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カテゴリ:読書
新井円侍「シュガーダーク 埋められた闇と少女」(角川スニーカー文庫)を読んだ。
「涼宮ハルヒの憂鬱」以来、6年ぶりの大賞受賞作ということで読んでみたが、なるほど面白いと思った。話の舞台がごく狭い領域に限定されている割には、上手い事まとまっている。 ただ、各所で評されているように、流行の潮流を左右する程の魅力があるかと訊かれれば「?」だなあ……と。 たとえば「ブギーポップは笑わない」がヒットしてからというもの、それまで異世界ファンタジーが主流だったラノベに現代劇という一ジャンルが誕生したと言われるが、あるいはそのように斬新な基軸と言うものは、本作には無いと言わざるを得ない。 強いて他と違う点を探してみるなら、主人公の職業を墓掘り人夫という地味なものに据えたところとか……? しかし、「シュガーダーク」にはラノベに多く特有の爽快感みたいなものは乏しく、むしろ暗い場所から明るい所へようやく這い出たかのような、湿り気を帯びたささやかな情動がある。こうした物語の傾向が、たくさんの読者の感情に(また感傷に)訴え得るものかどうかは知らないが、これだけをもってしてラノベ界のメインストリームに成り得るか否かは未知数だ。というか、ある意味で本作はその試金石か? 散々「ハルヒ以来の大賞受賞!」って宣伝されてますし。 しかしながら、昨今、おそらく商業的な事情からやたらと萌え主体のラノベが氾濫している現状を鑑みると、こうした作品でもむしろ(個人的には)大きな充足みたいなものを感じるね、俺は。 巻末の著者あとがきによれば、既に続刊の刊行が決定しているらしいのであるが、一巻の時点で十分にお話としては完結していると思うのだけどね。これ以上続けるのはヘタをすると蛇足に成りかねないとも考えてしまった。無理に続きを出すくらいであれば、一巻の密度をもっと高くすべきですらある。 が、やはり回収し損ねた伏線が残っているのだし、色々な大人の事情も絡んでいるのであろうとも思う。世の中ってままならないわー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.12.14 22:41:30
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