瓦は中国から飛鳥時代かその前に伝来し、質の高い建築材として今でも日本の屋根の上に存在します。奈良には飛鳥時代からの瓦が残っており、台風や火事にも強い優れた機能を持っている事を証明しています。瓦は甍(いらか)と書くこともあります。夢という字と瓦という字が合体したような素敵な漢字です。波打つ甍や鬼瓦は被写体としての魅力もすばらしく、今では旅先ですぐに屋根を見てしまう癖ができてしまいました。
魔よけの意味を持つ鬼瓦ですが、個人的な感想として時代によって特徴があるようです。天災などが多い時は鬼瓦の表情が文字通り鬼気迫るものとなりますが、平和な時代の鬼瓦には鬼さえ姿を見せず、獅子舞や単なる幾何学模様になることもあります。奈良時代や平安時代は戦争の少ない平和な時代なのですが、一方で政変が激しく天皇家の周りに陰謀渦巻く時代でした。そのためか訪れる天災を祟りと恐れ、鬼瓦も表情が厳しくなっています。
瓦には千年を超えて使われるものがあり、その上に落ち葉が降り積もり長い年月で腐葉土となって苔などが生えることもあります。わびさびというと少々言葉の使い方を間違えてはいるのですが、日本らしい伝統的な美しさが歴史の中で今でもゆっくりと育っています。
日本文化のよさは若い日本人より海外の人々に高く評価され、日本の至るところが世界遺産化されています。朽ちたお寺が世界遺産と言われ日本人が首をひねることさえもあります。国宝と世界遺産のギャップを感じる事もあります。