奈良と京都では寺院の建築様式が違います。奈良は中国から伝来した建築スタイルを強く残しています。一方で京都(平安京)は長い間、東寺と西寺(いまはありません)のみしか寺院の建立を認めませんでした。比叡山、高野山、本願寺など京都から少し距離を置いたところに寺院があります。そのため、今の京都の寺院は神社であった場合が多く奈良に比較すれば神社風、もしくは新しい建築様式が多いのです。そのためか、京都の寺院では和風を感じます。
完全に観光地化した京都の和風寺院が現代の私たちにとっての規範であり、奈良の寺院が少し異質に見えます。しかし本来は逆です。薬師寺の建物が再建されたものであっても、なぜか不思議に京都より新鮮に見えても、日本に伝来してきた古代仏教建築の美しさを伝えています。少し中国の雰囲気を感じるところが奈良の寺院の魅力です。
薬師寺もそうですが驚くほどに広大な敷地を持っており、当時の仏教が強い勢力と所有地(荘園)を維持するために強い武力(自衛団)を持っていた事が想像できます。薬師寺の食堂も巨大だったようで、たくさんの人たちが寺院で暮していたようです。当然僧侶がそんなに大量にはいなかったはずですから、ほとんどが軍事訓練された僧兵だったはずです。
このように巨大な薬師寺でさえも、奈良の巨大勢力である東大寺と興福寺に及ばなかったのですから(同じグループですが)奈良時代から戦国時代までの寺院の武力と政治力はすごかったのですね。