ドレスデン歌劇場来日公演
「タンホイザー」Part3
※内容を書きますので、ご覧になる予定の方はできれば読まないようにしていただければ… 特に第3幕は衝撃的展開なので…
第3幕
序曲。あのキリスト?の絵がずいぶんちっちゃい大きさになってしまって照らし出されている。
第3幕のセットは暗い。あの弓なりになった半円のボードは残されている。その背後に金属のひな壇。
一番背景に骨組みだけになった階段。
エリーザベトが絶望に満ちて立っている。
ひな壇の上にヴォルフラム。
「彼女の願いがかないますように!
彼女の心の傷はいえることはないが、少しでもその痛みが軽くなればいいのに…!」
ヴォルフラムとエリーザベトは向かい合う。まさに口付けしようとするが、直前でエリーザベトはやめる。
(もういっそ、彼のことを忘れてヴォルフラムに身を投げ出してしまおうか?)
(そうすれば幸せになれるのに。)
でもエリーザベトはその気持ちを抑える。
こういう展開なのでヴォルフラムはもっと若い人がよかったんだよ~
巡礼たちが現れる。ローマに行って、救われたはずの巡礼たちは、全員目が空洞になっている。目にピンポンだまのようなものをつけて、眼窩が黒くなっている。彼らは何も見ないことを学んだのか?
その彼らたちの中からハインリヒを探すエリーザベト。
いない。
彼女は死を決意する。
ヴォルフラムと堅く抱き合い、退場しようとする。
そんな彼女を引き止めるヴォルフラム。
「僕もついていってもいいですか…?」
エリーザベトは立ち止まると引き返し、ヴォルフラムの手を引いていく。
ヴォルフラムは座り込む。その足の間にうずくまるエリーザベト。
彼の剣を手にする。
「空が黒く染まり…」
と歌いだすヴォルフラム。
普通ならこの時エリーザベトはもう退場しているが、この演出では、彼女はヴォルフラムと共にいる。彼の大きな剣を手に取り( )。
そして夕星の歌。
「彼女の魂をお導きください。」
エリーザベトはそろそろとヴォルフラムの手を取って( )。
エリーザベトは( )。
ヴォルフラムが( )した。
これが究極の、ヴォルフラムの望んでいた形だったのかもしれない。これがヴォルフラムの愛の形だったのかもしれない。
しかしそこにお邪魔虫が。
舞台の上手から這いずって出てくる人物。
「ハインリヒ!」
もう帰ってこないと思っていたのにこの身勝手な恋敵が帰ってきた。もう何もかも遅いのに。エリザベートをハインリヒのコートで隠すヴォルフラム。
「ローマには行ったのか?」
こっからのギャンビルさん、ほんとにすごかったです~
すごすぎる。
「俺に近づくな!」と言いながらヴォルフラムの肩を掴んで荒々しく揺さぶる。
「俺は呪われてるんだからな!」目には狂人の光が宿っている。
えんえんと始まるローマ語り。
ギャンビルさんがせつなくて、狂おしくて、せつなくて、苦しくて、もうたまりませんでした。彼には絶望が似合う。似合いすぎだ。
「私には救いが与えられなかった!」
「この樹に生命が宿ることがないように、お前も未来永劫救われない!」
(と言われた。)
頭を抱えるヴォルフラム。
「もう俺はヴェーヌスベルクに行くから。」
あのバッカナールのメロディーが甦る。背後の階段を下りてくる酔っ払いの汚い女。ヴェーヌスだ。赤い見事なかつらも毛皮も失くしている。手には飲みかけのウィスキーのビン。ラッパ飲みしながらふらふらと千鳥足で階段を下りてくる。ここのヴェーヌス(エヴリン・ヘルリツィウス)、さいっこうでした。
彼女はもしかしてヴォルフラムがタンホイザーを破滅させるためにやとった場末の女か? そんなことすら思ってしまう。ヴォルフラムも上着を脱いで緑色のタンクトップ姿になっている。
タンホイザーはウィスキーの瓶を受け取り、自分もラッパ飲みする。この飲み方がうまいんだよね~ギャンビルさん。彼も酔っ払ってもうふらふらになっている。
タンホイザーがヴェーヌスを抱擁して口付けしようとした瞬間、ヴォルフラムが叫ぶ。
「エリーザベト!」
コートを剥ぎ取る。
「エリーザベーーーート………」
絶叫するハインリヒ。
彼女に駆け寄る。
ヴェーヌスが近寄ってきて、エリーザベトの上体を起こして胸に掻き抱く。その横にうずくまるタンホイザー。背後に座るヴォルフラム。
タンホイザーは静かに( )
人々がなだれ込んでくる。
手にはみんな十字架のような形をした大きな剣を抱えている。キラキラとまぶしい。
舞台の上の方に、芽吹かないと言われていた杖(枝)に葉がついているものがある。
ヴォルフラムは人の波をかきわけ、上に上に上っていく。階段を上に。彼はどこに行くのか?
結局ヴォルフラムの一人勝ちだったのか?
それともヴォルフラムはこんな世界に嫌気がさして、旅立ったのか?
全幕了。
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最終更新日
2007年11月18日 00時41分57秒
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