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カテゴリ:専門病院
止まった時間 妙なことを言う医師だと思っていると、突然私の部屋に患者が飛び込んできた。追いかけてきた看護士がつまみ出そうとするのを医師が制した。 「ちょうどいい。しばらくこの部屋にいてもらおう」 その一言を聞いて患者は無邪気に笑った。 「この男の時間は30年前で止まっている」 「くそっ、山田等め」 「ずっとあれなんだ。30年前に言われた一言が未だに忘れられない。その一言で、それ以上学問もできず、職に就くこともできなくなったんです」 「その山田等とかいう人に、そんなひどいことを言われたんですか」 「客観的にみれば、そう取り立てて言うほどのことではないんですが、本人にとっては、それで人生が終わってしまうほどのことだったんですね」 男は静かになった。医師のそのことばを聞くたびに男は慰められるらしかった。 それにしても、男の人生を30年前で止めてしまったことばとはいったい何なのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.01.07 23:46:23
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