テーマ:本のある暮らし(3301)
カテゴリ:読書日記
橋本紡 光文社
すうっと手の中に入ってきた本。 ひといろではない、いろいろを重ねた装丁も、糸へんのついたやわらかな作家名も、もろくほどけたひらがなも、地味を承知で呼ばれた気がした。 (好きだよね、とおりさん。) (こういうはなし、好きだよね。) 読み終わって、返事する。 そうだね。好きだよ。 「働く女なりの野心や見栄はある。けれど偉くなるためにすべてを捧げる覚悟があるかと言われれば、そこまでの気持ちはもう持っていなかった。ちょっとおいしいものを食べて、好きな人と手を繋いで歩いて、あとは週に一冊か二冊本が読めれば、わたしはそれでよかった。働くのも苦労するのも嫌いではないけれど、だからといって月に二、三日しか休めない暮らしなんてしたくない。」 そうだね。 したくないね。 友達のひとりごとを聞くような、感じ。 私はもう少しがんばろうと思っているけどさ、自分がおかしくなっていない自信なんか、ないよ。 君はくたびれたから、一足さきに、休むんだね。 だいじょうぶ。 今までいっぱいがんばったんだから、休んだって、だいじょうぶ。 私が休まないのは、まだそこまでくたびれていないからだし、退職を決める勇気がないからだよ。 あなた一人ぶんの居場所なんて、この空の下、いくらでもあるんだし。 弱くても脆くても、人にめいわくかけないように暮らしていくんなら、自分の心にくらいはわがままになっても、良いと思う。 (またね。) つぶやいて、本を閉じる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月03日 14時38分47秒
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