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2007.02.17
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カテゴリ:日本内乱

 【日本内乱】のつづきです。

 連続殺人事件が起きた町のひとつに東明町がある。
 三寺はある強迫観念に捉われていた。

 ぼくの素性はみなに知られてしまっている。こうして街を歩いていて、ぼくの方に向かってくる者たち、店の入り口で立ち話している主婦の群れ、だれひとりとしてぼくの素性を知らない者はない。
 大学に行っても同じことが起こっている。だれもが等しくぼくとの距離を取る。だれひとりあからさまに無視する者はなく、かと言って今までのようにぼくとでなければできないような話をする者もいなくなった。
 飲みに行くときも必ず声がかかる。測ったように均等にぼくのことが話題にのぼって消える。必ず何か意見を求められ、それに答えて少し盛り上がったところで、いつの間にか、ぼくは話題の外に消えている。
 こんなふうに扱われるのは、考えようによってはだれからも無視されるよりも辛い。いや、それよりも何よりも、いったい何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、その不安があまりにも大きすぎて、孤独などという想念が脳裡をよぎる余地はまるでない。
 街を行く人はみな、ぼくとすれ違うときに視線をそらしはしない。かといって、表情ひとつ変えるわけでもなく、たまたま視界に入った看板や、商店の陳列、電柱などと同じ、ただの風景の一部として受け入れている。
 それ自体、見事な芸当ではないかと思う。ぼくの素性が知れていることが、ある意味でこの街の人たちにそれほどの安堵をもたらすものなのだ。ぼくが視界に入っているときには瞬きひとつしない人たちも、ひとたびぼく以外のだれかを視野の中心に捉えるや、たちまち表情をこわばらせ、瞳のずっと奥の方から猜疑をのぞかせる。

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Last updated  2007.02.17 12:10:44
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