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2021.09.26
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カテゴリ:気になる本
図書館で『そのうちなんとかなるだろう』という本を、手にしたのです。
内田先生にしてはふざけたタイトルの本であるが、中をめくってみると、なんと自叙伝になっているがな・・・
この明晰な先生(思想家)がいかにして形成されたか、興味深いのでおます。


【そのうちなんとかなるだろう】


内田樹著、岩波書店、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
やりたいことは諦めない。やりたくないことは我慢しない。たどり着く場所は、結局同じだから。直感に従って生きてきた思想家の悔いなき半生記。

<読む前の大使寸評>
内田先生にしてはふざけたタイトルの本であるが、中をめくってみると、なんと自叙伝になっているがな・・・
この明晰な先生(思想家)がいかにして形成されたか、興味深いのでおます。

rakutenそのうちなんとかなるだろう



『第1章』で先生の受験エピソードを、見てみましょう。
p41~45
<大検のために猛勉強>
 親に頭を下げて家に戻ったのは1967年12月です。
 翌年の元日から受験勉強を再スタートしました。半年以上「勉強」ということをまったくしていませんでしたが、大検の試験日は8月初旬。7ヶ月しか準備期間がありません。

 その当時、大学入学資格検定に合格するためには16科目で60点以上をとることが必要でした。僕が高校2年までに履修して受験免除になった科目はわずか3つ。ですから、13科目の試験勉強をしなければならない。

 試験そのものは高校受験に毛が生えた程度で簡単なものでしたし、60点とれば合格です。2年前の9科目受験の都立高校の入試の受験勉強のストックがまだ残っていますから、勉強の負荷そのものはそれほど厳しいものではないのですが、それでもうっかり1科目でも取りこぼしたら、大学受験が1年遅れます。試験当日に風邪をひいても、電車がストで止まっても、「はい、おつかれさん」です。

 それでいきなりねじり鉢巻きで受験勉強に取りかかりました。午前中3時間、午後5時間、1日8時間ペースで朝から晩まで日曜も休日もなく勉強していました。

 ある日、テレビをつけると忘れがたい画面に遭遇しました。
 1月に佐世保で起きた「エンタープライズ寄港阻止闘争」(佐世保闘争)です。このニュースの画面を見て「あ、これだったのか」とため息をつきました。
 夏に僕が家を出たときは、学生運動にコミットするという選択肢は念頭にありませんでした。

 三派系全学連の皆さんが集会をしたり、綱領的なすり合わせをしていたのはたぶんお茶の水の中央大や明治大のキャンパス内でだったと思います。僕はそれと知らずにその時期、やがて華々しく政治の舞台に登場する大学生たちのすぐ横で、「何か起こらないかなあ」とじたばたしながら、毎日ジャズを聴き、コーヒーを淹れていたのでした。

 もし僕が「ニューポート」で仕事を始めたのがあと半年遅ければ、大学生たちも「猫の手も借りたい」という運動の拡大期でしたから、「そこの高校生の君、ちょっとこっち来て」と頭にヘルメットをかぶせられて、デモやキャンパスのバリケード封鎖に動員されていたかもしれません。

 幸か不幸か、少し時期が早すぎた。
 ですから、テレビの画面でヘルメットをかぶり、自治会旗を翻し、ゲバ棒を手にデモをしている佐世保の学生たちを見たときに、「あ、僕はこれに加わりたくて高校をやめたのか・・・」と気がついたのです。
 でも、時すでに遅し。親たちに「これからはまじめに勉強します」と手を憑いて家に入れてもらってまだ半月ほどしか経っていない。

 実際には、その前年の10月に羽田闘争があり、それが三派系全学連登場という政治史的転換点なのですけれど。僕は10月は極貧生活のさなかでテレビも見ず、新聞も読まずに過ごしていたので、その闘争の「画像」を見ていませんでした。

 68年1月の佐世保闘争のときはテレビのある環境に戻っていたので、ヘルメットと自治会旗とゲバ棒というものをはじめて目視して、「おお、これは」となったのです。

 そのままおとなしく受験勉強をすること7ヶ月。8月に無事に3日間にわたる大検を受験でき、10月には合格の知らせがありました。

68年の10月に同級生たちはまだ高校3年生だったわけですから、僕は高校2年生で中退したにもかかわらず、同期より半年早く高校を卒業したことになります。
 うれしくて、日比谷高校に「高校生諸君、あとまだ半年通学しないと卒業できないんだね。はい、ご苦労さん」といやがらせを言いに行って、クラスメートたちに嫌な顔をされました。

 そうはいっても、こちらは大検のために大学入試と関係ない科目にまで手を広げて勉強していたので、その分だいぶ大学受験には出遅れていました。だから、ほんとうは同級生に「いやがらせ」をしに行ってる暇なんかなかったのです。それから半年必死で受験科目に取り組みました。

 翌年69年には東大を受けるつもりでしたが、69年1月に「安田講堂事件」があり、東大入試が中止になりました。
 志望を変えて、京都大学法学部を例年にない倍率になってしまって、あっさり不合格。そこで駿台予備校に通うことになりました。

 駿台の学生証を手にして、久しぶりに「どこかの学校に帰属している」ことを書類で保証されて、ずいぶんほっとしたことを覚えています。考えてみたら、16歳の春から18歳の春まで2年間「中卒、無職」だったんですから。






Last updated  2021.09.26 00:06:13
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