御手洗潔対シャーロック・ホームズ
柄刀一 原書房(と、書いて、そうか原書房か……と納得しちゃった。)なかなかケッタイナ本でございましたよ。ええ、これは誉め言葉でございますのよ。本家が偉大なパスティーシュ小説ならば、どれだけ「???」と思わせるかが勝負でございましょう。ホームズだけじゃなくて、御手洗くんもなんだもの。それでもって、ちゃんとミステリ。語り手は石岡くんと、ワトソンさん。いや、素晴らしい。タイトルの「緋色の紛糾」とか「ボヘミアンの秋分」とか、楽しいでしょう?ええもちろん、ホームズとワトソンの話でございますのよ。バリツに憧れ日本に親和を感じてくださったホームズさんが二子玉川221Bの鳩村夫人の下宿に暮らしてくださっているのですよ。日本警察に協力してくださっているわけですよ!もう、どこで笑ったらいいのか、迷いました。大真面目に読む方が正しいのかな。よくわからないよ。御手洗くんと石岡くんのお話は龍臥亭事件の後の冒険。二人が揃っているだけでうれしくてたまりませんでした。なんだかね、御手洗くんが、シリーズ初期の頃のような石岡くんに対する優しさを取り戻していて違和感があるの。これ、目覚めたら全て石岡くんの夢だったらどうしようと本気で心配しました。もしそんなことだったら、石岡くん、泣いちゃうじゃないかあ。(って、石岡くんももう50代のおじさんでしょう……私の想像中では永遠の30代なんですけど。もう「占星術殺人事件」から20年くらいたっているのよね、たぶん。)おっと、御手洗ものも2本あります。「青の広間の御手洗」「シリウスの雫」。御手洗くんがノーベル賞候補になりかけていたりして、現実なめんなよ、と口汚く思ってしまったことはここだけのヒミツ。私は初期の頃の、非生産的な御手洗くんが好きなのですよ。なんでもできるくせに、占い師なんかやっていた、キテレツな彼。下手にノーベル賞とっちゃうよりもリアリティのある超人で好きだったのになあ。(遠い目。)最後、5本目の短編が「巨人幻想」はい、これで、豪華、4人の揃い踏み!謎は島田荘司ばりの力技。なので、弱冠、御手洗くんの方がホームズより賢い印象がありました。なーんて、比べることは野暮ですけどね。御手洗読んだことがある人は、ホームズ読んだことあるでしょう?暗闇坂あたりまでが好きだった人には、特におすすめです。全部読み終わってから、巻末の島田荘司による解説、石岡くんとワトソンさんの書簡交換をどうぞ。これまた見事なパステーシュになっています。(いや、島田荘司の書く石岡くんは本家か。)柄刀が書いている相棒二人には知性の退化現象は起こっていないと思ったのになー。島田荘司が書くとどうもなー……。なーんで、石岡くんって、こんなにかわいいんでしょ!↑ひさしぶりに読み返したくなっちゃったよ。