テーマ:本のある暮らし(3285)
カテゴリ:読書日記
海音寺潮五郎。
高校生のころ、「燃えよ剣」を初めて読みました。乙女らしく沖田総司に惚れ込んで、いろんな沖田くんを求めて幕末物を手当たりしだい読みました。最後、結論として、「私が好きなのは『燃えよ剣』の沖田総司であって、ほかの沖田くんにはイマイチ魅力を感じないわ、」だったのですが、ひとつ、印象に残った沖田くんがいます。 京都の白い道を佐久間象山が馬にまたがり歩んでいる。いつか斬らねば成らぬ人。緊張に刀を握る沖田の前、単の着物を着た小柄で色白な侍が象山の側すっと寄り、さらりと象山を斬って沖田の前を去る。いっそ少年に見まごう美貌。水が滴る冷たさを思う。 そんな場面。二人の美剣士のすれ違い。やっぱり司馬の小説かなあ。船山かもしれない。アンソロジーで読んだかな。短編でした。それは覚えているんだけれど、沖田は出てきてないかもしれない―・・・彦斎だけしか出てきてなくて、彦斎の容姿の描写に、沖田を思っただけかもしれない。 小柄な暗殺者の、凍るような美貌は脳裏に鮮やかです。・・・白刃がきらめき、見たことのない血しぶきに酔う。 海音寺の書く彦斎も、やっぱり顔のきれいな人みたい。だけど話す言葉が肥後弁なので、あんまり自動人形のような凍った美貌が浮かびません。もっとまろみがある。だけど性格はとっても悪くて、松代藩で交わす会話がスリリング。そうして最後、「人切り彦斎」が人であることを思い出させてくれる場面をさらりと描写して、幕がおりる。天晴れ! この彦斎は、この彦斎で好きだなあ。 (ところで私のまぼろしの美少年・彦斎はどこにいるのだろう。なんだかもどかしいけど、読みかえして確かめるのも少し怖い。もろくて完璧な私の記憶。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書日記] カテゴリの最新記事
|
|