タケの「夢と勇気とサムマネー」

■本多博士の「四分の一貯蓄法」　－　渡部

私は『財運はこうしてつかめ』（致知出版社）という本で
「人生の達人」といわれた本多静六博士のことを書きました。

極貧から身を起こして東大初の林学博士になった人ですが、
東大教授でありながら巨万の富を残したことでも知られています。

一時は淀橋区（今の新宿区）一番の高額納税者になったことも
あります。

晩年は老夫婦が暮らしていけるだけの資産を残して、
その他はすべて公益事業に寄付した。

今のお金で何十億円か何百億円に相当するはずですが、
この本多博士が提唱したのが「四分の一貯蓄法」です。

給料の四分の一は使わないで貯蓄する。

それを元にして巨富を築いたのです。



■一回の大金より小さな金の積み重ね　－　大島

それはすごくよくわかります。

三井物産に入って２年目のことです。

日本硝子のインシュレーター（絶縁体）のオーストラリアにおける
部分的エージェント権を物産がもっていたのですが、
とても細かくて手数がかかる仕事だったので、
誰もやりたがらない。

そうしたら私がその担当者にさせられたのです。


このプロジェクトを担当して、私は２つのことをやりました。

まず、全オーストラリアでたった一州しかなかった日本碍子の
エージェント権を全豪州に拡大することです。

他の各州の代理権は三菱商事と兼松江商が持っていたのです。


当時は前に申し上げたニクソン・ショックの最中で、
日本硝子もドル建ての約定残を抱えて、為替リスクに右往左往
していました。

そこで、私は日本碍子の経理の女性と仲良くなって、
ドル建て約定残の金額を聞き出しました。

そうしましたら、さほど大きな為替リスクがあるとは
思えないほどの金額だったのです。

そこで私は上司の課長と部長代理を連れて日本碍子に行き、
「御社の対オーストラリア向けドル建て債権の為替リスクを
全額当社が引き受けます。
その代わりに対オーストラリアの全エージャント権を下さい」
とやったのです。

作戦は見事に成功して、全エージェント権を三井物産が
手にできました。

計算されたリスクを取ることによって、それ以上の利益を
取ることに成功したわけです。


二番目にやったことは、とにかく手間がかかってしようがなかった
碍子の輸出手続きを合理化・簡略化することでした。

書類作りを担当していた女性に
「なぜこんなに手間がかかる書類仕事が必要なのですか」
と聞いたところ、
「三井物産ではこれが常識なの」
と言いました。

「常識にしては手問がかかりすぎませんか」
と言うと、
「常識だから常識なの」
とおかんむりです。

これにカチンときて、「ようし輸出作業をシステム化してやろう」
と決心しました。


当時土曜日は半ドンだったのですが、自宅に帰っていったん寝て
１１時に起き、それから朝の６時頃まで、三井物産の輸出関連の
書類を一つ一つ解明していきました。

そうして、引き合い、見積、受注、出荷、代金回収といった
一連の仕事をすべてマニュアル化することができました。

書類のブランクを埋めていくだけで、書類仕事が完了してしまう
ようにしたのです。

こうして、かつては誰もやりたがらなかった碍子の輸出という
細かい仕事が何十億円という規模の仕事となったのでした。


一基数百億円という発電所のプラント輸出のような大仕事も
大切だけれども、細かい商売の積み重ねで日銭を稼ぐのも
大事だなと、その時思いました。

だから、一回こっきりの大きい金と、小さな金の積み重ね、
さあどっちを取ると訊かれたら、私は迷わず後者を選びます。

ビジネスには大博打も時には必要ですが、日々の小さな積み重ねは
それ以上に大事だと思います。


ホンダ自動車の創業者である本田宗一郎さんは、
一時新聞で人生相談をされていたことがありました。

「自分は自動車の修理工場をやりたいのだが、
お金が足りなくて始められない。
どうしたらいいのか」
という相談があった時のことです。

本田さんは
「まず持っているお金で自転車の修理屋さんを始めなさい。
それでお金を貯めたら自動車修理工場を始められますよ」
と答えたそうです。

小さな仕事から始めて大きくしていくことが重要ですね。

本田さんはそれをよく知っておられました。



『異端の成功者が伝える億万長者(ビリオネア)の教科書』（渡部昇一氏・大島健伸氏共著）より