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『善をなしてその益を見ざるは、草裡の東瓜のごとし、
自ずからまさに暗に長ずべし。 悪をなしてその損を見ざるは、庭前の春雪のごとし、 まさに必ず潜かに消ゆべし。』 (善行を積んでも、その成果が見えない時があるが、 それは草むらに陰れている瓜のようなもので、 人知れず成長していくものだ。 悪事を重ねても人に知られず、得たものも失わないですむ こともある。 しかし、それで得たものは庭先の春の雪のように、 いつの間にか消え去る。) いろんな輩がいる。 会社の利益を隠し秘密預金を増やしていったまでは良かったが、 それを使うわけにはいかず、使えば秘密がばれて加税される。 預金を引き出したくても引き出せず、終わりはインフレ目減りで 悔いを残している。 会社の資金で土地に投資して儲けるはずであったが、 会社まで潰している。 公金を横領して馬まで買ったが、今は獄舎で馬鹿を見ている。 会社のカネで美人を得たが、美人には逃げられ、 自分はつかまっている。 そんな、川柳にもならない向きもあるが、本項では、 「庭前の春雪のごとし、まさに必ず潜かに消ゆべし」とある。 悪をなして消えないことは少ないもので、 悪をなして利を得るよりも、善をなして利を得ることの方が はるかに利は大きくなるものである。 その昔、私がある会社へ入った頃である。 ある幹部から、面接試験でもするかのように 入社の抱負を聞きたいといわれ、 「この会社が2ケタの法人税を納めることだ。」 「ケタは何だ? 万単位なら10万が2桁だが」 「いや、ケタは億だ」 「10億円ということか」 「そうだ」 幾日か経って私の耳に入ってきた文句が 「とんでもない人間が舞い込んできたものだ。 税金を多く納めることを生き甲斐としている。」 そこで言っておいた。 「法人税などというものは会社発展への通行税のようなものだ。 多く納めることは、それだけ会社が発展している証拠だ。 2ケタどころか3ケタでも4ケタでも多く納めることを 考えるべきだ」 たとえば松下幸之助さんが創立した松下電器産業は、 当初は電気器具から出発した零細企業でしかなかったが、 もし松下さんが法人税を惜しんでいたとすれば、 今日の松下電器産業がこの世に現れることはなかったろう。 かつて私は、ある会社の経営相談に応じたことがある。 もちろん気息奄々としていた会社であった。 そこまで落ちぶれてしまった原因は、 その経営者の父親にあった。 その会社は出発当初から経営は順調で利益も相応に 計上していたが、次第に納税を避けるようになり、 期末に利益計上の見込みが立つと、 現社長の父親の先代社長、それに叔父に当たる専務とが 海外視察旅行に行くことにしていた。 つまり、旅行でその期の利益見込額を使ってしまうわけである。 これなら利益なしで、納税の必要もなくなることになる。 しかし、納税の必要はなくなったが、 結局会社が呼吸をする必要もなくし、息絶えることになる。 私が銀行の課長当時、新時代対応のための計画の立案を 命じられた時、「行員教育制度」を提案したところ 労組からは猛反対を受け、一部の幹部からも反対された。 組合に対抗するための教育だろうという理由もあれば、 学校教育をすべて受けている人間に今さら教育の必要も あるまいというのもあれば、 まじめな人間を選抜して入行させているのに、 経費をかけて屋上屋を架すようでは世間の笑いものになる、 などといった反対であった。 これらに対して私は、行員教育が世間の笑いものになる と言っている人間を教育するための制度だ、 とやり返したことがある。 (『菜根譚』を読む 井原隆一著より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.07.02 02:00:53
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