ダニエル・ハーディング指揮 ロンドン交響楽団コンサート
2007年4月17日(火)新宿・東京オペラシティコンサートホール
指揮:ダニエル・ハーディング
独奏:フランク・ペーター・ツィンマーマン(vn)
曲目:ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 変ニ長調 op.72-4
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95「新世界より」
ツィンマーマンのベトコンがどうしても聴きたかった。
天才と言う言葉はこういう人のためにある。
まさに会場をドミネートする圧倒的な存在感。
彼のヴァイオリンが最初の調べを奏でた瞬間から聴衆は完全に引き込まれ魅惑された。
終わったとき拍手、拍手、拍手。
引いている顔つきはわりと修行僧のように神妙。まったく笑わない。
でも彼のヴァイオリンの音は…! まさに音楽だ。まさに自由だ。まさに美だ。気ままな小鳥だ。
超絶技巧たるやすさまじく、何もかもが完璧で、音楽性が高い。
いとも簡単なことのようにさらーっと弾いてしまう。それが彼。
1、ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 変ニ長調 op.72-4
前菜です。木管から入って弦。ふわーっとした不思議な響き。かる~いジャブで終了したハーディングさん。ハーディングさんに私は前、あだ名をつけた。「メガネ王子」。メガネ姿が実に可愛かったので。しかしコンサートではコンタクトなのかしら?
細い体、一見、というかどうみても若造! そして赤茶けた金髪。これがロンドンフィルの指揮者だなんて! ほんとにすごいことですね。
2、ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
第1楽章。タンタンタンタン… 規則正しいリズムの中で展開されていく。時計がリズムを刻むように。その心臓の鼓動のような響きはベートーベンに特徴的。ダンダンダン…よく使いますよね。
きた~カデンツァ! 彼のカデンツァはもう「一人オケ」状態でしたね。
第2楽章。箸休めのような部分です。ヴァイオリンのメロディアスな部分が聞かせるが、第1、第3楽章と比べると面白みに欠ける。まあそういうもんです。
第3楽章はそのままつながって入る。これはベートーベンのおはこですね。
もう~第3楽章が最高でした。まさにツィンマーマンの独壇場。激しく体を動かしながら弾く。足を踏み込む。彼はけっこう動き回って引くのでスペースが空けてある(笑)。
第3楽章のテーマをVIOLINが高らかに奏でる。♪レラ~レファラ、レラ~レファラ、ソミ~ のところ。最初低い音で、次にオクターブ上げて弾く。
これを2回繰り返す。そして♪ピンポン(*)。最初は弦で。
それから展開部があって、
またさっきの第3楽章のテーマに戻る。最初低い音で、次にオクターブ上げて弾く。オクターブあげる前にちらっといたずらっぽくステージの右上に視線を飛ばす。でもそのような目線は後にも先にもここだけだった。
今度は♪ピンポン、指でピチカート。これが聴きたかったのですよ~~ 楽しい。
ここではオケと対話しながら弾く。まるで生き物みたい。
そしてカデンツァ。ここがもうすごい! どんどんどんどん超高速になっていってものすごく速く弾いて度肝を抜く。アクセル全開のツィンマーマン。
ようやくオケにつかまった~ 大団円。
大拍手。拍手なりやまず。
▼ツィンマーマンのアンコール
JSバッハ パルティータから"サラバンド"第2番
だそうです。
ツィンマーマンが終わって、さあ帰ろうか、もういいお腹いっぱい、という気分だった。しかしまだある。
3、ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95「新世界より」
この曲はとても有名でとてもわかりやすくてとても良くできています。まるで叙事詩のような曲です。うるさいです(笑)。でもすばらしい。
第1楽章: アダージョ アレグロ モルト
ホルン! 金管!
第2楽章 : ラルゴ
一番有名な部分「遠き山に日は落ちて」です。イングリッシュホルン。オケ的にはつまんない部分です。金管がないから。
第3楽章:スケルツォ
ベートーベンの第9にすごく似ている部分があります。ダンダンというティンパにのところ。
第4楽章: アレグロ コンフォーコ
ここはJAWSにくりそつで笑えます。いやーすばらしい、ハーディングさん。ハーディングさん若々しい指揮です。とにかくモーションもドラマチックで音楽もドラマチックでマックス!という感じです。
最後の音が消えてすぐ拍手。これにはムムッ。客は、指揮者が後ろを向いて手を上げているときに拍手してはいけない。まだ曲は終わってないのだよ。余韻というものも音楽のうちなのだよ。
終わって振り向いたハーディング、笑顔がありません。表情が硬いまま袖に消えます。しかしコールが何度も繰り返され、笑顔も出ました。イングリッシュホルンを立たせてねぎらいます。それから木管を称えます。
何度も続くカーテンコール。どの演奏者よりも若く見えるハーディングさん。大変でしょうね。
誤解を承知で書きますが、きょうのヴァイオリンコンチェルトはマンチェスターユナイテッドのロナウド。ソリストが主役。ヴァイオリンが主役。
「新世界」はモウリーニョのチェルシー。指揮者がすべてを仕切る曲です。この曲は簡単なようで難しいかもしれないですね。
Related
ハイティンク指揮ドレスデン国立管弦楽団演奏会
* ---
ベートーヴェン20世紀指揮芸術の探求