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2、3年前に小石原昭氏を我々の小さな研究会にお招きして
一夕お話をうかがったことがある。 小石原氏は企画集団・知性コミュニケーション代表で、 編集者の世界では大御所のような方である。 どういう話を聞けるかと楽しみにしていたら、意外にも 消費者金融の意義から現代風俗について斬り込まれた。 今、記憶にしたがってその要旨を述べてみると 次のようなものだった。 「消費者金融というと、かつてのサラ金を連想し、 暴力団を連想するかも知れないが、今は全く違っている。 たとえば若者が恋人とクリスマスを愉快にやるという 計画を立てる。 ところが5万円足りない。 それで消費者金融に行く。 その場合、金利は問題にならない。 たとえば年金利100%でも月に割れば8.3%ぐらい。 金額にすれば4000円ちょっとだ。 この借金は翌月の給料で返すことができる。 昔のように伯父さんのところに行って5万円借りよう と思ったら大変だ。 足代を使い、5000円ぐらいの手土産を持ってゆき、 しかも説教される。 それでも貸りられるとは限らない。 それにくらべると消費者金融は至極便利なのだ。 それは長期にわたって借りるお金ではない。 それでも問題を起こす人は、そもそも誰からも金を借りては いけないタイプの人なのだ・・・」 私は目を開かれる思いがした。 小口の金融を、ヤミ社会が支配する恐ろしい金融から 切り離したのは、正に消費者金融だというのである。 そのうち大銀行も消費者金融と業務提携をやるということが 新聞やテレビで報道された。 消費者金融とはいわゆるリテイル・バンキングのことで、 これならヤミでも恐ろしくもないもので、以前から日本の 銀行界に求められていたものである。 かつての「こわいサラ金」とは異質のものだったのだ。 その後、バブルが強引にはじけさせられ、銀行が貸し渋り、 貸し剥がしをやり出した頃に、商工ローンがマスコミの批判 の対象になり、国会でも取り上げられた。 かつての「サラ金地獄」が中小企業で行われている印象を 国民に与えた。 「目ん玉を売れ、腎臓を売れ」という取り立て方が行われている と報道され、「商工ローン地獄」が横行しているようだった。 それからしばらくして、別の小さな研究会で元経済企画庁長官 だった堺屋太一氏が、 「あの時、政府が商工ローンを弁護してやらなかったのが残念です」 という主旨のことを発言されたのを聞いて「ハッ」と思った。 商工ローンというのは、中小企業向けの消費者金融みたいなもの だったのではないかと考えたからである。 その後、加納明弘氏の『誰が「商工ファンド」を潰そうとしたか』 を読む機会があり、私が堺屋さんの話を聞いた時に考えて いたことが正しいことがわかった。 あれだけ社会的に騒がれた商工ローン・バッシングの結果、 逮捕・起訴者が出たのは、日栄から4件5名(実刑1件)、 商工ファンドから1名で執行猶予付きである。 特に商工ファンドでは書面の不交付に関する私文書偽造の件が 1つあっただけで、債権回収関係では一つの事件もない。 つまり違法な脅迫的取り立ては一件もなかった。 商工ファンドの大島健伸氏は議会に2度も呼び出されて 証言している。 しかもテレビ撮影も入った。 「悪徳金貸し」の姿を全国民の前に示して、国会議員の前に ひれ伏す姿を見せたかったものと思われる。 宣誓して証言台に立った大島氏は「世間をお騒がせしました」 と頭を下げることもしなかったし、のらりくらりと質問を 受け流すこともなく、 「私どものお客様からは今もって頑張って下さいという声が 強いのです・・・ そして今後とも、本当に商工ファンドがお客様のためになることを もっともっと追求していきたいと思います。」 で証言を終わっている。 むしろ大島氏は、議員たちとの論戦におけるはっきりした 勝者であった。 もちろんこれまでの議会証言者の多くがたどった道、 すなわち逮捕から起訴に至ることにならなかったことはもちろん、 メディアや債務者弁護団からさえも刑事責任を問う声は 上がらなかった。 一方、大銀行のトップでもヤミの勢力に脅迫されることがあったり、 何兆円もの税金を注ぎこまれながら外国人の手に渡った銀行も いくつかあった。 しかし商工ファンドは税金も使わず、ヤミの勢力とも組まず、 法律にも触れずに成果を上げ続けてきた。 堺屋さんでなくても、政府は進んで商工ファンドを弁護し、 銀行ができないでいることをやるように励ましてやるべき だったのである。 ビジネス社の岩崎氏に商工ファンド(現SFCG)の大島健伸氏と お会いする機会を与えられた。 話してみると大島氏は正に「立志の人」であり、 国際金融の世界でも外国の金融家たちに負けないで やっていける人であろうという印象を受けた。 大島氏と私は全く関係のない分野の人間であるが、 私は「志を立てた人物」を尊敬する。 分野は個人の資質や好みなので、大金融業者になろうという志でも、 辞書をつくろうという志でも、幼児教育をやろうという志でも いずれも尊いと思う。 日本で金融の本当の創業者になった人は明治以来稀である。 世界が単一マーケットになった時代に、金融で大をなすには 官僚的発想やサラリーマン的発想では足りないであろう。 大島氏の大望が実現することを日本のためにも心から祈る 次第である。 この稀なる立志の人と語り合う機会をつくって下さった 岩崎氏に御礼申し上げます。 平成16年10月 渡部昇一 (終) 『異端の成功者が伝える億万長者(ビリオネア)の教科書』(渡部昇一氏・大島健伸氏共著)より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.02.11 08:45:58
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