カテゴリ:読書日記
ケストナー 岩波書店
ときどき、無性に読みたくなるお話。うすみどり色の鉛筆なんか見ちゃったら、もういけない。 夏草のなかで、牛のお迎えを待ちながら小説を書くケストナーになった気分になってきちゃう。なくした鉛筆は、もしかしたら、子牛が草と間違えて食べちゃったのかもしれないな、なんて。 夕焼けを待つ、気持ちする。カラスが鳴くから、帰りましょ。 吉野朔美の「お父さんは時代小説が大好き」の中で、「飛ぶ教室」ほど泣ける話は珍しいって対談がありました。 (そんな泣ける話だっけ?) 少年たちのクリスマスの話。喜怒哀楽さまざまな事件が起こるけれど、最終的にはハッピーエンド、しみじみ本を抱きしめてほっとするような物語だと思っていたのだけれど。 「かしこさのともなわない勇気は不法です。勇気のともなわないかしこさは、くだらんものです!」 今回はやられました。この12章からなる物語の8章からずっと泣きっぱなし。どーしたんだ、私。 多分、今までは特定の少年に感情移入して読んでたからだと思うのです。臆病で本読みの私は、どうしてもウィリーとヨーニーの気持ちに同化しやすくて。 今回はじめて、小説の中の一人に同化するわけでなく、少年たちを眺める読者として物語を読んだ感じ。そしたらもう。もう、もう、もう。 当事者じゃ気づかない、小さな交流や渦巻く感情、無神経な言動と胸をつかれる反省がどんどんと押し寄せてきて、たまらない。 「心配しないでくれたまえ。ぼくはひどく幸福じゃないよ。幸福だといえばうそつきになるだろう。しかし、ひどく不幸でもないよ。」 魔法を使えない少年たちの当たり前の毎日が、凍る夜空の星のように手の届かないところに架かる。 100年も前の光だって、ちゃんと届く。夜道を照らすほど、明るくはなくっても。 消えないで、光る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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