兄と母がまた登場し、踊る。 ディアギレフはニジンスキーに対して完全に優位に立っている。彼をいじめている。リフトして床に叩き落し足り、上に乗ったり。ニジンスキーは苦しみながらも彼を愛しているようだ。 二人の関係が最高のとき。 すばらしい舞台が次々に生まれる。フォーキンの薔薇の精、そしてシェヘラザード。 音楽はシェヘラザードなのに薔薇の精(アルセン・メグラビアン)が踊っている。背が高い、中東系ぽい顔立ちの子。薔薇の精は手に特徴がある。手をうっとりと頭に上にあげて絡ませる。 そしてシェヘラザード、ここは圧巻。美しいメロディーに載せてすばらしい群舞が展開する。メンバーは配られたもののうちのアルセン・メグラビアンがなしで、代わりにロペスが入ってます(掲示より)。 群舞の先頭はディアギレフ。途中スピーカーがぶちっぶちっと壊れかけ心配したが、ロイド・リギンズは何事もなかったように踊っていた。これは演出ではないよね? そして黄金の奴隷(オットー・ブベニチェク)、ここはすごかった。後ろ向きで登場する。黄金のオーラがゆらゆらと立ち上っている。めちゃ色っぽい踊りをする。陶酔のダンス。このダンスで拍手来た。幕間以外は唯一の拍手だった。 テニスボールが飛んできて、ラケットを持った青年(ロリス・ボナニ)が現れる。ディアギレフと青年とニジンスキー。 タマラ・カルサヴィナ役はラウラ・カッツアニガ。彼女はニジンスキーの相手役のダンサーとして登場して、いろいろな有名な役を踊る。シルフィード(これは後の場面の伏線)、「牧神の午後」のニンフ、「ペトルーシュカ」のコロンビーヌ。ちょっとコスプレみたいだが、後半では金髪を振り乱してタイツで登場する。 ニジンスキーの「内面と影」で服部とメグラビアン。背が違いすぎてすごい。30センチぐらい差がある? キャスト表にはレオニード・マシーン(ロリス・ボナニ)の記述があるがどこで出てきたのかわからなかった。 そしてお待ちかねの船上のシーン。船の甲板。舞台上手には手すりが。ボーイが下手に椅子を運んでくる。下手から現れるロモラ。上手から黒い服で現れるニジンスキー。目が合う。一目で惹かれあう二人。ニジンスキーはシャイだ。目が合ったあとちょっと目礼してすぐ後ろを向いてしまう。 牧神が現れる。(オットー・ブベニチェク)。牧神は好色。ロモラはニジンスキーと牧神と踊る。ロモラにはニジンスキーは輝かしい舞台のスターで、牧神であり、黄金の奴隷だったのだ。しかしニジンスキーその人を愛していたわけではなかった。後半ではそのジレンマがだんだん明らかになっていく。 ここのリアブコはすばらしかった。良かった。リアブコの踊りは正確で美しい。端正に踊る。足を後ろにアチチュードしてそのまま後ろに回転するのでも、彼は背が弓のようにそっている。やはり踊りに華がある。終わって拍手がなかったのが残念。 ニジンスキーはロモラのショールを手に取り、執着する。これは「牧神の午後」で牧神がニンフのベールで自慰を行う衝撃的なシーンの伏線である。 牧神はロモラのショールとニジンスキーの脱いだ黒い上着をいとおしそうに弄ぶ。 二人の踊りがヒートアップすると、牧神は舞台前方に横たわって牧神の例の行為を行う。 ロモラは甲板の椅子に座り、ニジンスキーは幸せそうに膝枕する。 しかし安息は長く続かなかった。背景の壁を上手からバン、バン、バンと倒していく男。ディアギレフ。ニジンスキーは脅える。 ニジンスキーを支配するディアギレフの目を逃れ、二人は南米で結婚してしまう。悲劇の始まり。 二人の結婚のシーン。祝福する人たち。しかしディアギレフが登場するとだんだん二人の影が薄くなる。ディアギレフは絶対的権力者で、彼からすべてを奪う。さまざまなバレエの登場人物が登場する。しかし彼はさびしく一人椅子に座り込む。1幕の幕が降りる。 2幕。 光る輪が二つ。その輪の中にニジンスキー。上半身裸。上手には一群の人、その中央に服部。服部は人々にリフトされる。リフトしているのはカーステン・ユング。 妹も踊っている。 このとき一群の前方にオットー・ブベニチェクがいた。1幕での扮装を落とし、顔は素顔、白いシャツ、下は黒いズボンで靴の部分を金色のボタンで留めている。これは何の役だったのか。一群の人はニジンスキーの心象風景、この人々とは異質だった。