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† Ano i ne. Proboha! †

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2006年02月18日
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カルル・アンチェルはチェコの生んだ大指揮者である。


 しかし、1968年の「プラハの春」事件で亡命し、カナダで不遇の生涯を終えた。最後に幸福な生涯を終えることができた、ラファエル・クーベリックなどとは異なる彼の人生は、本当に波乱万丈であった。


 さて、話は2000年にさかのぼる。アンチェルの墓が、プラハのヴィシェフラード墓地にあり、彼は無事に埋葬されているとの情報をキャッチしたのである。

 そこで、昨年8月5日、たけみの誕生日にヴィシェフラード墓地を訪れたのだが、確かに59番の番号にアンチェルの墓はあった。しかし、その胸像はなんと首から上がもぎ取られていたのである。なんという悲劇的な…

 他の国家的音楽家とはあまりにも異なる、アンチェルの扱いに対し、もちろんカナダの地で人生を終えたことなどの問題はあるというものの、あまりもの出来事に言葉を呑んだ。


 ところで、彼の多分最後の、スメタナ「わが祖国」の演奏もまた、あまりにも彼の人生を象徴するようなとんでもない録音である。これは1969年8月8日ボストン交響楽団を振ったものであるが、夏の野外ステージでの演奏であった。ボストン交響楽団が、夏にボストンポップスを編成し、野外ステージでも多くの演奏を行っていることはさておいて、なんとこの「わが祖国」は第3曲「シャルカ」の最後で雷鳴が轟きはじめ、第4曲「ボヘミアの牧場と森から」の途中からは「雷雨」の中での演奏となる。しかし、最後の第6曲「ブラニーク」まで演奏を無事に終えているが、この雷や豪雨の様子がはっきりと聞き取れるのである。

 たとえば、グローフェの「グランドキャニオン」のディスクで、カンゼル指揮シンシナチポップスオーケストラ(テラークから発売)の演奏では、終曲の「豪雨」で、雷鳴の効果音を重ね録りしたトラックが、通常の演奏バージョンとともに別に収録されている。このような企画であるならば、時々は起こることであろう。

 しかし、本物の雷雨の中で、アンチェルが演奏した「わが祖国」の録音(正規発売はされていない)はあまりにも悲劇的で、彼の天国での栄光を祈るばかりである。


 旧東側の音楽家が、生涯を賭けて政治制度と闘った、その歴史の重みを後世のわれわれは決して忘れてはならないのだと、改めて思った次第である。

 プラハやブダペストには、現在日本人留学生が溢れている。しかし、このような歴史の結果得た、自由と権利と、そして音楽三昧を肝に銘じつつ、今後も頑張りたいと念願している。自由を得ることはとても困難であり、幾多の悲劇を経て獲得したものである。しかし、自由を守る努力を、自由を享受している私たちは、どれだけ実行しているのであろう。今後も自由を継続し発展させるために、もう少し過去の歴史その他の事象を、見つめなおすときも偶にはあってしかるべきであると思うこのごろである。





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最終更新日  2006年02月18日 22時33分41秒
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