土曜日に帰国後初のソロリサイタルを開いた小堀勇介さん。「名古屋のおやじ」さまが感想を寄せてくださいましたので、ご許諾を得まして掲載させていただきます。
コンサートの曲目などは
こちらをご覧ください。
以下は転載です。
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びわ湖ホールで見聞きした小堀さんの『連隊の娘』のトニオが素晴らしかったので、是非とも彼のリサイタルを聴きたいと思い上京しました。どのような曲を歌うのか、事前には発表にはならず、会場で配布されたプログラムを見て、初めてそれを知りました。我が目を疑いました。難曲揃い。昨今人気のフィギュアスケートのプログラム構成で言うなら、4回転ジャンプのオンパレード。また、今回のリサイタルの会場は、残響がほとんどなく、歌手にとっては恵まれた場所とは言い難く、その実力がむき出しになるなあと思いました。その懸念は杞憂に終わりました。
小堀さんの今回のリサイタルにかける意気込みは、モーツァルトの『イドメネオ』のアリアを1曲目にもってきたことからも窺えました。あのアリアには、2つくらいヴァージョンがあって、彼が選んだのはもちろん難しい方。1曲目ということもあり、蓄音機時代の有名なヘルマン・ヤドロースケルの録音(ドイツ語ですが)のようには、さすがにいかなかったけども、あれだけ声を転がすことが出来れば立派だと思いました。でも、彼の本領が発揮されたのは、間違いなく、その後のイタリアで研鑽を積んだロッシーニ。圧倒されました。『セミラーミデ』や『オテッロ』からのアリアの歌唱の凄まじさ!これらを実演であれほどの高水準で聴かせていただき、ありがとうございましたと言うしかありません。超高音も素晴らしいものでしたが、アジリタの声の粒を、きっちり聞かせようとしていることに好感を持ちました。
イタリアとフランスのオペラを軸に活動していきたいということで、マスネやグノーのアリアも歌われましたね。これらは学生時代の卒業や修了の試験の時に歌ったものだそうですが、それらからは、今後の課題も少し窺えました。日本人がフランス語のオペラを歌う場合、イタリア語以上に、言葉の響きに慎重になる必要からか、そちらの方に注意が行き、ちょっとピッチがぶら下がり気味になる傾向が気になりました。
アンコールはもしかして『セビリア』の伯爵の大アリア、あるいはニコライ・ゲッダの歌で有名なアダン(あのバレエの『ジゼル』の)が作曲した『ロンジュモーの御者』からのアリア(今回のリサイタルで使われたDあり)でも歌うのかと思ったら、日本歌曲でしたね。歌心に満ちた歌唱で、小堀さんがテクニックだけの人ではないことが、よくわかりました。ピアノの伴奏も好演。聴きごたえ十分なリサイタルで、名古屋への帰りの新幹線の中で飲んだビールが本当に美味かった。
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ありがとうございました!!!