彼は舞台上手にはけた。 この後はオットーはまた黄金の奴隷として登場するが、1幕と違ってもう帽子を被っていず、化粧もしていない。 服部のものすごいソロ。ここは白眉だ。彼は常人では考えられない動きをするのだ。何度も言うようだが。そして切れがすごい。 服部は床の上で指を拡げ猫のように爪を立てる。 最後のほうではニジンスキーとユニゾンになる。 重なり合って立ち、手を横に伸ばし、指を1本、2本と拡げて行く。交互に同じことを繰り返す。 狂気が忍び寄っている。 ゆっくりとした音楽から激しいものになる。 戦争の気配がやってくる。一人また一人、人々が軍服を引っ掛けて出てくる。 黄金の奴隷も、アルルカンもだ。 ニジンスキーの妻は男(ユング)と浮気している。白い長い白衣を着ている。ニジンスキーの医者だ。ニジンスキーは精神病院に入っているのだ。 ロモラは医者と、ニジンスキーは兄(狂気)と踊る。 ニジンスキーは軍隊に捕らえられる。 (これは幽閉されたということらしい) やがて激しい群舞になる。「スパルタカス」ね。うん、なるほど、言いえて妙だ。まさにショスタコーヴィチの激しい音楽で圧倒的なダンスが展開する。鳥肌もののシーンです、ここは。 ペトルーシュカ(イヴァン・ウルバン)が踊る。すごいウルバン。このシーンがある意味一番すごかった。ペトルーシュカは醜く、不恰好で、滑稽に踊る。でもどこか胸を衝かれる。複雑な気持ちになる。その姿を見ながら、大泣きに泣くニジンスキー。可哀想でならない。 ニジンスキーは完全に狂ってしまった。人々(軍隊)に対してどなりまくる。数を数えているのか? よくわからない。人々は倒れ全員死んでいる。 医者が出てきて介抱する。 ロモラが橇を引いてくる。 ロモラはこの苦しみからニジンスキーを救いたい。 ロモラはニジンスキーが中空に伸ばして腕をつかみ降ろそうとする。 二人のなんとも悲しい、ダンス。夫婦の愛と憎しみ。思わずニジンスキーを突き飛ばすロモラ。ニジンスキーはロモラに暴力を振るう。 橇にニジンスキーを乗せる。また降りる。 このシーンの間中、死んでいる兵士が一人一人起き上がってゆっくりゆっくり、上手から下手に歩いていく。延々と続く行進。 上手からディアギレフが登場する。 ディアギレフは橇に乗る。兵士が橇を引いていく。 ニジンスキーは妻のロモラと「レ・シルフィード」を踊る。例の決めのポーズで、ニジンスキーが耳に手を当てて、シルフィードが彼の方に手を置きアラベスクパンシェ、ニジンスキーはほのかに幸せそうに微笑む。ところが軍隊の男たちに嘲笑される。ぎゃっはっはっはつ… 場面が変わり、最初のシーン、スイスのホテルの場面。 幻想、回想から醒めた、いや醒めてないニジンスキー。 人々は笑い続けているニジンスキーを。その中には、牧神のユング(このシーンから牧神はユングに)上着は軍服。そして同じく黄金の奴隷(オットー)。ペトルーシュカ(彼の演技はここでもすごい)。薔薇の精。またこのシーンからアルルカン(仮面の男)がステグリになる。ステグリのソロ・ダンスサイコー。若々しい! きれ、勢いがある。 ニジンスキーの分身である彼らは、冷たい目で彼を見つめている。そのほかの軍隊の兵士たちはいつのまにか全員死んでいる。屍が華やかなホテルに累々と。 妻ロモラは下を向き顔を手で覆っている。見たくない彼の狂気の姿。 ニジンスキーは、何を思ったか、黒の長い絨毯を舞台に横に引く。それから赤い絨毯を今度は縦に引く。そしてその上で踊り、その絨毯を両方体に巻きつけて踊る。 そして崩れ落ちる。全幕、了。 カーテンコール。 リアブコが舞台上手からノイマイヤーを連れてくる。ノイマイヤーは舞台端でリアブコにキスし抱き合う。カーテンコールで役柄から抜け切れなかったリアブコが初めて笑う。感極まった表情のリアブコ。感動のシーンだった。すばらしかった。 ニジンスキー役はほとんど出ずっぱりで、4人ぐらいの集団で踊る際も必ず絡むのでほとんど休めない。 これはすごく疲れるだろう。毎日はできない役だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年02月07日 23時51分53秒
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